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コロナ禍でも健康寿命をのばす!元気に長生きする秘けつは?

矢島 ゆき子  解説委員

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2019年の健康寿命が発表され、2016年の前回調査より、のびていることがわかりました。
コロナ禍の今、健康寿命をさらにのばし、元気に長生きするためには、どういうことを知っているといいのでしょうか?

◆健康寿命と平均寿命との関係は?

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今日のテーマ「健康寿命」。寿命というと平均寿命というのがまず頭にうかびますが、健康寿命とはどういうものでしょうか?
健康寿命とは、文字通り、健康でいられる寿命。介護を受けたり、寝たきりにならずに健康的に社会生活できる期間のことです。2019年の健康寿命が発表され、男性は72.68歳、女性は75.38歳であることがわかりました。高齢者の社会参加が進んだ、脳卒中の治療が進み後遺症のある人が減ったなどの理由で、健康寿命がのびてたのではないかと考えられています。
平均寿命について見てみるとこちらは2019年のデータでは、男性81.41歳、女性87.45歳でした。この、健康寿命と平均寿命の差は、「健康上の問題で日常生活に制限がある期間」=自立困難な期間といわれ、男性8.73年、女性12.07年もあり、男女ともに、健康寿命と平均寿命の差がまだかなりあることがわかります。

◆どんな病気で、介護が必要になる?

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できれば自立した生活を送りたいもの。健康的な社会生活が送れなくなる原因としてはどんなことが考えられるのでしょうか?
介護が必要になった主な原因としては、認知症17.6%、脳卒中16.1%、高齢による衰弱12.8%、骨折・転倒12.5%、関節疾患10.8%、脊髄(せきずい)損傷1.5%、心臓病4.5%、がん2.6%、糖尿病2.5%などがあげられています。他に、呼吸器疾患(2.7%)、パーキンソン病(2.3%)、視覚・聴覚障害(1.4%)などもあります。この内容をもう少し見てみると、骨折・転倒、関節疾患、脊髄(せきずい)損傷は、私たちが体を動かすときに欠かせない骨・関節・筋肉・神経など「運動器」の障害でもあり、合わせると24.8%で、実は原因の1位になるんです。
これらの運動器の障害の場合、脳卒中・心臓病と違い、いきなり要介護になる人は少なく、適切な運動を続けることなどで、要介護・寝たきりを予防ができると言われています。宮崎大学附属病院の帖佐病院長にお話を伺ったところ、「しっかり動けないと高齢者は、地域の人たちと日常的にふれあい活動する場(「通いの場」)にも一人では通えなくなります。社会参加し、人と話す機会が作れない。だから動くことはとても大切で幸せなことなんだ」とのことでした。このように、関節・筋肉などが悪くならないように体を動かし続けることが健康的な社会生活を送るためにも大切なんです。

◆健康寿命をのばすためには若いときから予防を始めることが大切

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健康寿命をのばすためには、若いときから予防を始めることが大切だということもわかってきています。例えば20~89歳の8681人の男女を対象に身体の動きなどを調べた調査があります。(平均年齢は51.6歳、女性が58.5%)調査の結果、高齢だから骨・関節・筋肉などの働きが悪くなるのではなく、20代からでも、移動機能の低下=つまり立つ・歩くなどの身体能力の低下がはじまっているということがわかりました。また40歳を過ぎると、移動機能の低下が始まるだけでなく、それが進行し、さらには進行して社会生活に制限がでるという人が、年をとるほど増加していたのです。(運動器の障害によって「立ったり歩いたりするための身体能力=移動機能」が低下した状態は、ロコモティブシンドローム、略してロコモと呼ばれています。)このリスクのある状態を放置しておくと、さらに悪くなってしまいます。ですから、若い世代、特に40歳をすぎたら「移動する機能=運動器」を意識し、予防することが大切なのです。

◆高齢者だけでなく、若い世代への健康寿命をのばす働きかけがはじめられている、、、

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2019年の健康寿命は都道府県別でも発表されています。男性では1位大分(73.72歳)、2位山梨(73.57歳)、3位埼玉(73.48歳)、4位滋賀(73.46歳)、5位静岡(73.45歳)です。女性は1位三重(77.58歳)、2位山梨(76.74歳)、3位宮崎(76.71歳)、4位大分(76.60歳)、5位静岡(76.58歳)でした。
男性で1位、女性で4位だった大分県は、前回2016年の調査の順位は男性36位、女性は12位で、かなりあがりました。高齢者の体操などの活動の場への参加率が2019年に全国で最も高くなり、介護予防につながる習慣が根付いたことが健康寿命ののびにつながった可能性もあるということです。また、大分県では健康寿命を延ばすため、高齢者だけでなく、若い世代への働きかけをはじめています。具体的には、以前、20代から50代の健康状態が悪かったため、さまざまな企業に「健康寿命日本一」をよびかけ、働き盛り世代の健康状態をよくするための環境作りもしてきました。

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その一つが、「おおいた歩得(あるとっく)」というアプリの利用です。日常生活の中で歩いた歩数をチェックするものので、歩数チェックはしているという方も多いかと思います。このアプリでは、どのぐらい歩いたかを、例えば、バーチャルの「参勤交代のコース」でたとえてみて、自分が今、大分から東京までいくコースのどこまで歩いたかを、日々、地図上で確認できるようにするなど、ゲーム感覚で楽しめるようにしています。

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さらに県内にある100か所以上の温泉めぐりスタンプラリー。すべて歩くわけではありませんが、各温泉を回って、現地でQRコードを読み取ることでスタンプを獲得し、賞品がもらえたり、アプリを利用した賞金つきの職場対抗などもし、今まで無関心だった人が歩きはじめたり、楽しみながら歩くことを長く続ける環境作りができてきたそうです。

◆健康寿命延伸のための提言・・・私たちにできることは?

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去年、健康寿命に影響する認知症、脳卒中、心臓病、がん、糖尿病など病気を専門に治療・研究している6つの国立の研究センター(国立がん研究センター、国立循環器病センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が、健康寿命を延伸するための提言を出しました。健康寿命に影響する病気は生活習慣に関係しているものも多く、若いうちから予防することが大切です。提言の中では、私たち一人一人ができる、科学的根拠のあることが紹介されています。

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私たち一人一人ができることとしてのポイントを一部、ご紹介します。
・禁煙
・節酒
・健康な体をつくる基本の食事・・・・食塩は最小限、野菜・果物を毎日とる、食物繊維・大豆製品(=植物性たんぱく質)・魚・乳製品を多くとる、甘味飲料を控えるなど
・適正体重の維持・・・やせすぎても太りすぎても健康リスクが生じます。とくに高齢者はやせすぎない。
・身体活動・・・現状より1日10分でも多く動くなど
・口腔ケアなどがあります。

これまでも聞いたことがあるポイントであるかもしれません。これらを続けることが、今後、元気に長生きするためにも大切になるんです。日本は世界有数の長寿国になりました。さらに健康寿命をのばすためにも、若いうちから、子どものときから体を動かし、どう食事したらいいのかを身につけることも大切です。新型コロナウイルスの感染拡大で、外出の自粛がさらに必要になるかもしれませんが、まずはできることから取り組み、元気で長生きできる健康的な生活を送っていただけたらと思います。

(矢島 ゆき子 解説委員)

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