ブランド品や生活用品を販売しているホームページに注文を出したものの、全く商品を送ってこないという被害が相次いでいます。私たちが被害にあわないために、偽ショッピングサイトの見破り方について解説します。
偽のショッピングサイトは、普通のサイトのように見えるものの、店としての実体がないと考えられます。
画面を見ると、いずれもデザインも普通ですし、写真もきれいです。
実は、商品の写真は、すべて実在する複数のショッピングサイトから盗用したものです。このため全く不自然なところはありません。
特徴的なのは価格です。すべての商品が安売りしています。しかし、こうしたサイトに商品を注文しても、何も商品が届かないという被害が相次いでいます。
情報セキュリティー企業などで作る「日本サイバー犯罪対策センター」によりますと、こうした偽サイトに関する報告相談は、去年は1万7717件と、前の年の1.7倍となっています。
新型コロナウイルスの拡大で、ネットショッピングをする人が増えたことから、犯罪グループがその利用者を狙うようになったと見られています。
各地の消費生活センターへの相談ケースの一つを紹介します。
ことし1月、関東地方の男性が、妻にブランド品のダウンコートをプレゼントしようとネット検索したところ、格安で販売しているサイトを見つけました。申し込むと代金を支払う銀行口座の番号が電子メールで届きました。そこに、代金の2万5000円を支払いました。しかしずっと待っても商品は届きません。問い合わせのメールを送っても返事がないということです。
こういうケースでは、払ったお金は戻ってくる可能性はかなり低いです。最近の偽サイトで見られる「銀行振り込み」で支払った場合、被害者は警察や金融機関に届け出て、金融機関は振り込んだ口座を凍結します。口座にお金がまだ残っていたらお金を取り戻すことができますが、ほとんどのケースでは口座のお金はすぐに引き出されるため、戻ってきません。
どのようにして、そういうサイトにたどり着いてしまうのでしょうか。その一つは、ネット検索です。
ほしい商品の名前と「激安」というキーワードで検索すると、検索の最上位の「広告」のところに出てくることがあります。
すると検索サービスのお墨付きを得た、まともなサイトであると思ってしまいます。また、SNS の広告にも出てくることがあります。これも注意が必要です。
こうしたことから、被害にあわないために、偽サイトを閉鎖するのが最も安全ですが、現実的にはなかなか難しいです。偽のサイトは、主に海外のサーバーに設置されています。閉鎖を申請するときは、サーバーの管理者に申し出ることになります。しかし、デザインは、よくあるショッピングサイトとほぼ同じ。写真もさまざまなサイトから無断で取り込んでいるため、不自然なところはありません。つまり、海外の管理者に「偽サイト」であると信じてもらえず、閉鎖されないケースが相次いでいます。
では、偽のサイトを見破る方法はあるのでしょうか。最近の偽サイトに見られる特徴を知っておくことが重要です。
大きく3点あります。
(1)安すぎる。半額とか、7割引などと極端に安売りしていることもあります。また、新商品も含めて、すべての商品が激安価格です。その理由も書いていないことが多いです。安く購入できるサイトが見つかれば、売り切れる前に買いたいと思う人が多いと思います。しかし、本当にこんな値段でいいのかな、お金を払ってもいいのかなと、5分でもいいから考えるようにしてください。
(2)不自然な支払い方法。最近の偽サイトは、カード払いには対応せず、銀行振込のみとなっていることが多いです。そして、振込口座が、個人の名義となっていることが多くなっています。また、振込口座がサイトには書かれていなくて、注文したあと電子メールで口座番号をお伝えしますなどとなっています。そして指定された口座名義も個人名だったりします。こうした手口では、闇市場で売買された個人口座が悪用されることがあるためです。
(3)運営会社が不自然。最近の偽サイトには、「特定商取引法に基づく表記」として、サイトの運営会社が書かれています。偽物とわからないようにしているつもりだと思いますが、逆に、これが見破るポイントになります。そこに書かれている住所をネット検索します。すると、ほとんどの場合、何らかの情報が見つかりますが、会社名と住所が食い違っているなど、不自然な情報であることがわかります。こうした情報も、別のサイトから勝手に持ってきたでたらめだからです。それでも自信がなければ、偽サイトのアドレスを検索するといいです。「このアドレスは偽サイトです」というSNSの書き込みが見つかることがあります。
偽サイトでお金をだまし取るのは、まぎれもない犯罪で、捜査機関による取り締まりが不可欠です。しかし、海外のサーバーが使われていることもあり、犯罪グループにたどり着くことが難しく、さらに、金銭の被害が補償される可能性も低いという非常に厄介なネット犯罪です。安すぎる、不自然な支払方法、そして会社情報があやしいなどの特徴を覚えて、自衛することが私たちに求められます。
(三輪 誠司 解説委員)
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