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ゲームで防災を学ぼう

松本 浩司  解説委員

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沖縄と鹿児島県の奄美地方が梅雨入りして大雨への備えが必要な時期を迎えましたが、いま、防災をやさしく学ぶことができるさまざまなゲームが考案され、注目されています。

Q)防災ゲームはどんなものがあるのか?

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A)さまざまなものがある。災害対応の判断力を養うカードゲームやボードを使って避難所の運営方法を考えるゲームは以前からあって広く利用されています。こうした紙のゲームだけでなくパソコンやスマホを使ったゲームも数多く開発され、最近はいわゆるICT=情報通信技術やVR=バーチャルリアリティ技術を使った高度なものも増えていて、学ぶ題材も多岐にわたっています。

デジタルやICTの技術を使ったものを学校や自治体で取り入れるところも出てきていて、このうちふたつの取り組みを紹介します。

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和歌山県は県内で61人が犠牲になった11年前の紀伊半島豪雨のあと土砂災害防止を
啓発するセンターを設立しました。様々な啓発活動をしているが、いま防災ゲームを開発して小中学校の防災教育に役立ててもらおうとしています。

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この日は紀伊半島豪雨で大きな被害を受けた那智勝浦町の市野々小学校でこのゲームを使った防災学習が行われた。5、6年生12人が参加しました。
ゲームはRPG=ロールプレイング方式。こどもたちは画面の中の主人公を操作して、台風が接近しているなかで自宅から避難所まで避難します。

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▼まず台風の3日前にハザードマップやタイムラインなど準備しておくものを選択します。

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▼避難を始めると途中で谷から異常な音が聞こえてきたり、がけにひび割れが見つかったりして、どう行動するか判断を求められます。

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▼判断を誤るとどういう危険があるのか、実際の災害の映像でリスクを学びます。
▼さらに途中で近くに住むおばあちゃんが避難したか心配になって迷いが生じます。

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▼日頃から話し合って避難のルールを決めておく大切さに気付かされます。
▼ゴールの避難所に到着すると点数が表示され、行動が適切だったか知ることができるようになっています。

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このゲームですばらしいと思うのは学校ごとの状況が反映されていることです。
ゲームを進めながらハザードマップやドローン映像、いろいろな角度からの現地写真を使って、学校や家のまわりのどこに、土砂災害や川の氾濫の「危険か所」があるのか、わかるようになっている。1校1校、いわばカスタマイズされているのです。

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やはり紀伊半島豪雨で被害を受けた日高川町では、今年度から13ある全ての小中学校で使われることになり、いま先生たちへの説明が行われています。校長先生は「いまのこどもたちはゲームになじんでいるので、とても教えやすいと思う」と期待していました。

Q)実際の身近な危険か所を知ることが大切で、こどもたちがゲームで学べることがいいですね。

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A)
4年前の西日本豪雨のとき愛媛県西予市で大規模な土石流が起きて住宅が全壊したのですが、奇跡的に住民は無事でした。両親と祖母は避難するつもりが全くなかったのですが、前兆を察知した高校生の息子さんが強く避難を促してなかば強引に避難をさせていました。避難したのは土石流発生のわずか20分ほど前でした。

息子さんは、小学校の防災授業で地元での土砂災害の危険性と避難の大切さを繰り返し教えられていました。直接話を聞きましたが「地域の危険を学んでいたので避難を判断できた」と話していました。

この取材で地域ごとの状況にあわせた防災教育の大切さを強く感じましたが、地域の状況を学ぶことに力点を置いているこのゲームはとてもよい取り組みだと思います。

もうひとつご紹介する防災ゲームはさらに進んでGPSの位置情報を使うゲームアプリです。

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去年11月に長崎県島原市でゲームアプリを使った防災訓練が行われました。
福岡工業大学などが開発したもので、危険か所や避難所などの「防災情報」と「位置情報」を組み合わせるのが特徴です。まず公民館で住民にアプリの説明が行われました。
土砂災害や川の氾濫の危険か所に行くと、その場所に関するクイズが出されて、どのような危険があるのか、また避難経路を確かめることができます。
このあと参加者は実際に市内の危険な場所をめぐり、クイズに答え、場所ごとの危険を確認していました。

Q)以前、ポケモンGOが流行りましたが似ていますね。

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A)
ポケモンGOの防災版とも言えるもので「防災GO」と名付けられています。

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携帯の画面上の地図に浸水想定区域、土砂災害警戒区域、避難所などが色で表示され、

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参加者がそれぞれの場所に近づくと「この場所で発生する災害は何?」などクイズが出題されます。

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実際に地域を歩きながら危険か所を確認し避難ルートを考えるのがポイントです。

Q)日頃からハザードマップを見ておくことが大事ですが、現場を歩いてアプリで確認できるのはより実感がわくと思います。こうしたゲームはさらに広がっていくのでしょうか。

A)
福岡工業大学は島原市など3地域で試みていて、今後希望する市町村などと協力して広げていきたいと考えています。
同様の手法で津波からの避難を疑似体験できるアプリもあり、防災に役立つ大きな可能性を持つ技術だと思います。

Q)さまざまなゲームがあるということですが、いますぐ私たちができるゲームをどうしたら入手できるのでしょうか?

A)

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ゲームがたくさんあるので探すのが大変なのですが、ひとつの方法をご紹介します。一般社団法人の防災教育普及協会がホームページで防災ゲームを紹介しています。大学や企業、行政、個人などさまざまなところが開発したゲームを実際にやってみてよかったものを紹介しています。

▼ダウンロードして印刷して行う紙のゲーム
▼アクセスするだけでスマホやパソコンですぐできるゲーム。
▼スマホにアプリをダウンロードして楽しむものなどさまざまなものがあります。

また目的も
▼災害の基礎知識から▼ペットとどう避難するか、▼災害時のトイレ問題、▼災害医療など幅広く、無償のものも多い。「防災教育普及協会」+「防災ゲーム」などと検索するとそのページが見つかります。

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防災教育普及協会の宮﨑賢哉教育事業部長は「防災ゲームは身を守るための大事なポイントがテーマに沿ってコンパクトにまとめられていて、教える側に予備知識がなくても参加者といっしょに学ぶことができます。学校や地域、家庭で役立つゲームがたくさんあるので興味のあるものから気軽にやってみてほしい」と話しています。

あすにかけて大雨の恐れがあり、これから大雨の季節が続きます。ハザードマップやタイムラインなど準備しておくことはたくさんありますが、防災ゲームで備えを考えるというのもよいと思います。

(松本 浩司 解説委員)

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