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育児休業の改正法が施行  ~育休パパを増やせ!

牛田 正史  解説委員

子どもが生まれた時に、仕事を休んで子育てに専念する「育児休業」。
この育休に関する法律が変わり、4月から新しい制度がスタートしました。
そのポイントは「育休パパ」を増やすこと。
新制度で育休を取るパパは増えるのでしょうか?

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【男性の育児休業が進まない!】

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育児休業とは、原則、子どもが1歳になるまで、男性でも取得できる制度です。
その間は、多くの場合、賃金の3分の2から半分ほどの金額の「給付金」が受け取れます。
(ただし、上限額あり)
また、社会保険料の支払いも免除されます。
この育休は法律で定められた権利なのですが、男性の取得率はかなり低いのが現状です。
子どもが生まれた人の中で、育休を取得した人の割合は、男性と女性に大きな差があります。
男性は最近、徐々にあがってきていますが、それでもまだ10%あまりです。
国は2025年までに30%まで引き上げる目標を掲げていますが、今のままでは、達成は簡単ではありません。
過去の調査では、働く女性の半数近くは、1人目の子どもの出産や育児で、退職しているというデータもあります。
その要因として、育児が女性に偏っていることが大きいとも、指摘されています。

そこで今回、国は男性の育児参加を進めるため、法律を改正し、新しい制度を作りました。
この新制度は大きく分けて、「ことし4月から」、そして「10月から」、それに「来年4月から」始まるものがあります。つまり3段階に分かれています。

【ことし4月の制度変更】

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まずことし4月から始まった制度を見ていきます。
男性の社員が、妻の妊娠もしくは出産を会社に伝えた場合、会社側は、育休の制度があることを説明して、取得するかどうか、意向をきちんと確認するよう義務付けました。
これは女性社員が妊娠や出産を報告した場合も同様です。                                                                                                                                                                                                                                                                                

これって当たり前では?と思われる方もいると思いますが、男性社員の約6割は、会社に妻の妊娠や出産を伝えても、特に説明や働きかけが無かったという調査結果もあります。
最初のスタート地点から徹底しなければならないというわけです。
この育児休業は、働く人の権利です。
なので、会社側は、取得の意向を確認するのはもちろん、育休の取得を促していくことも、大切だと思います。

そして今回の改正では、有期雇用の非正規労働者が、育休を取得する要件も緩和されました。
これまでは、その会社に1年以上雇用され続けていること、そして、子どもが1歳6か月になるまでに、契約が満了となることが決まっていないことの、2つの条件がありました。
このうち1年以上の雇用という条件が、男女ともに撤廃されました。
つまり働き始めて間もない時でも、取得が可能になりました。

【10月の制度変更】

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次に、ことし10月から始まる制度です。ここが1つの大きな目玉となります。
「産後パパ育休」という新たな制度が始まります。
その名の通り、出産直後に、パパに育休を取ってもらう制度ですが、最大の特徴は、比較的短い期間の育休を、分割して取得できるという点です。
従来の育休制度では、原則、1回だけしか取得できませんでした。
男性の育休が進まない大きな要因には、そんなに長い間、仕事を休めないという人が多いことがあります。ですから短期の育休を分けて取得できるようにしました。
この新制度では、子どもが生まれて8週間になるまで、2回に分けて、あわせて4週間まで取得できるようになります。
さらに、あらかじめ労使で協定を結んでいれば、休業期間中に仕事の日を入れることも可能です。

具体的な例をご紹介します。
まず、2回に分けて、赤く示した育休を2週間ずつ取得する。
そして、この休業期間中に、青く示した勤務日を入れるというような形です。
仕事の空白期間を短くすることで、育休を取得しやすくしようというわけです。

ただ、こうした短期の育休ではなく、もっと長い育休を取りたい、あるいは夫に取ってほしいという人も少なくないと思います。

今回、新しい育休制度が出来ましたが、従来の、子どもが1歳になるまで取得できる育休制度も残ります。
なので、まずは短期の育休を2回取得して、その後に長期の育休を取得することも可能ですし、最初から長期の育休を取ることもできます。
このため、国や企業などは、短期に限らず、長期の育休の取得も、積極的に呼びかけていく必要があります。

【来年4月の制度変更】

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そして最後に、来年4月から始まる制度です。
こちらは従業員が1000人を超える事業所(事業主)に対して、男性の育児休業の取得率を年1回公表するよう義務付けます。
これは非常に大きな意味を持つと思います。
いま少子高齢化が進んで、若い人材の獲得競争が激しくなってきています。
この男性の育休取得率は、これから若い人たちが就職先を選ぶ上でも、1つの参考データになってくると思います。
もし取得率が低ければ、育児への支援や理解が進んでいない会社だと捉えられかねません。
このため会社側が一層、育休を促すという効果が期待できるのではないかと思います。

【男性の育休は進むのか?】
こうした制度が出来たことで、男性の育休取得は進むのでしょうか?
大きな前進だとは思いますが、課題はまだまだあります。
制度を拡充しても、利用が伸びなければ意味が無いわけです。

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実はこんなデータがあります。
ユニセフが去年、公表した調査では、日本は、取得できる期間が長いなどの理由から、OECDとEUの加盟国の中で(41か国)、育児休業制度の水準が1位、つまり最も充実しているとされました。
ところが肝心の男性の取得率は、ほかの多くの国よりも低くなっています。
ヨーロッパでは、男性の取得率が8割を超える国もあります。
このため日本は、せっかく制度があるのに、利用が進んでいないという課題面も指摘されています。
ここで大事なのは、やはり企業などが、育休を取得しやすい環境を整えることだと思います。
これは決して不可能なことではありません。
例えば実際の事例として、社長自らが、男性社員全員の育休取得を目指すと社内で宣言したり、人事部が、子どもが生まれた社員全員に、育休の取得を強く促したりすることで、取得率が大幅に伸びたという会社も出てきています。
また、誰かがいつ育休を取ってもいいように、ほかの社員がフォローする体制をあらかじめ整えているという会社もあります。
つまり、会社の「本気度」が問われるわけです。
そして、働く側の意識も変わっていく必要があるのではないでしょうか。

いま、男性の育児参加が進まないことが、少子化を加速させているという指摘もあります。
去年生まれた子どもの数は、新型コロナの影響もあって、84万人と過去最少になりました。10年前より20万人減少しています。
いまこそ、“男性も育児休業を取って当たり前だ”という考えを、私たち1人1人が持ち、女性に偏る育児を変えていかなければなりません。

(牛田 正史 解説委員)

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