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コロナ禍3度目の春 大学に活気は戻せるか?

二宮 徹  解説委員

新型コロナウイルスの感染が始まってから、3度目の春を迎えています。全国の大学でも入学式が行われていて、新年度が始まりましたが、コロナ以前の賑わいは戻っていません。
コロナ禍の大学生活について、教育担当の二宮徹解説委員の解説。

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<コロナ禍3度目の春>
各地の大学の入学式の様子を見ると、ことしも学部によって日程を分けたり、保護者や来賓は出席しないなどの制限をしたりする大学が多くあります。部活動やサークルの勧誘活動も制限するなど、感染対策にはかなり気を遣っています。
ただ、コロナ禍最初の春だったおととしは、入学式の中止やオンライン配信のみという大学が相次ぎましたが、おととし、去年と比べると、制限をやや緩和する大学も見られます。入学式やサークルの勧誘は密になりやすいので、まだ元通りというわけにはいきません。

<コロナ禍の大学生活>
大学生にとって、春はこのあとの学生生活を見通す、とても重要な時期です。

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特に新入生は、友人を作ったり、大学の雰囲気や生活に慣れたりすることから始まります。
しかし、オンライン授業ばかりだと、キャンパスに行くことも少なく、仲のいい友人や相談できる先輩、教授もいないままになってしまいます。また、上級生も、部活動やサークルに勧誘する機会が少ないと、新しいメンバーを集められず、活動の継続が危うくなってしまいます。

<コロナ禍が満足度に影響>
しかも、新入生どころか上級生まで、入学した時の状況が今も影響していることがわかりました。
全国大学生協連が去年秋の10~11月に行った学生生活実態調査によりますと、学生生活が「充実している」「まあ充実している」と回答した割合は、全学年の平均が78.6%で、コロナ禍前の2019年と比べると、10ポイントあまりも低くなっています。このうち、今の3年生を詳しく見ると、入学したおととしは56.5%と目立って低く、2年生になった去年は少し持ち直したものの、まだ70.8%とどの学年よりも低いのです。

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どうして今の3年生が一番低いのか?
おととし入学した時期に、緊急事態宣言や休校など、最も厳しい制限が行われていたからです。最初に友達を作ったり、部活やサークルに入る機会がなかったりしたことが今も影響しているのです。
自由記述には、「友達ができない」「今更サークルに入りづらい」「もう学生生活は諦めた」「時代に⾒放された」など、悲鳴のような回答が多く上がっています。

<キャンパスに活気は戻る?>
文部科学省も、こうした学生生活の状況を深刻に捉えています。3月22日、新年度は対面での授業や活動を重視するよう求める通知を出しました。

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「十分な感染対策を講じた上で」という条件はありますが、オンライン授業はやむを得ない場合に限って、もっと対面授業を増やすよう求めています。
また、大学生活には学生どうしや教職員との直接の交流も重要な要素だとしていて、ことしの新入生はもちろん、これまで影響を受け続けてきた上級生にも、優先的に対面授業をしたり、学生どうしの交流の機会を作ったりして、配慮するよう求めています。

<対面授業・活動を阻む感染状況>
ところが、対面の授業や活動を増やすのは、そう簡単ではありません。

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これまでの全国の新規感染者数の推移を見ると、例えば、4月5日の時点で、おととしはグラフがほとんど見えませんが、359人。去年は1571人でした。これに対して、今年は45684人と桁違いに多いのです。
ワクチン接種が進み、重症化のリスクも下がったなど、単純には比べられませんが、大学にとって、感染対策を二の次にしていいという状況ではありません。
感染対策を徹底しながら、対面授業や学生の活動を増やす。学生たちの理解や協力も得ながら、この両立を図る必要があります。

<学生の心配は「ガクチカ」>
こうした中で、学生たちがとても心配していることがあります。
「ガクチカ」って言葉、ご存じですか?
何年か前から、学生たちは「学生時代に力を入れて頑張ったこと」を略して、「ガクチカ」と呼んでいます。就職活動の志望書や面接で必ずと言ってよいほど、よく聞かれることだとして、重要視しているのです。

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この「ガクチカ」が、コロナ禍で身につかない、うまくいかないことが心配なのです。
ガクチカの例を挙げると、授業がオンラインばかりで、力を入れたいゼミや実験がなかなか進まない。部活やサークルも制限され、実績を示すはずの大会やイベントが中止になってきました。
留学は、先月から日本への入国者の上限が緩和されたことなどで、交換留学に出られる学生がようやく増え始めましたが、これまではかなり厳しい状況でした。アルバイトも業種によって難しい状況が続いています。
学生生活での経験や交流が減って、話すこと、書くことが思いつかないというのは深刻な悩みです。

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4年生は、すでに就職活動が始まっていますが、説明会や面接もオンラインという会社が多くなっています。こうした中で、何とか取り組んだことやじっくり考えたことなどをアピールしていますが、面接をする企業側も、無理に「ガクチカ」を聞かないという会社も出てきています。
そして、このあとOB訪問やインターンシップを始める3年生は、特に支援が必要です。
先ほども指摘したように、入学以来、思うような学生生活を過ごせていないうえ、相談できる先輩や友人もいないという学生が多くいるからです。
大学は、学生生活や就職活動の支援や相談体制の充実に、これまで以上に力を入れてほしいと思います。

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<ニュートンの逸話>
学生たちには、コロナ禍でも学生生活を充実させながら、夢に向かってほしい。そんな明るい話題はないかと思い、リンゴが落ちるのを見て万有引力を発見したと言われるニュートンの逸話をご紹介します。

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17世紀のイギリスの科学者・アイザック・ニュートンの逸話です。アメリカのワシントンポスト紙が、感染が広がってきたおととしの3月に掲載して、あらためて話題になりました。
当時、ヨーロッパで感染症のペストが大流行していて、まだ20代前半だった若きニュートンがいたケンブリッジ大学も閉鎖されました。このため、およそ1年半の間、故郷に戻ったのですが、そのいわば避難・自粛生活の中で、自由に学問に取り組んだところ、万有引力の法則などを発見したというものです。実は発見したきっかけや時期が違うとも言われていますが、コロナ禍で外出できない人々を励ます記事でした。

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今の大学生たちも、どんな状況でも諦めず、学問ややりたいことに向き合うことを大切にしてほしいと思います。

(二宮 徹 解説委員)

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