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どうつきあう?『代替肉』

今井 純子  解説委員

肉や魚を使わず、大豆など植物由来の原料でつくった、「代替肉」が身近なところに、広がっています。今井解説委員。

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【最近、代替肉の話題を耳にすることが多いですね】
私もニュースで見て、近所のスーパーなどを探してみたところ・・
▼ ひき肉、ナゲット、ハム、カルビ肉、肉まん、カレーなど・・・素材系から、加工食品、レトルト、冷凍食品と様々な商品がありました。魚の代替肉もありました。精進料理の「もどき料理」も、要するには代替肉ですが、もっと現代風の商品ですよね。

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▼ このほか、外食の店で、ハンバーガーや、担々麺、さらには(期間限定で終わっていますが)ウニのドリアの具材として提供されるケースも広がっています。こちらはウニ、そして、肉みそが代替肉です。デパートで販売されているおせちにも、代替肉を使った商品が登場しています。

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【牛肉風とか鶏肉風とか、いろいろありますが・・肉ではないのですね】
いずれも、大豆やこんにゃくなど、植物由来の原料からつくられています。
代表的なのが、大豆から作る代替肉です。もともと多くは、
▼ 大豆から油をしぼり、その脱脂大豆を、高温・高圧で加工。様々な形の粒状の大豆たんぱくをつくり・・。それをもとに、様々な製品がつくられています。
▼ そして、ここ1~2年で、独自の技術を持ったベンチャー企業や食品大手が次々参入。技術開発が進んだ結果、大豆特有の青くささがなくなったり、味や食感が本物の肉に近づいたりして「おいしくなった」という声が増え、売り場のすそ野も広がっています。

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【なぜ、それほど多くの企業が注目しているのですか?】
主に2点あります。
1つ目は、将来、肉や魚などのたんぱく源が足りなくなるのではないかという懸念です。日本では人口は減少していますが、世界では、2050年には、ほぼ100億人と、今後30年で20億人増えるとみられています。その結果、2050年には、世界のたんぱく質の需要は、3.4億トン。一方、供給量は、今のままでは、3.2億トンと、0,2億トン分のたんぱく質が足りなくなるという推計もでています。肉の取り合いで、価格が高騰する懸念もあるというのです。

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【牛や豚などの飼育を増やせばいいのではないですか?】
ところが、畜産は、地球温暖化への影響が指摘されていて、増やすことが難しい。それが多くの企業が代替肉に取り組む背景の2点目です。
というのも、
▼ 牛や豚、鶏などを育てるためは、大量のエサが必要です。それを生産する時に加え、エサを運ぶための燃料、ふんの処理、さらには、牛のげっぷなどから、大量の温室効果ガスがでます。
▼ 大豆を生産するために排出される温室効果ガスの量を1とすると、同じ重量の豚肉を生産するのに20.8倍。牛肉は85.6倍を排出するという試算もあります

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【だから、増やせないのですね】
でも、たんぱく源は必要です。このため、世界的に代替肉が注目され、需要が増えているのです。世界の代替肉メーカーの年間の出荷額は、2020年のおよそ2570億円から、2030年にはおよそ1兆8700億円と、7点3倍に拡大するという試算もあります。
日本の食品メーカーや小売事業者にとっても、代替肉を扱うことで消費者や投資家に環境問題に取り組む企業というアピールができ、投資資金を調達しやすくなる。そういう見方もあります。

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【企業が、代替肉に注目する理由はわかりましたが、日本では、消費者のニーズはあるのでしょうか?】
「関心」は高まっているということです。メーカーやベジタリアン関係のNPOの話では、
▼ 世界的には、宗教上の理由、環境問題への関心、動物愛護の意識などから、肉や魚、卵、乳製品など動物由来の食品を一切食べない「ビーガン」の人や、肉や魚だけを食べない「ベジタリアン」の人。また、そうした運動を繰り広げている人が多くいる一方、
▼ 日本では、環境問題への関心に加えて、健康志向の高い人の中から、普通の肉も食べるけれど、「代替肉も時折食べる」という人が徐々に出てきているというのです。「フレキシブル」な「ベジタリアン」を意味する「フレキシタリアン」という造語で呼んだりもするそうです。

【健康志向の高い消費者が関心を持つということは・・代替肉は、健康にいいのですか?】
肉の味に近づけるために、添加物や塩分を多く使っているものもある、という指摘もありますが、
▼ 例えば、こちら100グラムあたりに含まれる栄養素をみると、大豆由来の肉は、たんぱく質は、牛や豚とほぼ同じ程度含まれている一方、脂質は低く、カロリーも低いとされています。製造方法や味付けによって、違いはありますが、一般的に、たんぱく質は高いまま、脂質やカロリーが低いと、訴えている商品が多く見られます。このため、
▼ 肉好きの家族に、時折、肉の代わりに、食卓に出している。肉ではないことは内緒にしているけれど、おいしいと食べてくれている。メーカーにはこうした声も寄せられているということです。

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ただ、国内では、代替肉を販売している店は、広がっているとは言っても、まだ限られています。また、日本では、もともと豆腐や納豆など、肉以外のたんぱく源も多く、平均的に欧米ほど肉を食べる習慣があるわけでもありません。今は、一部を除いて多くは、一度食べてみたいという人が、とりあえず食べてみている状況ではないか。それを、日本でも、代替肉を、当たり前の選択肢のひとつとして、食生活の中に定着させていくためには、まだ課題があるというのがメーカーの話です。その課題というのが・・

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【味と価格ですか?】
はい。味については、さきほど「肉でないことに気づかないくらいおいしい」という声を紹介しましたが、商品によっては、「ちょっと・・」というものや「代替肉としておいしいけれど、肉とは違う」という声があるのも事実です。一方、価格は、普通の肉の製品とほぼ同じというものもありますが、少し高めのものがまだ多い。多くの消費者に身近な食材として、食べてもらうには、より肉の味・食感に近づけるとともに、より安くしていく必要があるというのです。

【そうなると、より身近な存在になってきますね】
そうですね。ただ、ひとつ注意が必要なのは、植物由来と書いてあっても、卵や、動物由来の添加物が入っているケースがあるということです。消費者庁は、今年の夏、消費者に誤解を与えないよう、例えば、動物由来の原料が使われている場合、
・ 「原材料は植物性(食品添加物は除く)」
・ 「代替肉の割合は90%」
というように適切に表示をするよう、企業に求めました。特に「アレルギーがある」方などは、パッケージの裏などで、確かめていただきたいと思います。

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その上で、この代替肉。環境への影響や将来の食料問題を考えると、一時的なブームということではなさそうです。今後、私たちも、「肉」を食べようという時に、当然の選択肢のひとつとして、代替肉とどっちにしようか考える。そのような時代が、結構近くまできているのではないか。そのような気がしています。

(今井 純子 解説委員)

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