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相次ぐ値上げへ支援策 ガソリン補助金 生活困窮者支援の仕組みは?

今井 純子  解説委員

政府は、おととい、物価の高騰を踏まえた緊急対策を決めました。くらしを直接支援する対策について、今井解説委員。

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【今回の緊急対策は、物価上昇を受けての対策なのですね】
そうです。先週発表された3月の消費者物価指数は、一年前と比べて0.8%上昇しました。物価は、4月には、2%前後に達して、年内は、その水準で推移するのではないか。経済の専門家からは、そのような見方もでています。もし、2%の物価上昇が続いた場合、一世帯あたりの平均で、年間に換算して8万2千円の負担が増えるという試算もあります。賃金も上がる傾向ですが、今年のベースアップ=底上げ分は、せいぜい、0.3%とか0.4%程度とみられていますので、物価上昇には追いつかない状況です。

【8万円ですか!?厳しいですね】
特に、消費者物価のうち、生活必需品についてみると、3月は、+4.5%と、全体の+0.8%より大幅に上がっています。このように、エネルギーや食料の上昇が目立ちます。買わないわけにはいきませんので、もともと所得が低く、生活に困っている世帯にとっては、より重い打撃になります。
このため、政府が、緊急対策を打ち出したのです。

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【くらしへの支援策には、どのようなものがあるのでしょうか?】
主には、2つの柱があります。
まず、ガソリンへの補助金を見てみましょう。

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【これまでの対策の延長・拡充ですね】
はい。
▼ 政府は、ガソリンや灯油などの急激な上昇を抑えるために、4月末までの対策として、石油元売り会社へ、最大1リットル=25円分の補助金を出していました。ガソリンスタンドへの卸売価格をその分、安くすることで、消費者へのガソリンの小売価格を、全国平均で、1リットル=172円程度に抑える狙いでした。実際の小売価格は、各ガソリンスタンドが、個別の事情に応じて決めるものなので、バラバラですが、今週のガソリンの価格は、全国平均で1リットル=172.8円と、おおむね目標に近い価格になっています。国は、補助金がなかった場合、1リットル=200円近くに達していたと試算しています。

【補助金の効果は出ているのですね】
そうですね。今回の緊急対策では、この仕組みについて、
▼ 9月末まで延長すること。
▼ そして、補助金の上限を35円に拡充した上で、目標とする価格も1リットル=168円程度に下げることを決めました。
▼ さらに、ガソリン価格がどんどん上がって、35円では168円程度に抑えることが難しくなった場合、超えた分の半額を支援する=本来2円上がるところを、1円の値上げに抑える仕組みも設けました。

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【いつから下がるのですか?】
補助金は、きょうから拡充されますが、ガソリンスタンドには、これまでの在庫が残っていますので、今後、数週間かけて、目標の168円程度に向けて下がっていくとみられます。ただ、この制度は、あくまでも、ガソリン価格の急激な上昇を抑える目的なので、一定の期間がたったら、目標とする価格を見直すとしています。

【車を持っていなくても、宅配の運送費などを通じて、間接的に恩恵を受けることもあるかもしれませんね】
そうですね。次に、生活が厳しい世帯への支援を見てみたいと思います。大きく2つ。
1つ目は、所得が低い世帯への給付金です。

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▼ 具体的には、原則、高校3年生までの年齢のこどもがいる世帯で、児童扶養手当が支給されているひとり親世帯、そして、住民税が非課税の両親がいる世帯を対象に、子ども一人当たり、新たに5万円が支給されます。
▼ また、子育て世帯への給付金とは別で、すでに昨年末に決まっていた、住民税が非課税の世帯への10万円の給付金。去年の収入が少なくて、今年度、新たに非課税になったけれど、対象になっていることを知らずにまだ10万円を受け取っていない世帯があることから、10万円を積極的に支給することが、盛り込まれました。

【どうすれば受け取れるのですか?】
児童扶養手当を受け取っているひとり親世帯や、住民税非課税で中学生以下のこどもがいる世帯は、それぞれ、登録されている児童扶養手当や児童手当の口座に、おカネが振り込まれることになります。
また、新たに非課税になり、まだ10万円の給付金を受け取っていない世帯については、自治体が非課税の情報を把握できるようになりますので、自宅に「給付を受けられる」という通知が郵送で届く見通しです。

【待っていても大丈夫なのですね】
ただ、注意が必要な方もいます。
▼ 両親がいる子育て世帯のうち、対象になる子どもが高校生だけという世帯。
▼ それから、今年に入って、新たに収入が、低所得の水準まで急激に減っているという世帯。こうした世帯も、給付の対象になりますが、自ら、手をあげて、申請することが必要になる見通しです。

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【これは、注意が必要ですね】
受け取る権利がありますので、政府や自治体は、周知を徹底してほしいと思います。
そして、生活が厳しい世帯への支援策の2つめ目は、無利子融資・自立支援金の延長、要件の緩和です。

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【そもそも、どのような制度ですか?】
この制度は、コロナの影響で収入が減って生活に困っている世帯が「緊急小口」「総合支援資金」あわせて、最大80万円まで、無利子で借りられる特例措置。
さらに、この無利子融資を借り終えて、これ以上、借りられないという人を対象に、返さなくてもよい「自立支援金」を支給する制度があります。自立支援金は、例えば3人以上の世帯は、月10万円を3か月間、再支給をあわせると最大6か月間、受け取ることができます。

【これがどう変わるのですか?】
いずれも、申請期限が6月末となっていたのを8月末に2ヵ月延長しました。
その上で、自立支援金について、ハローワークなどで月2回以上の職業相談を受けるなど、要件が厳しすぎて利用しにくいとの指摘があったことから、月1回でよいことにするなど、要件を緩和しました。

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【もともと生活が厳しい世帯は、生活必需品が値上がりして、本当に大変だと思います。こうした支援も助かりますね】
生活が厳しい方への支援は本当に大事だと思います。
ただ、ガソリンへの補助金を含め、今回のこうした支援策には、課題も指摘されています。

【どのような指摘ですか?】
例えば、
▼ 車や灯油を使わない人は、直接の恩恵は受けませんし、食料や電気代・ガス代への支援はないので、公平とは言えないのではないかといった指摘。

【夏のエアコン代が、今から心配です】
また、
▼ 物価高騰が続いた場合、いつまでも補助金や給付金を繰り返し続けることにならないか。
▼ 生活が厳しい人に無利子でも借金をさせるのは、生活の立て直しの重荷にならないか。といった指摘です。

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【どうしたらいいのでしょうか?】
多少の値上げには耐えられるよう、社会の体質を抜本的に強くしていくことも大事です。
例えば、
▼ 省エネ型の製品への買い替えが進むよう、技術開発や購入支援策を一段と強化すること。
▼ 来年から返済が始まる無利子融資について、返済免除の基準をもう少し緩くして、多くの人の借金の重荷を減らし、生活保護を利用しやすく出やすい仕組みに変える。
▼ そのうえで、ひとりひとりに寄り添って収入の立て直しに向けた支援ができるよう、自治体の相談窓口の体制を整えること。
▼ さらに、企業が、賃金やボーナスの引き上げを続けることも、欠かせません。

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一時的に物価高騰の痛みを和らげるだけでなく、中長期的な対策にも、ここでギアチェンジをして、一段、力を入れて取り組んでほしいと思います。

(今井 純子 解説委員)

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