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マスクでドライアイ!? コロナ禍の角膜リスク

牛田 正史  解説委員

新型コロナウイルスの感染が国内に広がってから、まもなく2年。
マスクを着ける生活も長期化しています。
そんな中、目が乾く「ドライアイ」になる人が、増えていることが分かってきました。
今回は、マスクによるドライアイなど、「目」の角膜を脅かすリスクについてお伝えします。

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【なぜマスクでドライアイに?】
マスクをしていると、メガネをしている人のレンズが曇ったりします。
息が掛かって、逆に目が潤っているようにも感じますが、これがドライアイの要因になります。

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コロナ禍に、イタリアの研究者が3000人あまりを対象に行った調査では、18.3%、約5人に1人が、マスクでドライアイの症状が悪化したと回答しました。
これは海外の調査ですが、眼科の専門医に聞きますと、国内でもマスクでドライアイになる人が、増える傾向にあるそうです。

なぜマスクを着けるとドライアイになりやすいのか。
眼科が専門の、東邦大学医学部・堀裕一教授に話を聞いたところ、マスクから空気が漏れて、呼吸の度に目に当たることが要因です。
たとえ湿気のある「呼気」だとしても、空気が目に当たれば当たるほど、水分が奪われて目が乾いていくそうです。

【ドライアイの深刻な影響】
このドライアイ、単に目が乾くというだけでなく、深刻な影響を目に与えます。
「目の角膜が傷つきやすくなる」という点です。

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角膜とは目の表面にあり、厚さはわずか0.5ミリ。
目に光を取り入れ、レンズの機能を持っていて、視力などにも影響します。
膜と言っても、角膜の表面は生きた細胞がむき出しになっています。
普段は、表面を涙の膜が覆っていて、まばたきをすると、均一な涙の膜ができます。

ところが、ドライアイになると、この涙の膜が無くなったり崩れたりして、角膜がむき出しになります。
そうすると目にゴミが入ったり、あるいは「まばたき」をしたりするだけでも、角膜の細胞がはがれて傷がついてしまうんです。
角膜は細胞ですので、自分で修復する機能はあるのですが、
ドライアイで絶えず目が傷つくと、この修復が追い付かずに、傷が残ってしまいます。

【角膜が傷つくと・・】
では、角膜が傷つくとどうなるのか。
次のような影響が出てくるおそれがあります。
「文字がぼやける」。「目が乾いてショボショボする」。
あるいは「目がかすむ」それに「痛み」を感じる場合もあります。
そして、「視力の低下」にも繋がっていくそうです。

【コロナ禍でのもう1つのリスク】
そして、ドライアイのリスクはマスクだけではありません。別のリスクもあります。

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パソコンやスマートフォン画面などを見ながら作業する、いわゆるVDT作業です。
コロナ禍でオンラインでの作業や会議が増え、DVT作業が長時間化している人も多いのではないでしょうか。
実は、この作業に集中すると、まばたきの回数が大きく減る傾向があります。
平均して1分間の回数が5回程度と、通常の4分の1程度まで減少するというデータもあります。
先ほど、まばたきが目の表面に涙の膜を作ると言いましたが、これが減ることで、ドライアイとなり、角膜に傷がつきやすくなります。

さらに不安やストレスが続いても、自律神経に影響を及ぼして涙の量が減る、あるいは涙の中のうるおいを保つ成分が少なくなる、つまり質が低下するとされています。

ですので、「マスクによるドライアイ」、「VDT作業の増加」、そして「不安やストレス」の3つを、「コロナ禍の角膜の三重苦」と呼ぶ専門家もいます。

【ドライアイの対策は?】
では、どのような対策が必要になるのか。
東邦大学医学部の堀裕一教授は以下の点を挙げています。

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① まずは「まばたきの回数を意識して増やす」。
先ほどもお伝えしましたが、まばたきをすれば、角膜の表面に涙の膜が張られます。
② そして「パソコンで作業するときは少し視線を下げる」。
上を向くと瞼が開いて、より目が乾きやすくなるそうです。
③ それに、作業の合間に「目を休める休憩時間をきちんと取る」。
5分、10分、15分程度の休憩が望ましく、少し遠くを見たり、可能ならば蒸しタオルで温めるのも良いそうです。
④ さらには「目薬を使って目を潤す」ことが大切だということです。
ただ、この中で目薬については1つ注意点があります。
というのも、目薬を差し過ぎると、逆に涙の膜が壊れたり質が低下したりして、目が乾いてしまい、角膜が傷つきやすくなってしまうというんです。
一般的には1日5回から6回前後が限度だそうです。
堀教授は、目薬の添付文書などに記載されている用法や用量を確認してほしいと話していました。
そして、もう1つ。目薬には防腐剤が入っている製品も多く売られていて、通常であれば効果があるんですが、すでに角膜に傷がついている人は、この防腐剤が入っている目薬を差すと症状を悪化させる恐れもあるといいます。
気になる人は医師や薬局などに相談してみてください。

【角膜の傷を見極めるには】
こうした予防をしても、角膜が傷づいてしまっている場合は、医師などへの相談が必要になります。
では、何をもって角膜が傷ついているかどうかを判断するのか。次の項目が参考になります。

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「寝ても疲れ目が解消しない」
「朝から目がかすむ」
「光をまぶしく感じやすくなった」
「目が痛くなることがある」
「目がショボショボする」
こうした症状が長く続くと、角膜に傷がついているおそれがありますので注意してください。

新型コロナウイルスは、残念ながら収束のメドはまだ立っていません。
マスクを着用する生活、あるいはパソコン画面を見ながら長時間、仕事をするということは、まだ長く続く可能性が十分あります。
コロナ禍で、角膜が傷つくリスクは高まっていますので、今後も、目の渇きや疲れに十分気を付けてください。

(牛田正史解説委員)

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