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コロナで"分散参拝"定着? 初詣

名越 章浩  解説委員

年末となり、そろそろ初詣をどうするか、考えている方もいらっしゃると思います。
「コロナで“分散参拝”定着? 初詣」をテーマに解説します。
(名越章浩 解説委員)

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【“分散参拝”呼びかけ】
1年前は、新型コロナの感染が、年末から年始にかけて爆発的に拡大したこともあって、正月三が日に集中しないよう、日をずらした参拝「分散参拝」が呼びかけられました。
今回はどうなのでしょうか。
この分散参拝の呼びかけを新年も続けるというお寺や神社が全国的に目立ちます。

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例えば、
▼長野県の諏訪大社は、三が日と、その次の三連休を避けて訪れるよう参拝者に呼びかけていて、絵馬や破魔矢などの正月の縁起物も、期限を設けず入手できるようにするということです。
▼福岡県の太宰府天満宮も、分散化を図るため、絵馬などの縁起物は3月末まで用意するということです。

【“12月1日から初詣”も】
この初詣の時期については、特に全国的な決まりがあるというものがありません。
それぞれの神社仏閣が、参拝者の数や、地域の事情などによって個別に設定して呼び掛けています。
ですから、早いケースだと、12月1日から始まっているところもあります。
例えば、例年、正月三が日に200万人以上が初詣に訪れる大阪の住吉大社は、12月1日から初詣の参拝者を受け入れています。来年3月末までを初詣の期間にするそうです。
また、「えべっさん」の愛称で親しまれている兵庫県の西宮神社は、12月1日から来年2月末までの期間を「大福初詣」(だいふくはつもうで)と称して、分散して参拝してほしいと呼びかけています。
どちらの神社も「ご利益は変わりません」と説明しています。
コロナへの慎重な対応が求められる時代なので、これも新常識の1つになっていくのかもしれません。
ちなみに西宮神社は、その年の「福男」を目指して競争する「福男選び」が毎年、1月10日の朝の恒例ですが、新型コロナ対策のため新年についても、2年連続での中止が決まっています。

【“分散参拝”見送るところも】
一方で、例年、正月三が日におよそ300万人が初詣に訪れる千葉県の成田山新勝寺は、1年前は分散参拝を呼びかけましたが、今回は分散参拝の呼び掛けを見送る方針です。
密を避ける感染対策が定着し、ワクチン接種も進んでいることなどが理由だそうです。
これには賛成する声がある一方で、「まだ警戒を緩めるのは早いのではないか」と懸念する声があるのも確かです。
まさに、いま、新型コロナとどう向き合いながら日常を取り戻していくのか、それぞれの判断と工夫が求められています。

【明治神宮は?】
では、毎年参拝者が多い明治神宮はどうでしょうか。
明治神宮は分散参拝を呼び掛けていますが、いつまでという期間については決めていないということです。
ちなみに、明治神宮は、1年前は、大みそかから元日にかけての終夜参拝を中止しましたが、今回は、12月23日の時点では終夜参拝を実施する方針です。
ただ、飲食できる場所をなくすなど、境内で人が滞留しないような対策をとるということでした。
オミクロン株の感染拡大が心配される中、急な感染拡大も考慮し、その都度判断することもありそうです。

【初詣のはじまりは?】
では、もともと初詣は、いつ参る習慣だったのでしょうか。
実は、初詣の歴史を振り返ると、もともと分散しての参拝が普通だったのです。
つまり、新型コロナの影響で、もとの姿に戻った格好になっているのです。

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初詣の歴史に詳しい、国立歴史民俗博物館の新谷尚紀 名誉教授によりますと、そもそも日本では、正月は家にいて新年の運気をくださる年神様を待っていた習慣が基本だったそうです。

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それが江戸時代の後半には、江戸の庶民が、良い運気のある方角の寺や神社に、自分の方からお参りするようになりました。

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そして次第に手っ取り早く家の近くの寺や神社へ、とにかく早く、ご利益をもらった方が良い運気がもらえるという考え方になり、明治時代には、大量に参拝者を乗せられる鉄道の普及もこれを後押しして、今のような初詣の形になったということです。
ただ明治の中頃までは、七草の頃まで、あるいは小正月、つまり1月15日までにお参りする習慣で、必ずしも正月三が日に参るというものではなかったのです。

では、なぜ正月三が日に集中するようになったのでしょうか。

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新谷 名誉教授は、「日本の近代化に伴う都市の発展が背景にある」と言います。
「会社に勤める人が増えたことで、のんびり休んでいられなくなり、仕事始めの前に参拝を済ませるようになった」ということです。
初詣は、時代と共に変化してきた習慣なのです。
ウィズコロナ時代にあった初詣へと変化していくのは、歴史のうえではむしろ当然の流れといえるのかもしれません。

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新谷名誉教授は、「そもそも稲作を大切にしてきた日本人にとって、新年を迎えるということは、自然の恵みに感謝し、次の年も平和で豊かな年であることを祈る機会」と、初詣の意義について語っていました。

【求められる感染対策】
とはいえ、初詣に大勢集まると、その分、感染のリスクは高まるので注意は必要です。

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神社やお寺の側は、手を清める際のひしゃくを撤去したり、お札やお守りの授与所にアクリル板を設置したりするなどの対策をすでにとっています。また、家内安全や商売繁盛などの希望に合わせて事前に祈とうしたお札を郵送するところもあります。

一方、参拝する私たちも気を付けたいことがあります。
マスクの着用、境内で大声での会話や飲食を控えるなど、基本の徹底です。
また、境内の中を一方通行にするなど、各神社仏閣でのルールがあるので、参拝する場合はそれに従うようにしましょう。
そして参拝者の多いところでは、混雑状況を確認できるようにライブカメラの映像がホームページなどで公開される予定です。初詣に行くかどうか、判断材料の1つになると思います。
新型コロナウイルス対策をしっかりとったうえで、上手に日常生活を取り戻すための行動を心がけることが私たち1人1人に求められています。

(名越 章浩 解説委員)

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