NHK 解説委員室

これまでの解説記事

気が重いPTAの役員 どうすれば?

山本 恵子  解説委員

この春、お子さんが小学校や中学校に入学されたという方もいらっしゃると思います。新たなスタートに心弾む季節ですが、一方で、保護者の中には同時に始まるPTAの役員決めに「気が重い」と感じている人もいるかもしれません。PTAの問題とは何か。また、名古屋市で始まっている新たな取り組みを紹介します。

m220420_1.jpg

【PTAとは】

m220420_2.jpg

PTAは、Parent-Teacher Associationの略で、
目的は、大きくは「保護者と教職員が協力して子どもの健全な育成をする」というものです。戦後、アメリカが日本の民主主義教育を推進するために結成を指導し、
当時の文部省がPTAの設置を推奨したことから全国の学校に広がりました。

PTAの活動は、登下校の見守りや通学路のパトロール、運動会などの行事の準備だったり、子どもたちや、子どもたちが通う学校を、教職員と協力して保護者が支えるものです。
PTA役員になると、学校に行く機会や、先生や他の保護者と話す機会が増えて、学校や子どもの様子がわかったり、地域の人とのつながりができたり、学ぶ機会ができたり、といいこともあります。

【”PTA問題”とは】
一方で、いまPTAをめぐって、さまざまな問題が指摘されています。

m220420_6.jpg

1つは、自動入会の問題。 
加入は任意なので、本来、入退会は自由なのに、ほとんどの人が自動的に会員になっています。それに伴って会費も支払うことになるので、教育委員会の中にはPTAの入会が任意であることを保護者に周知し、入退会の意思を確認することを求める通知を出しているところもあります。

そして、役員の強制の問題。
なかば強制的にやりたくないのにやらされる、というもの。役員は、会長や副会長などの本部役員のほか、クラス役員や、通学路のパトロールなどを行う「校外委員会」や、講演会などに参加する「成人教育委員会」、PTA新聞を作る「広報委員会」などの委員会の委員もあります。
そして、一度決まると、仕事や家庭の事情があっても辞退できない、という問題も指摘されています。

さらに、活動についても、平日昼間だったり、全員集まることが求められたり、行事でのお茶出しなど、非効率的だったり、不必要だと指摘されていることもあります。母親の多くが専業主婦だった時代のまま、続いていることも多いと感じます。

【なぜ気が重い?役員決め】

m220420_9.jpg

なかでも、今の時期、気が重い原因となっているのが、「役員の強制」の問題です。
「やりたい」という人がいないと役員を一度もやってない人がやる、とか、推薦された人がやる、中にはくじ引き、という学校もあります。

そして、役員になると、平日昼間に開かれる会議や行事などに参加しなくてはならず、負担が大きいため、「できればやりたくない」、または、仕事や介護など家庭の事情などで「できない」という保護者が増えています。

【コロナ禍の今が見直しの機会に】。
しかし、コロナ禍の今が、実は、PTAを見直す機会となっていると感じます。

新型コロナの影響で、この2年間「これまで通り」のPTA活動ができませんでした。
活動ができなかったことで、本当に必要な活動と、そうでない活動が浮き彫りになったという調査結果もあります。

名古屋市立の小中学校のPTAでつくる協議会では、2020年10月、
「コロナ禍でのPTA活動」についてアンケートを実施しました。

m220420_12.jpg

「コロナ禍で集まれず、これまで通りの活動ができない」「役員、保護者とコミュニケーションが取れない」という声があった一方で、集まらなくてもいいように、オンラインの活用が進んだことがわかりました。

自由記述には、会議や講演会は「オンラインだと会場まで行かなくてもいいので参加しやすい」とか、「時間などの無駄が省ける」など、オンラインでの活動を続けて欲しいという声も多く寄せられました。

そして、およそ4割の学校が今後「PTA活動の見直し・負担軽減」を行うと回答していました。

【エントリー制の学校も】。

m220420_16.jpg

PTA活動の見直しとして、すでに、名古屋市の学校の中には、一部の活動を、やりたい人を募集して行う「エントリー制」にしているところもあります。

これまでは、やりたくなくても、委員会の役員になってしまうこともあったのですが、
委員会は廃止して、サークル活動のようにやりたい人が集まって活動するという方針にしたのです。

PTAの新聞作りなどもやりたい人たちでやる、運動会やセミナーの準備はその都度、できる人を募る制度で、「ボランティア制」とか「この指とまれ方式」とも呼ばれています。

「やりたい」という人がいない場合はどうするのか、と聞いてみたら、そもそも「やりたい」という人がいない活動はやめる覚悟も必要、ということでした。しかし、導入した学校では、強制ではないからこそ、参加してもいい、という人が増えたということです。

【時代にあった組織・活動への変革】。
名古屋市立小中学校PTA協議会では、方針のひとつに、「時代にあった組織・活動への変革」を打ち出しています。

m220420_19.jpg

その1つとして、「母代、母親代表」という役職の呼称をなくすことがあげられています。
会長は男性、という慣例の中で、女性の代表として「母親代表」という呼称や会議が残っているところがあります。PTA会長、今は女性も増えていますが、令和2年度の小中学校のPTA会長の女性の割合は14.8%と、まだまだ少ないのが実情です。

名古屋市のPTA協議会では、学校や区のPTAには廃止を求めないけれども、協議会の役職からは、母親理事・母親代表という呼称をなくすとしています。

m220420_21.png

これからのPTA活動について、日本PTA全国協議会の清水敬介会長は
「PTAも時代に合わせて、保護者にとって負担感の少ない活動に変わっていく必要がある。エントリー制などの取り組みを広く知ってもらえるよう情報発信もしていきたい」と話しています。

【PTAもアップデートを!】。
なかには、負担が大きいとPTAを廃止したり、解散を決めた、という学校もありますが、全国のほとんどの学校にはPTAがあります。

m220420_22.png

「子どものために、保護者と教職員が協力する」というPTAの本来の目的に戻り、強制的にではなく、「できる人が、できるときに できることを」と、母親だけでなく、父親も参加できるよう、PTAもアップデートが必要だと思います。

(山本 恵子 解説委員)


この委員の記事一覧はこちら

山本 恵子  解説委員

こちらもオススメ!