NHK 解説委員室

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誤えん・窒息に注意!予防・応急手当は?

矢島 ゆき子  解説委員

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今年も残すところ、あと4日。そろそろ新年を迎える準備を始めているご家庭も多いのではないでしょうか?
この時期、誤えん・窒息事故に注意が必要です。

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2006~2016年の、食べ物・食品の誤えんでの窒息死したケース5万2366例を解析した研究があります。誤えんというのは、食べ物をのみ込んだときに間違って空気の通り道の方にいってしまうことです。研究によると全国で1日平均13例の窒息死が発生しているそうです。そして、1年の中では、1月1日が一番多く、平均71例、次いで1月2日が55例、そして、1月3日が45例と、かなり多いことがわかりました。また食べ物の誤えんで窒息死したケースの73%は75歳以上の高齢者だったことがわかりました。高齢者は誤えん・窒息に注意が必要です。

◆窒息原因の食べ物とは?原因はお餅?  

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お正月に多い窒息事故・窒息死。餅が原因になることも多いと言われています。
窒息の原因になりやすい食べ物には、他にどのようなものがあるのでしょうか?
日本全国30の医療機関によるMOCHIプロジェクト「窒息に関する多施設共同観察研究」によると、高齢者で窒息の原因となった食べ物としては、多い順に肉(ステーキなどのかたまり肉)、パン、餅、米、寿司、ゼリー、野菜、果物、ジャガイモ、魚(マグロのような筋ばった魚)、麺などで、かなりいろいろな食べものが原因になることがわかりました。特に上位3つ、肉・パン・餅が多かったことがわかります。

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また例えば、おせち料理で見てみると、お雑煮の餅以外にも、とり肉、かまぼこ、栗きんとんの栗、煮しめで使われる野菜など、窒息の原因につながりやすいものがいろいろあります。黒豆のようにツルっとしたものもつまります。また、なますなどの酢の物は、酸味が強いとむせて、誤えんして窒息につながることもあります。

◆高齢者はなぜ誤えん・窒息?

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では、どうして、高齢者に、誤えん・窒息が多いのでしょうか?
理由としては、次のことが考えられます
・歯を失うなどの口のトラブルで、食べ物を細かくかみ砕くことができずに、そのままのみ込んでしまって、つまる。
・年をとったり、服用している薬の副作用で、唾液が十分に出なくなり、のみ込めない。(食べ物は、よくかんで唾液と混ざることでのみ込みやすくなるので。)
・食べ物をのみ込む力が弱くなる。
・空気の通りみちに食べ物がつまりそうになったときに、せきをして出そうとするが、出せない。

◆誤えん・窒息を予防するためには

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おせち料理に限らず、普段の食事の中でも誤えん・窒息の原因になりそうなものがたくさんありそうです。もちろん窒息の原因になりやすいものを避ければリスクは減りますが、食べる楽しみは、とても大切です。ですから調理・食べ方の工夫をすることでリスクを減らし、のどにつまらせにくいようにすることが重要になります。
ポイントを、女子栄養大学短期大学部教授松田早苗さんに教えていただきました。松田さんご自身、87歳と90歳のご両親と一緒に暮らし、普段から誤えん・窒息しないように気をつけているそうです。特にお正月に食べるお雑煮の餅は久しぶりという人も多いはずなので、いくつか注意してほしいことがあるということでした。
・まず、餅は、一口サイズは無理なく食べられる量、小さめに切って煮たり・焼いたり調理。
・食べるときの姿勢。いすに深く腰掛けて、あごを軽く引く。すると食べ物が通りやすくのみ込みやすくなる。
・お雑煮の餅を食べるときは、まず水分・汁物などでのどを潤す。
・ゆっくりとよくかんで、のみ込む。よくかまないうちにお茶などで流し込むのは危険。
・餅は冷めると、くっつきやすくので冷めないうちに食べる。
・口の中に食べ物が入っている状態では話さないようにする。食べ物が空気の通り道・気管のほうに入るかもしれないから。
これらは、窒息の原因になる食べ物を食べるときにも注意したいポイントです。

◆窒息のサインを見逃さない!

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そして、高齢者と一緒に食事をするときは、周囲の人が、窒息のサインを見逃さないことも大切です。食べ物がのどにつまって呼吸が苦しいと、両手でのどをつかむ「チョークサイン」をすることが多いのですが、高齢者の場合、急にうなだれる、顔色が急に真っ青になる、声が出ないというだけのこともあるのです。

<呼びかけをして、声が出るか出ないか確認>
そして、おかしいと思ったら、まず呼びかけをして声が出るかどうかを確認しましょう。声が出るか出ないかで対応が変わります。

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<声が出る場合>
呼びかけて、声が出る場合は、完全には窒息していないので、せきをさせ、つまった食べ物を出させます。前かがみにして背中を下から上にさすったり、軽くたたいて、せきをさせます。ただし水などは飲ませない。つまったものが奥にいくとよくないからです。そして、違和感があったりしたら、まだ残っているかもしれないので、速やかに医療機関を受診しましょう。
<声が出ない場合>
声が出ない場合は、窒息している可能性があるので、まず119番通報をして救急車を呼びます。救急車を呼ぶのを躊躇する必要はありません。
<つまったものをとりのぞく>
そして、救急隊員が到着するまでの間、つまったものを取り除きます。
つまったものが見えている場合は、それを手でとりましょう。

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<1. 背中をたたく=背部叩打(こうだ)法>
つまったものが見えない、見えてもとれない場合は、ともかくまずは背中をたたきます。
・イラストのように、あごをささえてうつむかせ、背中の左右の肩甲骨の真ん中あたりを、手のひらの付け根あたりで力強く何度もたたきます。
・顔を下の方を向けてもいいそうです。
<2. 腹部を圧迫=腹部突き上げ法>
背中をたたいてもダメな場合、後ろからかかえるように、おへその上・みぞおちより下部分に握り拳をあてて、もう片方の手をそえて、みぞおちにむかってぐっと突き上げるように腹部を圧迫します。
ただし、1歳未満の小さな子ども・妊婦には腹部を圧迫するこの方法はしないでください。
<3.心臓マッサージ=胸骨圧迫>
ぐったりして呼びかけに反応がなくなった場合は、心臓マッサージをして、胸骨を圧迫します。手をかさね、その付け根で、胸の真ん中・胸骨の下の部分をしっかり押し続けます。これでつまったものがとれることもあるそうです。

◆周囲の応急手当が大切

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窒息しているかもしれないときは、周囲の応急手当が欠かせません。MOCHIプロジェクトの調査では、のどにつまったときに、救急車を呼ぶ以外、応急手当など何もしなかったケースが半分近く(43%)あったそうです。周囲の人の応急手当を実行したのは57%だけだったのです。2020年の総務省のデータでは、救急車の到着は、全国平均で8.7分と言われています。MOCHIプロジェクトで窒息について研究している日本医科大学高度救命救急センター病院講師・五十嵐豊さんによると、「つまってから6分以上経過すると、たとえ、命が助かっても障害が残る場合もあり、食べ物がつまった場合は、周囲の人が速やかに対処することが重要」ということです。

食べることは楽しいこと。楽しく食事ができるように、ふだんから誤えん・窒息を予防し、万が一、何かあった場合は、大切な命を守るためにも、是非、ご紹介した応急手当をしていただけたらと思います。

(矢島 ゆき子解説委員)

◆子どもの食品による窒息についてはこちら
「食品による窒息 子どもの安全を守るには」(みみより!くらし解説)

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