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成人年齢引き下げ 少年鑑別所の新たな役割

清永 聡  解説委員

今月から成人年齢が18歳に引き下げられました。こうした中いま、少年鑑別所が青少年に関する相談や法教育など一般向けの取り組みを進めています。
四国の取り組みを例に、その新たな役割と今後の課題を伝えます。

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【少年鑑別所って何】
少年鑑別所といえば、事件を起こした少年の施設という印象もあると思いますが、刑務所とか少年院とは全く違います。

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例えば少年院は「少年審判」を受けた後、集団で生活しながら立ち直りに向けた教育などを受ける機関です。
対して少年鑑別所は、少年審判の前に本人を一度収容して専門家が面接などを行い、問題の原因や背景の調査などをするところです。
実はこのほかに、数年前に法律が変わって、少年鑑別所にもう1つ役割が明記されました。それが「地域援助」です。

【少年鑑別所の新たな役割『地域援助』とは?】
地域援助とは、事件に限らず、親や青少年への相談対応や、法教育などを行う取り組みです。成人年齢の引き下げもあって今、その取り組みが、注目されています。
高松市の高松少年鑑別所では、少年を収容するフロアとは別に、親など一般の人や関係機関から青少年に関する相談を受け付ける部屋が設けられています。明るく開放的な部屋で、小さい子供が遊ぶことができるスペースも設けられています。
これも地域援助の1つです。いま、全国の少年鑑別所は、いじめや発達、子育てなどの相談に対応しています。独自の教材を使って本人への教育も行います。こうした対応はすべて無料で行っているということです。
また、高松少年鑑別所は四国で唯一、パソコンを使ったオンライン相談も受け付けています。少年鑑別所を訪ねることに抵抗がある人でも相談を受けることが可能です。

さらに今、職員が外に出て地域援助を行っています。
愛媛県伊予市の中学校では3月、法教育のオンライン授業が行われました。
隣の教室からパソコンを使って授業をしているのは、松山少年鑑別所の職員です。成人年齢の引き下げに合わせて、いま10代への法教育が注目されています。そこで少年司法に関わる鑑別所への依頼が増えているんです。
授業では事件を起こした少年の手続きはどうなるのか。少年鑑別所の中では何が行われていくのか。そして大人になる中でルールを守ることがなぜ大切なのか。事例をもとに説明していきます。
生徒たちは普段聞くことができない現場の職員の話だけに、興味深そうに聞いていました。質問コーナーも設けられましたが、時間いっぱい熱心な質問が相次いでいました。

【なぜ新たな取り組み?】
少年鑑別所がこういう取り組みをするようになった背景の1つには、いま少年事件が大幅に減っていることがあります。少年鑑別所に入所する少年、80年代の2万2000人が、令和2年度は5000人あまりと4分の1に減っています。
このため、職員が幅広い取り組みを始めることが可能になりました。もともと職員は少年問題の専門家です。特に成人年齢の引き下げが決まって、依頼が増えているそうです。

【変わる少年たち】
ただ、事件の数が減っても、担当者によればいくつか課題もあるといいます。

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少年事件というと、昔は暴走族やケンカなどが多かったわけです。しかし、今は他人との意思疎通がうまくできないなど、地域援助でも指導が難しい少年は、少なくないそうです。
また、児童虐待のように親の問題もクローズアップされています。つまり、子供だけでなく親への働き掛けも難しい事例が後を絶たないということです。
特に地域援助は強制的な措置ではありませんから、職員もどのように働きかけを行うか、苦労も絶えないようです。
もう1つは、4月から少年法が改正されたことです。これに伴って新たな課題が出てきました。
それは「ぐ犯」の扱いです。

【少年法改正で18、19歳は「ぐ犯」の対象外れる】

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「ぐ犯」とは、将来犯罪を起こす恐れがあることを意味します。例えば、コンビニエンスストアの近くに少年たちが常にたむろし、近くの人たちを威嚇して怖い思いをさせていたとします。悪質で事件を起こす恐れがあると判断されれば、これも「ぐ犯」で警察が補導し、家庭裁判所から少年鑑別所に送ることが可能です。ただ、18歳、19歳は、今回「ぐ犯」の対象から外れました。
対象から外すことで、本当に事件を防ぐことができるのか、疑問に思いますし、こういうケースこそ本来、地域援助が大事だと思います。しかし「ぐ犯から外れたことで、18歳、19歳と少年鑑別所のつながりは弱まってしまうのでは」という懸念の声も上がっています。
学校にも行っていない、仕事もしていない、家庭からも離れているような若者もいると思います。それだけに少年鑑別所を含む各機関や地域が連携して18歳、19歳へ働きかけることが、いっそう求められます。
ある職員は「成人年齢引き下げで少年鑑別所の地域援助はさらに積極的に取り組む必要がある」と話していました。

【相談窓口は】
少年鑑別所の全国共通の相談ダイヤルは0570-085-085です。この番号から全国各地の少年鑑別所につながります(土日祝のぞく。9時~17時)。
今月から始まった成人年齢引き下げですが、成人だから非行や事件防止の取り組みが不要だということはないはずです。
少年鑑別所自体が18歳19歳を含めた幅広い「若者のお助け機関」になっていく。そのための取り組みが今後さらに求められるのではないかと思います。

(清永 聡 解説委員)

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