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コロナ禍でも がんの早期発見・予防を!

矢島 ゆき子  解説委員

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新型コロナウイルスへの感染をおそれた受診控えで、がんの診断件数が減ったり、医療がかなりひっ迫した時期に、がんの手術が延期されるなど、実は、新型コロナは、がんの診療にも影響してきました。日本では、生涯に2人に1人ががんにかかり、3人に1人は亡くなっています。この状況は、コロナ禍でも変わっていないので、がんの対策を忘れてはいけません。コロナ禍の今、私たちは、がんとどう向き合うことが大切なのでしょうか?

◆コロナ禍での生活習慣の変化

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コロナ禍での生活習慣の変化について、40~60代の男女3000人を対象に調べた調査結果があります。コロナ禍での生活習慣の変化を6割の人が実感し、「できなくなった生活習慣」として、適度な運動、ストレスをためない、食べ過ぎない、飲み過ぎないなどがあげられています。
このような生活習慣の変化は、実は、がんのリスクを高めているかもしれません。
この調査では、3人に1人が、体重が増えていました。その内訳をみてみると、半数ほど(44.7%)が3Kg以上増加していて、5Kg 以上増えた人も15%ほどいました。体重が増え、肥満になるとがんのリスクが高まります。
また飲酒について詳しくみると、「飲むのをやめた」(3.8%)「減った」(25.3%)という人がいる一方、「増えた」(11.6%)という人もいて、二極化していました。増えた人の1日の飲酒量は平均2.8合。これは、がんのリスクが高くなる飲酒量です。

◆検診でがんを見つける・・・コロナ禍の影響は?

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2020年の「がん検診」(自治体のがん検診、人間ドックなど)で見つかったがんの件数が発表されました。
赤の2020年に注目してください。5月が一番低くなっています。当初、新型コロナウイルスがどういうものかわからなかったということもあり、一般の人も医療関係者もかなり不安があったと思いますが、2020年4月7日に緊急事態宣言がだされ、その後、「がん検診」は一時中断・延期、胃・大腸などの内視鏡検査も中止されています。また、2020年の1年間で新規に癌が見つかった件数は2019年に比べ約4万7000件減少したこともわかりました。もしかしたら、がんなのに見つかっていない人がいる可能性があるかもしれません。

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がんは細かく分類すると1000種類以上あるといわれてますが、市町村などの自治体で行われている「がん検診」の場合、人間ドックと違い、肺がん・大腸がん・胃がん・子宮頸(けい)がん・乳がんという、日本人のがん患者数の半分以上を占める5つのがんが基本になります。
がん検診に詳しい国立がん研究センターの中山さんに2021年のがん検診の状況を伺ったところ、「集団検診をしている所では、コロナ禍で“密”にならないために受診者を制限している。また受診控えもあるかもしれず、検診を受けている人の数は完全に戻っていないのかもしれない。早期発見するためにも、去年、受診しなかった人は検診を受けてほしい」とのことでした。

◆がんの10年相対生存率

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今年、2008年に診断された人のがんの10年相対生存率が報告されました。その一部をご紹介します。例えば、早期のステージ1の胃がんでは90.9%が、診断から10年後も生存していたということです。ただステージ2・3と、がんが進行していきますが、一番進行したステージ4で発見された場合、6.9%とかなり下がっていることがわかります。
担当した国立がん研究センター奥山さんにお話を伺ったところ、「今は、治療技術が進み、さらに治療成績がよくなっている可能性がある。完治する場合もあるし、そうでなくても、がんと共生して長い間、生活できるようになりつつある。しかし、がん検診対象のがんを中心に、早期発見し、治療できた方がよいのは明らか」とのことでした。

◆がんを発見するには

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がん検診はどのぐらいの頻度で受けるといいのでしょうか?自治体で行われている「がん検診」については、国の指針で、肺がん・大腸がんは年1回、子宮頸(けい)がん・胃がん・乳がんは2年に1回の検診が推奨されています。がんは、細胞ががん化し、そこから1cmの大きさになるまでに10年から30年かかります。その後、1cmから2cmになるのには、がんの種類にもよりますが、1年から5年程度で、だいたい2cmを超えると、がんの転移のリスクが上がります。がんがまだ小さい時期に検診を受け、早期発見できれば、死亡率を下げることができるかもしれないのです。

ただ、「がん検診」を受けているから大丈夫と過信してはいけません。実は、がん検診で見つかるのが14.8%に対し、検診以外の「日常診療」では85.2%も見つかっているのです。自覚症状がきっかけで受診して、がんが見つかることがあります。自覚症状というのは、例えば、胃がんだと腹痛、大腸がんの血便、肺がんの血たん、乳がんのしこり、腎臓がん・膀胱(ぼうこう)がんの血尿、消化器がんでの体重減少などです。あるいは、持病の経過観察中、例えば慢性胃炎などの持病で、病院で定期的に胃カメラを受けているときに、がんが見つかることもあるのです。

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静岡県立静岡がんセンターの山口さんにお話を伺ったところ、「がん検診を受ければ必ずがんが見つかると思っている人はたくさんいるが、検診の対象となっていないがんは、絶対、発見できない。そういう意味でも、自覚症状に気をつけ、日常の診療で相談できる医師をもつことが大切。さらにがん予防に努めることが大切」ということです。

◆がんを予防する!

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では、がんの予防はどうしたらいいのでしょうか?
「5つの健康習慣」を守ることで、日本人のがんのリスクが半分になることがわかっています。これは日本人に多い心臓病・糖尿病などとも共通しているそうです。具体的には、禁煙、節酒、食生活、身体活動、適正体重の維持。喫煙はがん全体のリスクを1.5倍あげます。男性の場合、日本酒換算で2合以上の飲酒でがん全体のリスクが1.4倍程度、3合以上で1.6倍程度とリスクが高くなります。そして、食生活は、日本人の場合、胃がんにならないための減塩。さらには、野菜・果物をとることなど大切です。また身体活動は多いほどがんのリスクは低くなるそうで、歩くことなども含めて1日60分体を動かす(高齢者は40分)ことが大切です。
 
コロナ禍で新型コロナに感染するのはこわいから病院などに行くのは控えようと思うかもしれませんが、がんの予防・早期発見も大切です。病院などでは感染対策がとられていますので、がん検診を受け、何か変だという自覚症状があったら受診控えしない、病院を受診することが大切です。そして、コロナ禍で生活習慣が変わった方もいるかと思いますが、がんを予防するためにも、是非、今の生活を改めて見直していただけたらと思います。

(矢島 ゆき子 解説委員)

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