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成人年齢引き下げまで3か月 防げるか?消費者被害

今井 純子  解説委員

きのうは、成人の日でした。そして、今年4月には、この成人になる年齢が引き下げられます。それによって、新たに成人になる18歳、19歳の人たちが、悪質な事業者に狙われるのではないかと、懸念されています。今井解説委員。

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【なぜ、新たに成人になる人が狙われるのですか?】
今は20歳からが成人で、未成年の18歳、19歳は法律で守られています。

【守られている?】
はい。未成年は、携帯を買ったり、ローンを組んだりと「契約」を結ぶ場合、原則、親などの同意が必要です。そして、同意なく契約をした場合、未成年だという理由だけで「契約を取り消す権利」が民法で定められています。

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【それが守られているということですね】
そうです。まだ判断力が十分ではなく、自分に不利な契約をする恐れがあるという考えからです。それが、今年4月。民法の改正で、18歳、19歳が成人になります。法律上は、保護者の同意なく、自由に契約できるようになる。その代わり、原則、後から契約を取り消すことができなくなります。そして、この取り消し権がなくなったところを、悪質な事業者が狙っているのです。

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【若い人はもちろん、お子さんやお孫さんがいる方にとっても、重要な話ですね】
多くの方に知っていただきたいと、NHKの特設サイトに、ポイントをまとめたショート動画をつくりました。この動画は、こちらのQRコードからもご覧になれます。

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【成人になって、取り消し権がなくなったとたんに、被害が増える心配があるのですね。どのような被害が多いのですか?】
例えば、大学の先輩に「ここにある映像を見てその通り投資をすれば、簡単にもうかる」と誘われて、50万円の情報商材を契約した。でも、全然もうからない。その後、友達を誘えば、報酬がもらえると言われた。これは情報商材のマルチ商法です。

【友達を誘えば、自分が加害者になってしまうわけですね】
また、ネットで「今ならお試しで2000円」という広告を見て行ってみたら「20万円のコースの方が効果がでる」と執拗に誘われ、契約をしてしまった。こうした美容関連のトラブルも多くあります。

【いずれも、高い金額ですね】
「親の同意なくローンを組むこともできる」と言ってきたり、「収入がなくてもウソの申告をすればローンが組める」と、指南したりする事業者もいます。だから、成人になると、被害の額も増えるのです。

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【新しく成人になる18歳というと、高校3年生や大学1年生ですよね。心配ですね】
▼ 成人年齢が引き下げられることは、19歳以下の96%が知っている。
▼ 一方、未成年の取り消し権については、3分の1が知らないという調査結果もあります。
国の消費者委員会は、このままでは、若者の消費者被害が増える恐れがあるとして、年末、政府に対して
▼ 悪質な事業者の処分を強化するとともに、
▼ すべての高校で消費者教育の取り組みを進めること。
▼ その上で、業界団体に、18歳、19歳が多額の借金を抱え込むことがないよう自主的な取り組みを促すこと、を求める意見をまとめました。

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【自主的な取り組みですか?】
取り組み。始まってはいますが、まだ不十分という、受け止めなのです。どんな取り組みかと言うと、
▼ 銀行のカードローンについては、ほとんどの銀行が、4月以降も「当面、20歳未満には提供しない」としています。18歳、19歳に提供する予定という銀行は2行と限定的です。

【銀行側がかなり慎重なのですね】
そうです。一方、
▼ 消費者金融については、18歳、19歳を貸し付けの対象にすると答えた事業者が、4社に1社いました。親の同意なく借りられる事業者もでてくる見通しです。事業者側は、その場合でも「利用限度額を低くする」とか「マルチ商法にかかわっていないか確認する」といった、被害を防ぐ取り組みをするとしていますが、心配は残ります。

【クレジット契約はどうなのでしょうか?】
こちらは、多くの事業者で、原則、審査に通れば18歳から親の同意なく、カードを作ったり、携帯電話など個別のクレジット契約を結んだりできるようになる見通しです。中には、「高校生とは契約しない」「学生の場合、限度額を下げる」という事業者もありますが、契約をする場合は、慎重に審査をしてほしいと思います。最後に
▼ 投資。株式の売買や投資信託など通常の投資は、おおむね、18歳から自分の判断で取引できるようになる見通しです。
ただ、FXや暗号資産など、大きな損が出る懸念のある取引については、いくつかの事業者に聞いたところ、
▼「18歳から契約できる方向で検討している」という事業者がいる一方、
▼「20歳以上としか契約しない」とする事業者もいました。対応は分かれそうです。

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【18歳、19歳との契約は慎重にしてほしいですね】
そうですね。これまで、判断力が十分ではないとして18歳、19歳は守られてきました。これからは成人だと言われても、一気に判断力がつくとは思えません。金融庁は、先週、消費者金融に対して、18歳、19歳については、少ない額を貸す場合でも、収入を書類で確認するなど、より慎重に対応するよう求める方針を新たに示しました。成人になったばかりの人が借金を背負ったり、大損したりすることがないよう、全体的に、本当に慎重な取り組みを求めたいと思います。

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【それとあわせて、教育も本当に大事になってきますね】
本当に大事です。政府は、高校で「契約がいかに重要か」「クーリングオフなど、消費者を保護するためにどのような仕組みがあるか」教える取り組みを進めています。ただ、いまだに地域や学校によって、ばらつきがあって、十分ではないという指摘もあがっています。取り組みを徹底してほしいと思います。

【最後は、自分の身を守ることが大事ですね】
ひとりひとりが、大人になるという責任と自覚を持つことが大事です。
▼ ネットを含め、契約をする前には、内容をきちんと確認し、本当に支払いができるのか。考え契約すること。
▼ 特に、「みんな儲かっている」と投資を勧められた場合、まず疑うこと。借金をして契約するのは危険です。
▼ あやしいと思ったら身近な消費生活センターに相談してください。全国一律で、188からつながる仕組みになっています。国民生活センターの公式LINEアカウントから、よくあるトラブルについて解決方法を調べることもできます。

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【早めに相談することが大事ですね】
そして自分の身を守るということでは、政府が、人気アニメとタイアップして、成人になるとはどういうことか。なにに注意しなければならないかを学べる動画などを、先週公開しました。

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【家族で一緒に学ぶこともできますね】
あと3か月。家庭を含め、社会全体で、若い人たちが、トラブルに巻き込まれることがないよう取り組みを急がなければいけないと思います。

(今井 純子 解説委員)

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