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岸田政権半年 支持率堅調の要因と今後の行方を世論調査から分析

曽我 英弘  解説委員

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4月のNHK世論調査がまとまった。発足して半年が経った岸田政権だが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は続き、新型コロナの先行きも依然不透明なままだ。こうした国内外の現状と政治の果たすべき役割を国民はどう考えているのだろうか。

【政権発足半年】

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岸田政権は4月(4日)、発足して半年を迎えた。4月の内閣支持率は53%で3月と変わらず。一方で不支持率は23%にとどまった。発足時の去年10月こそ49%と50%を割り込んでスタートした岸田内閣だが、その後は一貫して5割を超える支持を維持してきた。調査方法が異なるため単純に比較はできないが小渕内閣以降、発足半年が経っても支持率が5割を超えていたのは、小泉内閣、第二次安倍内閣のみだ。

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支持が堅調な要因は何だろうか。それはウクライナ侵攻、新型コロナウイルスという内外の危機への対応に一定の評価を得ていることが支持を下支えしていると考えられる。このうちロシアによる軍事侵攻への政府の対応を「評価する」人は「大いに」「ある程度」あわせて71%と3月より13ポイント上昇した。北方領土問題を含む平和条約交渉の進展に期待して経済協力を進めた安倍内閣以降の方針を転換し、制裁を含む断固とした姿勢を取るのはやむを得ず、むしろ当然だというのが大方の見方ではないか。また新型コロナをめぐる対応も「評価する」人は62%と4ポイント上昇した。新型コロナもピーク時で1日10万人以上の新規感染者が確認されたものの、営業や不要不急の外出の自粛などを伴う緊急事態宣言は回避し、感染対策と経済社会活動の両立に重点を置いてきたことも評価につながったとみられる。

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ただ今の支持は今後も続くかと言えば、必ずしもそうとは限らないとも考えられる。というのも、支持の理由を見ると、「政策に期待ができる」「実行力があるから」がともに10%にとどまる一方で、「ほかの内閣より良さそうだから」は42%にも上っている。

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新型コロナは、まん延防止等重点措置の解除後、地域によっては再び流行の兆しを見せ、3回目のワクチン接種も高齢者に比べ、特に若い人の間では十分に進んでいない。さらに政府が準備を進めている4回目のワクチン接種を「急ぐべきだ」という人は38%にとどまり、「急ぐ必要はない」は47%と国民の間で意見が分かれている。感染者数が増えれば内閣支持率が下がるという傾向は、岸田内閣にはこれまで必ずしも当てはまらないが、今後の状況次第では世論に変化が生じる可能性もある。

【ウクライナ侵攻】

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ウクライナ情勢をめぐって最近、ロシアへの制裁、そしてウクライナへの支援をめぐって日本政府の動きが相次いだ。政府は8日、ロシアからの石炭の輸入を段階的に削減し最終的に禁止することや、機械類や一部の木材、ウオッカなどの輸入禁止、ロシア最大の金融機関などの資産凍結など、追加の制裁措置を決めた。そこで一連の制裁措置についてどう思うか聞いたところ、「適切だ」は35%、「さらに強めるべきだ」は47%、「厳しすぎる」は7%となった。
一方でウクライナの避難民を支援するため政府は、隣国ポーランドから希望する20人を政府専用機に乗せて、日本に受け入れた。この取り組みをどの程度評価するか聞いたところ、「評価する」は、「大いに」「ある程度」をあわせて76%、「評価しない」は、「あまり」「まったく」をあわせて18%だった。
踏み込んだ対応の背景には何があるのか。岸田総理は「非道な侵略を終わらせ、平和秩序を守るための正念場だ」と説明しているが、ヨーロッパだけでなく東アジアの安全保障環境に与える影響も無視できないという判断があるからとみられる。つまり隣国ロシアの脅威に対抗するとともに、沖縄県の尖閣諸島や台湾などをめぐる中国の出方にも影響を与えかねないとみているわけだ。このため今回の侵攻を見過ごすことなく厳しい制裁に踏み切ることで「力による現状変更の試み」が高い代償を伴うことを中国に示すこと。さらに人道支援にも積極的に取り組むことで、東アジア情勢をめぐっても欧米各国との連携や協力関係を強固にしておく狙いがあるものとみられる。

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ただ制裁はそれを行う側も相当な不利益を被ることから、事態の長期化は日本にも懸念があり、日本にとって一番の問題はエネルギーの確保だ。今回の軍事侵攻を受け政府は、ロシアへのエネルギー依存度を引き下げていく方針だが、これを支持するか、しないか聞いたところ、「支持する」は68%、「支持しない」は17%だった。
一方で食品や日用品、そして光熱費の値上げが家計にどの程度影響しているか聞いたところ、「影響している」は「大いに」「ある程度」あわせて70%、「影響していない」は「あまり」「まったく」あわせて23%だった。
日本政府はどう対応するのだろうか。 日本は主に発電用の石炭の13%をロシアに依存しており、政府はオーストラリアやインドネシアなどほかの生産国に増産を働きかけることにしている。ただ世界的な「脱炭素」の流れで、石炭生産への投資は難しくなっているほか、ロシア産の石炭を使用している鉄鋼メーカーなど国内製造業の生産体制にダメージを与え、電気料金などの物価がさらに上昇するなど、影響は広い範囲に及ぶ恐れがある。このため事態がさらに長期化すればロシアへの依存度を下げるという政府の方針に対する世論に変化が生じないとも限らない。今後ロシアに代わる調達先をいかに確保し、私たちの暮らしや経済へのリスクをどれだけ抑えられるかが重要な課題となっている。

【政治の果たすべき役割は】

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4月の政党支持率は以上の通りとなった。国会の会期末の6月15日までまだ2か月余りあるが、与野党が激しく対立する法案は見当たらないこともあって各党の視線の先にあるのは夏の参院選とみられ、候補者の擁立や政策のアピールに余念がない。

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というのも岸田総理にとっては衆議院選挙に続いて参院選でも勝利すれば、およそ3年間衆議院を解散しない限り、大型の国政選挙なしに政策の実行に集中できる一方、立憲民主党の泉代表は党再建の足掛かりを得られるかどうかの重要な戦いだからだ。ただ新型コロナの流行、ロシアの軍事侵攻が起きた前と後では、社会や経済、世界の情勢も大きく変わり、先行きへの不安も高まっている。それだけに残された国会会期中、各党・各政治家には国民の暮らしの課題を解決し、私たちが選挙で判断する際にも資する論戦を期待したい。

(曽我 英弘 解説委員)

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