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2022年のくらし 期待と不安

今井 純子  解説委員

今年のくらしは、どうなるのでしょうか。今井解説委員です。

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【今年こそ、明るい年になってほしいという思いです】
本当にそう思います。コロナの長期化で厳しい生活を強いられている方も多い中、今年こそ良い年にしたい!という期待を持つ人も増えている。そんなアンケート結果もあります。

【どのような期待でしょうか?】
景気の見通しについて、去年10月に、およそ4000人に聞いた調査ですが、2022年(つまり、今年)景気が「良くなる」と答えた人がおよそ30%と、一年前と比べて7ポイントあまり増えたというのです。「悪くなる」と答えた人は16ポイント近く減りました。
良くなる理由として、多かったのは「コロナの収束・反動」そして、「経済の好転」です。オミクロン株の感染が出てくる前の調査ではありますが、なんとか今年こそ、コロナの感染が落ち着いて、経済が回復してほしい。そんな期待がうかがえます。

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【経済は回復してほしいです】
そうですね。そして、今年、何に、おカネをかけたいか聞いたところ、トップは「旅行」で30%あまりに達しました。去年、おカネをかけたものは?をみると「旅行」は、およそ6%でしたので、去年、外出の自粛を強いられただけに、今年は旅行をしたい!と考えている人が多いことがうかがえます。2位の「外食」、6位の「レジャー」も同じ傾向です。
一方、「ふだんの食事」は、去年ほどおカネをかけたくないという傾向になっています。

【外で消費をしたいという期待。それはわかりますが、消費を増やす余裕はあるのでしょうか?】
余裕はないという方も多くいますが、全体的には家計を取り巻く環境。改善の傾向が見られます。
▼ 働く人ひとりあたりの給与。10月はプラス0.2%。コロナの影響で下がっていましたが、ここ8か月、連続で前の年を上回っています。
▼ また、家計が抱える現金・預金も、一年前より38兆円増えて、過去最高を更新しています。
経済的に、コロナの影響はあまりなかったけれど、消費を自粛せざるをえなかった。という方もいて、今年は外へ出て、外で消費をしたいという意欲・期待につながっているのではないかと思います。

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【実際の消費の動きはどうなのでしょうか?】
秋以降、少し明るさは見えています。
▼ クレジットカードの利用情報をもとに消費の動向を指数にする調査では、11月は、新型コロナ感染拡大前・2018年までの3年間の同じ月の平均と比べても、4.2%増加しました。2ヵ月連続のプラスです。

【コロナ前と比べても増えているのですか】
そうなっています。
▼ 例えば、外食でも、「居酒屋」は苦戦が続いていますが、「お寿司」は、大幅なプラスになっています。家族などと久しぶりに外食をしたい!という動きがでていることがみられます。他の統計でも、
▼ 大手デパートの売り上げ、そして、年末年始の国内の空の便や新幹線の予約。こちらは、いずれも、コロナ前の水準には戻っていませんが、一年前よりは、かなり回復しています。

【年末年始、街中の人出も多かったようですね】
はい。こうした消費の動きを受けて、
▼ 政府は、12月の月例経済報告で、景気について「持ち直しの動きがみられる」と、1年5カ月ぶりに判断を引き上げました。
▼ OECDも、今年の日本の経済成長率について、3.4%という予測を出しています。去年は、1.8%の見通しで、アメリカやヨーロッパと比べて、回復が遅れていましたが、今年は、ようやく回復の動きが加速するとみられているのです。

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【この通りになるといいですね】
ただ、期待の半面、不安もあります。冒頭の調査で、今年の景気への不安要素として、最も多かったのは「コロナの影響はまだ続く」でした。

【感染の拡大で、再び行動の自粛を求められるのではないか。不安はありますね】
コロナは本当に不安ですね。でも、不安は、それだけではありません。こんな声もあがっています。「物価上昇への懸念」です。

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【物価。上がっていますね】
そうですね。年末に発表された11月の消費者物価。1年前と比べてプラス0.5%と、3か月連続の上昇でした。
携帯電話の通信料金が大幅に安くなったことが全体の数値を押し下げているのですが、
▼ ガソリンや灯油などのエネルギー関係が大幅に上昇したほか、
▼ 食用油などの食料品、ポリ袋、テーマパークの入場料など、幅広い項目に値上げのすそ野が広がっています。

【物価はなぜ上がっているのですか?】
世界的に経済活動が活発になったことや異常気象などの影響で、原油や天然ガス、穀物、木材などの国際的な価格が上昇していることが背景にあります。それに、円安や輸送費の値上がりが加わって、11月の輸入品の物価は1年前と比べて44%あまり上がりました。比較可能な1981年以降、最大の上げ幅です。このため、国内でも耐えきれず、値上げに踏み切る動きが広がっているのです。

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【これだけ輸入品が値上がりしていると、身の周りで値上げの動きは続くのでしょうか?】
そうなりそうです。
▼ 年明け以降も、食パンやコーヒー
▼ 2月にポテトチップス、パスタ
▼ さらに3月4月と、メーカーからはこれだけの値上げが発表されています。
▼ 電気料金とガス代は、1月、2月。すべての大手で値上がりします。

【家計には痛いですね】
4月以降は、携帯電話の通話料金の値下げから一年たって、統計への影響が、なくなっていくこともあり、消費者物価は+0.5%から、1%台半ばまで高まる。というのが多くの経済の専門家の見方です。
さらに、このうち生活必需品を見てみると、11月はプラス3.1%と、全体の平均より、上昇率が高いことがわかります。この傾向、これからも続くとみられます。

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【生活必需品だと、値上がりしても買わないわけにはいきませんね】
はい。先ほど、全体的には、家計の環境が改善しているという話をしましたが、実際には、コロナで二極化が進んでいます。足元のくらし向きが「苦しい」と答えた人が40%近くに達し、コロナ前と比べて9ポイント増えている、という調査結果もあります。物価がさらに上がることで不安が強まり、せっかくの「期待」が、押しつぶされてしまうのではないか。結局、消費は伸びず、景気も改善しないのではないか。そのような心配はあります。

【どうしたらいいのでしょうか?】
やはり、物価の上昇以上に、賃金を上げることが大事だと思います。まもなく、今年の春闘が始まります。岸田総理大臣は、「業績が回復している企業は、3%を超える賃上げを期待する」と話しています。企業の業績は、全体的には好調です。抱える現金・預金も321兆円と、一段と積み上がっています。大和証券グループが、3%以上の賃金引き上げに踏み切る考えを示すなど、一部、期待できる動きはあります。ぜひ、業績のよい企業は思い切った賃上げをしてほしいと思います。

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その上で、希望する人がITなどの再教育を受けて、より高い賃金の仕事に就くことができる。そういう機会を、社会全体で充実させていくことも、重要になってきます。「期待」を期待だけで終わらせず、実現していく。そういう一年になってほしいと思いますし、そういう一年にしていかなければいけないと思います。

(今井 純子 解説委員)

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