5歳から11歳の子どもを対象にした新型コロナワクチンの接種が自治体によっては始まっています。子どものワクチン接種をどうするか迷っている方もいるかと思います。5歳から11歳用の新型コロナウイルスのワクチン、どのようなものなのでしょうか?
◆5~11歳向けの新型コロナウイルスのワクチンとは?
5~11歳の新型コロナウイルスのワクチンは、3月16日時点で全国で9万5194人が接種しています。対象となる5~11歳の人口の1%をこえるお子さんが接種していることになります。
5歳から11歳の子ども用のワクチンが承認された当初は、まだオミクロン株に関するデータが十分ではないと言われていましたが、少しずつ海外のデータが出始めています。
そもそも5〜11歳を対象にした子ども用ワクチンとは、どういうものなのでしょうか?
これは、ファイザー/ビオンテックが開発した「mRNAワクチン」で、12歳以上が使っているワクチンとは違い、ふたの色でも見分けられるようになっています。この5~11歳用は、1回に接種するワクチンの有効成分の量が12歳以上用のワクチンの3分の1。そして、2回接種で、接種の間隔は基本3週間となっています。
◆5〜11歳の新型コロナウイルスワクチンの有効性・効果は?
5〜11歳のワクチンの有効性・効果はどうなのでしょうか?
アメリカなどで行われた臨床試験の結果では、2回接種後の発症予防効果が90.7%でした。ただし、これはオミクロン株以前のデルタ株などでのデータです。
では、オミクロン株でのワクチン効果はどうなのでしょうか?
3月11日に発表されたアメリカCDC(疾病対策センター)のオミクロン株への効果のデータがあります。アメリカでは2021年11月から5~11歳へのワクチン接種を開始しています。先行して接種を始めた12~15歳も含めて、毎週PCR検査を受けてもらい、感染した人のワクチンの接種の有無など調査しました。感染した5~11歳は、ほとんどがオミクロン株への感染です。その結果、ウイルス感染を防ぐ感染予防効果が31%だったのです。これは、先にご紹介した臨床試験の結果と比べるとかなり低い数字です。また12~15歳でみてみると、オミクロン株での感染予防効果は59%、デルタ株だと87%と、この年代も5~11歳よりは高いものの、デルタ株と比べるとオミクロン株では低い数字になっています。
では、オミクロン株へのワクチンの効果、あまり期待できないのでしょうか?アメリカCDCが3月4日に発表したデータをご紹介します。去年4月~今年1月までに新型コロナに感染して救急外来で治療したり、入院した5歳~17歳の子どもを対象にした調査結果です。感染者のワクチン接種の有無なども調べた所、2回接種した場合の「入院予防効果」=「重症化することでの入院を防ぐ効果」が、5~11歳で74%、12~15歳は92%、16~17歳は94%でした。これらについては、課題もあり今後さらに検討・調査されていくことになるかもしれません。ただ、小児感染症が専門の新潟大学齋藤教授にお話しを伺った所、「12歳以上の年代より低い数字だが、5~11歳の入院を防ぐ効果、つまり重症化予防の効果は十分に期待できる」とのことでした。
◆5~11歳の新型コロナウイルスワクチンの副反応は?
ではワクチンを接種することでの副反応はどうなのでしょうか?
アメリカCDCが出しているワクチンの2回接種後の副反応のトップ3は注射部位の痛み、けん怠感、頭痛でした。12~15歳と比べてみると、5~11歳の方が少なかったことがわかります。これらの副反応は、ほとんど1日から2日ほどでおさまり、軽度から中程度だという評価です。5~11歳の方が12~15歳の副反応より少ないのは、ワクチンに含まれる有効成分の量が12歳以上の3分の1と少ないので、副反応も少なくなっている可能性があるかもしれません。
他に注意すべき副反応としては、例えば、ファイザーなどのmRNAワクチンで言われている、若い男性に多い「心筋炎」(心臓の筋肉に炎症がおこる)があるかもしれません。CDCのデータでは、5~11歳の心筋炎の副反応は100万回接種あたり、2回接種後で、男子で4.3件、女子で2件と実は他の年代に比べて低かったのです。ただ、ゼロではないことに注意が必要です。例えば、接種後に胸の痛み、呼吸が苦しいなどの症状が出たらこの病気を考え、医療機関を受診することが大切です。いずれにせよ、5歳ぐらいだと、自分の症状をうまく説明できなかったり、気づかないことがあるかもしれません。周囲の大人が、子どもの体調変化に気をつけたいものです。
◆5~11歳の新型コロナウイルスワクチンをどう考えるか?
5~11歳の新型コロナウイルスのワクチンは、公的な接種なので無料です。接種券が、お住まいの自治体から送られてくるのが基本になります。また、このワクチンは、保護者が子どもに接種を受けさせるよう努めなければならない「努力義務」ではありません。つまり、接種するか、しないかの判断が保護者により委ねられているのです。しかし、情報がどんどん新しくなっていることもあり、どれが最新情報かわからず、とまどい、接種を迷うことがあるかもしれません。
ただ日本小児科学会は「基礎疾患などのある子どもは重症化リスクが高いのでワクチン接種をした方がよい」としています。感染するとコロナも、もとの病気も重症化するリスクがあると考えられるからです。
具体的には、ぜんそくの症状が薬で抑えられていない、先天性心臓病で体に十分な血液が流れていない、病気や治療で免疫の力が落ちているなど、さまざまなケースがあります。お子さんの状況をよく把握している主治医に、接種後の体調管理も含めて、事前相談するといいかもしれません。また例えば、ワクチンをする際の「メリット=予防効果など」と、「デメリット=副反応など」を理解したうえで接種するかどうか判断することが大切になります。
持病・基礎疾患がない、健康な子どもの場合は接種について、どう考えたらいいのでしょうか?
今、新規感染者は減少していますが、10歳未満の子どもの感染者は、年代別で多い状態が続いています。例えば東京では、3月に入ってから14日までの都内の新規陽性者を年代別にみると「10歳未満」が最も多く、全体の19.0%です。新潟大学の齋藤教授は「5~11歳の新型コロナに感染した大多数は軽症。しかし、感染者が増えればワクチン未接種の感染者で、まれに重症化する子が増える可能性がある。重症者を減らす意味で接種は大切」と言っていました。
子どもの後遺症がどうなのか、ワクチンの効果がどれぐらい続くのかなどわかっていないことがまだまだあり、今後、新しい情報がさらに出てくると思います。ワクチンを接種するか・しないかを考える際に、「メリット=効果など」と「デメリット=副反応など」を天秤にかけ、どちらが上回るか、比べることがあるかと思います。大人と比べて、子どもの場合、その差が小さいので、なかなか判断が難しいかもしれません。
齋藤教授には、この年齢層のお子さんがいるそうで、お子さんとよく話をし、お子さんがわからないことに答え、接種を決めたそうです。接種するにせよ、しないにせよ、子どもも保護者もワクチンについて知り、納得した上でどうするのか決めることが大切かもしれません。
(矢島 ゆき子 解説委員)
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