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ロボコンで"廃炉"に挑む!

土屋 敏之  解説委員

東日本大震災から今年で11年になりますが、東京電力福島第一原子力発電所では廃炉への困難な取り組みが続いています。こうした中で高等専門学校の学生たちによる廃炉をテーマにしたロボットコンテストが開かれました。

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【廃炉技術を課題にしたロボットの競技会】

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これは「廃炉創造ロボコン」という大会で、3~40年かかるとされる福島第一原発の廃炉を将来的に支えていく人材の育成を目的に、2016年に地元福島高専の先生たちの発案で始まり、毎年行われてきました。
ロボコンと言うとNHKのロボットコンテストもありますが、こちらは別のもので最初は文部科学省のプログラムとして行われ、現在は日本原子力研究開発機構と高専の協議会が主催しています。
福島第一原発では、元々去年の末までに溶け落ちた燃料デブリの試験的な取り出しを開始する予定でしたが、イギリスの企業に発注したロボットアームの開発が遅れたため始めることができず、1年程度の延期を余儀なくされています。そういう意味でも、日本で人と技術を長期的な視野で育てていく重要性が、あらためて浮き彫りになったとも言えます。

【どんな競技?】

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廃炉創造ロボコンでは、これまでも人が入れない原発内部の調査や燃料デブリの取り出しを模した競技が行われてきました。今回は「除染」が課題です。
書類審査で選ばれたこちらの12の高専のチームが、先月11日、福島県楢葉町にある実際の原発用ロボットの開発施設を舞台に、競技に挑みました。去年はコロナ禍でオンライン審査のみだったため2年ぶりの大会となります。

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今回の競技フィールドの様子です。遠隔操作のロボットで途中に段差がある曲がりくねったコースを移動し、高さ2.7mまでの壁面を「除染」するという設定です。実際の除染作業では壁を拭いたりはぎ取ったりもしますが、競技では代わりに白い範囲をペンで青く塗りつぶし、言わば「ここを除染した」と見てわかるようにしていきます。競技時間は10分です。
この廃炉創造ロボコンには厳しいルールがあり、まず人が入れない原発内の想定なので、選手は自分の目でフィールドやロボットを見ることは出来ません。壁の向こうからロボットのカメラの映像だけ見て操作しなくてはならないのです。しかも、電波も届かないという設定なので無線の使用は不可。つまり、延々ケーブルを引っ張っていく必要もあります。

(*大会映像)

【競技の結果は?】
 
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最優秀賞(文部科学大臣賞)に選ばれたのは小山高専。10分間で指定された範囲のほぼ全面を塗りきりました。それを支えたのは、色を塗るペン先にサスペンションをつけ加わる力を均一化してなめらかに塗れるようにするなど、ロボットの完成度の高さが際立ちました。
優秀賞には、LEDで彩られたロボットでケーブルが絡まないよう途中にポイントを設置しながら進むなどの工夫が光った大阪府立大学高専。アイデア賞には、ユニークな回転アームで広い面積を一気に塗った旭川高専。その他ご覧の各校が受賞しました。
廃炉創造ロボコンの審査員は廃炉や原子力技術等の専門家たちが務めていますが、競技結果だけでなく、事前に各校のピットを回って表に現れにくいアイデアの独創性や技術的工夫も採点しているのが特徴です。学生たち自らが廃炉の課題を考え解決策を見いだしていくプロセスを重視しているためです。
問題意識を高めてもらうため、大会に先立って実際に福島第一原発や廃炉技術の開発施設を見学するサマースクールも行ってきました。

【廃炉創造ロボコンの意義は?】

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目的は将来に向けた人材育成ですが、例えば前回最優秀賞をとった福島高専の学生は、その後企業と共同で実際に福島第一原発の調査用の小型ロボットの開発に取り組んでいます。
またこれまでに出場した学生が卒業後、東京電力や原子力機構に就職したケースもあります。もちろん原子力分野に限らず、この大会を経験した多くの学生がその後、機械・電気などの広い分野で日本の技術を支える人材に育ちつつあります。
今大会の実行委員長・内海康雄さんは「廃炉は日本が抱える大きな問題で、人材育成には長い時間がかかるので、それを少しでも支援できれば」と話していました。
11年前の震災当時、今回参加した学生たちはまだ子供でした。そうした若者たちに廃炉という言わば現役世代の“後始末”を託すのは大人の事情に過ぎないわけで、心苦しい面もあります。とは言え、3~40年かかるとされる廃炉は次世代にバトンを引き継いでいく必要があることもまた確かです。そういう意味でもこの大会に今後も注目していきたいと思います。

(土屋 敏之 解説委員)

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