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コロナ禍 気付かぬうちに・・ 食生活の偏りに注意!

牛田 正史  解説委員

今回は、新型コロナの感染拡大で、私たちの「食生活」が知らず知らずのうちに偏ってきているのではないか、という話を、牛田委員がお伝えします。

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コロナ禍の食生活でいうと、外食が減って、家で食べることは増えたので、良くなったのかなとも思えるのですが、実はこんな調査結果があるんです。

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食事は、ごはんやパンなどの「主食」、肉や魚などの「主菜」、そして野菜やきのこなどの「副菜」、この3つを全て組み合わせて、「1日2回以上」食べることが、栄養のバランスを考えた上で望ましいとされています。
ところが新型コロナの感染拡大以降、この組み合わせが減っています。
国の調査では、2017年度から2019年度までは、「主食」「主菜」「副菜」3つを、ほぼ毎日2回以上、組み合わせて食べている人の割合が、50%台後半を占めていました。
それが、新型コロナの感染が拡大した昨年度は、36%と、いっきに減りました。

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これはなぜなのでしょうか。
専門家で女子栄養大学の香川靖雄副学長に聞きますと、「買い物の回数が減ったこと」、それに「“複合料理”が増えた」ことを主な要因に挙げていました。

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まず、買い物に行く回数が減ったこと。
これは買う材料の種類が減りますので、料理の品数も少なくなってしまうといいます。
そして複合料理、これはチャーハンや焼きそばなど、主食や主菜、副菜を一緒に調理したものなんですが、感染拡大前の去年の1月から、拡大後の4月までに、焼きそば、チャーハンなどの複合料理の消費が伸びています。
これは、家で料理を作る回数が増えて、夜はしっかり作るけど、お昼は出来るだけ料理の品数を減らしたい、もしくは簡単に作りたいという人が増えているからと見られています。

香川さんによりますと「主菜」や「副菜」の材料がそれぞれ十分に入っていればよいのですが、どうしても、きちんと料理を分ける場合に比べて、栄養素が不足しがちになるので注意が必要だということです。また、塩分も多くなりがちになるそうです。

このほか、買い物の回数が減ったこともあり、調理済みの「冷凍食品」や「レトルト食品」も増えているそうです。こちらについても栄養面で注意が必要だということです。

最近はコロナの感染数も低く抑えられていて、これから徐々に食生活は戻っていくのでしょうか。
それについて、香川さんは「コロナ禍で、なるべく料理を簡単にしたい、あるいは便利な調理済み食品もよく食べるようなったという人もいると思いますが、それがまた昔のように、主菜、副菜を作ってというように、どれだけ戻れるかは心配な面があります」と話していました。
食生活が変わってしまったという人は、結構、意識して、元に戻していくことが大事かもしれません。

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ではどう気を付けるのか。まず1つは買い物する時だと思います。
平成30年の国民健康・栄養調査で、食品を買うときに何を重視するか聞いたところ、最も多かったのは「おいしさ」でした。女性では7割を超えています。
そして価格が2番目。一方の栄養は54.5%と6番目でした。
男性にすると、栄養はわずか30.9%です。
私もよく買い物に行くのですが、確かに言われてみると、栄養はあまり重視していなかった気がします。まず買い物で料理のメニューが決まることも多いので、食材を買う段階から、栄養を考えるのが第一歩だと思います。

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さらに、栄養バランスをチェックするアプリやソフトを使ってみるのも良いかもしれません。
例えば東京都健康長寿医療センター研究所が、去年から無料で公開しているLINEのチャットボット「食べポン」です。
画面の下の「さかな」や「やさい」など10種類のうち、食べたものをタップすると、1つ1点が入ります。これは10点満点なのですが、1日に7点以上取ることを目指します。

魚とか肉とか、牛乳とか、選ぶ項目がわかりやすく、出来るだけ簡単にチェックできるというのがコンセプトだそうです。

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研究所によりますと近く、こちらの画面のように、友達や家族同士でグループを作って、チームで合計点数を競い合うことも出来るようになるそうです。
こうしたシステムやアプリは他にも色々あるので、是非、試してみてください。

ということで、ここまでは「栄養バランス」についてお伝えしてきたのですが、コロナ禍での食事で、もう一つ、考えてほしい重要なポイントがあります。
こんな言葉を皆さん、ご存じでしょうか?
「卑弥呼の歯がいーぜ」。

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卑弥呼のいた弥生時代は食べる物が硬かったので、噛む回数が多かったとも言われているのですが、重要なのは、その言葉の意味よりも、それぞれの文字にあります。
ひらがなにして見てください。まずは、卑弥呼の「ひ」。これは“肥満の予防”のひ。
「み」は“味覚の発達”、「こ」は“言葉の発音がはっきりする”など、それぞれの文字が、よく噛んで食べることの効果を表しています。
この中には「脳の活性化」や「がん予防」もあります。
よく噛むことで脳の血流が良くなり、脳が活性化する。
また、がん予防は、唾液が良く出るので、食品の中にある発がん物質の働きを抑える効果が期待されているのです。
このように「よく噛む」というのは、実に多くの効果があることを示した言葉です。

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ところが、コロナ禍で、よく噛んで食べる人の割合が減っているという調査があります。
食事は「ゆっくりよく噛んで食べている」という人は、2年前は20.2%いたのですが、コロナの感染が拡大した昨年度は、8.7%に減りました。
どちらかと言えばよく噛んで食べる、という人を含めた合計も、昨年度は47%に減りました。
レトルトなどのやわらかい食事が増えたこと、それに料理の品数が減ったことなどが要因と見られています。
高齢者が利用する介護施設の関係者にも話を聞いたんですが、コロナで噛む力や飲み込む力が弱まったという高齢者が増えているという実感もあるそうです。

食生活は自分で注意しないと、なかなか変化に気づきづらいと思います。
頭の片隅でも良いので、栄養のバランスや噛む回数を意識して、買い物をしたり、食事を楽しんでもらいたいと思います。

(牛田 正史 解説委員)

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