全国各地でスギ花粉が飛び始めています。今年は去年より花粉の飛散量が多くなるかもしれないという話もあり、去年、花粉症の症状が軽かった人も、今年は花粉症対策をしっかりする必要があるかもしれません。
◆花粉症の人はどのぐらい?
花粉症の人はどのぐらいいるのでしょうか?
全国調査では1998年から大体10年ごとに10%以上ずつ花粉症の患者が増加していることがわかっています。2019年の有病率は42.5%。まさに「国民病」です。
この花粉症、さまざまな花粉が原因で起こりますが、花粉症の中でも多いスギ花粉症について、さらに詳しくみてみると、2019年の調査では0~4歳は3.8%ですが、5〜9歳で30.1%。10代以降は60歳までおよそ50%、2人に1人がスギ花粉症です。5歳以上から多くなるのは、小学生になると外での活動が多くなり、スギ花粉を体に吸い込むことが増えるためなのか、花粉症患者が増えると言われています。
◆そもそも、花粉が体に入るとどうして花粉症になる?
では、そもそも花粉が体に入ると、どうして花粉症になるのでしょうか?実は、人によっては花粉に含まれる「ある物質」を受け入れられない人がいることがわかっています。そのような場合、花粉が鼻・のどなど、体の中に入ってきたときに、例えば、くしゃみで追い出そうとしたり、鼻水で洗い流そうとしたり、鼻づまりで中に入りにくくしようとするなど「アレルギー反応」が体で起こり、花粉症になるのです。くしゃみ、鼻みず、鼻づまりというアレルギー性鼻炎の症状以外に、目がかゆくなり、涙が出るようなアレルギー性結膜炎に同時になることもあります。また、のどのかゆみ、皮膚のかゆみ、下痢、熱っぽい感じなどの症状が現れることもあります。
◆新型コロナと花粉症の症状の共通点は?
新型コロナのオミクロン株が主流になったことで、新型コロナと花粉症、症状の共通点が増えました。去年、流行したデルタ株は、頭痛、発熱、だるさ、味覚・嗅覚異常などが特徴でしたが、オミクロン株はデルタ株に比べ、味覚・嗅覚異常は少なく、のどの痛みを訴える人がより多く、鼻水などの鼻の症状もあると言われていす。花粉症について長年、研究し、これまで多くの新型コロナの患者を受け入れている千葉労災病院の岡本院長にお話を伺ったところ、新型コロナの感染がまだ続いている今は、「発熱・のどの痛みを伴う鼻の症状があれば、まず新型コロナへの感染を疑う」とのこと。特に高齢者は年をとってから花粉症になる人は少ないので、花粉症でないのに、このような症状があれば、新型コロナの可能性を考えたほうがよいかもしれないということでした。また「花粉症の人は、いつ頃からどんな症状が出るかわかっている人が多いと思うので、いつもの花粉症と違う症状が出ていないかに注意して欲しい」とのことです。
◆コロナ禍だからこそできた花粉症の研究
コロナ禍だからこそできたある花粉症の研究をご紹介します。研究結果が2月に発表されました。研究責任者の福井大学の坂下講師にお話を伺ったところ、「今、花粉症でない人も皆、マスクを着用していて、コロナ以前とは全く異なる状況なので、このマスク着用が、花粉症の新規発症の予防効果があるかどうか、調査することにした」とのこと。花粉症の研究者からすると、国民全員が花粉症予防のためにマスクをしているように見え、これはチャンスだと思ったということです。そこで、去年、スギ花粉のシーズが終わった後の6~7月に福井県の小学生の保護者にアンケート調査を実施。2万2,081人の回答を解析した結果、2021年に小学生でスギ花粉症の新規の発症率は1.4%と、それ以前の平均新規発症率3.1%の半分に減少していました。また花粉の飛散量が去年と同じぐらいだった2017年と比べても発症率は半分以上、減っていたそうです。花粉症になっていない人も、花粉の季節にマスクをすることを、全国規模で長く続けられたらかなり花粉症の患者を減らせられるかもしれないということです。ただ今回はあくまでもアンケート調査なので、今後、さらに血液検査などもしながらデータを集め詳しく見ていきたいとのことでした。
このマスクの着用はすでに花粉症を発症している人にとっても有効です。体の中にはいってくる花粉の量が少なければ軽症で済むこともあります。また、花粉症の人が新型コロナに感染して無症状の場合、気がつかないうちにウイルスをくしゃみでまき散らし、周りの人にうつしてしまうおそれもあるので、感染を広めないためにもマスクの着用、そして、花粉症をきちんと治療することが大切です。
◆コロナ禍の花粉症対策
花粉が飛び始めた今、治療はどうしたらいいのでしょうか?
花粉の飛散が本格化する前に治療を始めることで、花粉症の症状がひどくならないようにできることがわかってきています。まだ、花粉の飛散が本格化していない地域の方は、例えば即効性があり、副作用が少ない抗ヒスタミン薬、あるいは鼻に噴霧するステロイド薬など市販薬でもいいので使うと、重症化しないですむかもしれません。
ただ、すでに花粉が本格的に飛散し始めている地域もあるかと思います。花粉が本格化する前に治療をはじめ、症状を重症化させないことが理想ですが、花粉の飛散が本格化してからも、薬などの治療で症状を抑えることは可能です。ただ薬で治療しているのに、なかなか良くならない場合は、他の治療の選択があるかもしれません。早めに耳鼻咽喉科に相談するのがよいでしょう。
そして、花粉症になると、目をかいたり鼻をかんだりすることが多くなりがちですが、新型コロナの感染につながらないよう、手指のこまめな消毒を忘れないことが大切です。
また、今、加湿器を使っているご家庭も多いかもしれません。鼻やのどなどを乾燥させないことは花粉症にも新型コロナなどの感染に対しても大切なので、適切な加湿(40~60%ほど)は大切です。また、今の時期、換気をすると花粉が気になるかもしれませんが、新型コロナの感染が続く今、換気は大切です。天気が良く、気温が上がり、風のある日は花粉飛散が多いので注意が必要ですが、窓を全開にしなくてもいいので、是非、適切な換気を心がけていただけたらと思います。
花粉の飛散、かなり多くなってきていますが、花粉症の方は、新型コロナの流行がはじまって3度目の花粉症の季節を上手に乗り切っていただけたらと思います。
(矢島 ゆき子解説委員)
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