国内の業者2社が販売したコードレス電気掃除機用の純正品ではないリチウムイオンバッテリーが、自然に発火する危険があることが判明。業者が倒産し補償を受けられない購入者もいて、経済産業省が緊急に注意を呼び掛け。こうしたケースは中古の製品でも多い。水野倫之解説委員の解説。
リチウムイオンバッテリーは、これまでも充電中などに事故が多く発生していたが、
何もしていない保管中に自然に発火するケースは初めてとみられ、
経済産業省は時限爆弾のようなもので危険性が高いという。
今回のバッテリーはダイソン社製のコードレス電気掃除機に使われる純正品ではないバッテリーで、国内の2社が中国から輸入してインターネットで販売した製品。
▽「有限会社すみとも商店」のバッテリーは「OrangeLineDC60」と表示され、
9,850台が販売。
▽「ロワ・ジャパン有限会社」のものは「ROWA・JAPAN DC62」と表示され、
5,286台が販売。
経済産業省によると、これら15,000台余りのうち、
今年9月までに9件、発火事故。
8月には住宅が全焼してしまう事態も。
事故を受けて先月までにリコールとなり、一部で製品の回収や補償が始まっていたが、
その後の調査で、うち8件とほとんどが、保管中に出火していたことがわかり、
危険性が高いと判断。
経済産業省は回収中にも事故が起きるおそれもあるとして、当面回収はせず、
燃え広がらないよう鍋のような金属製の容器に入れて、
購入者の手元で保管するよう緊急の呼びかけを行っている。
出火の原因は現在製品評価機構が調査中。
ただこうした純正ではないリチウムイオンバッテリーの事故はたびたび起きている。
まず安全面に問題があったケースで、
過去にはノートパソコンを充電中にバッテリーから出火する事故。
機構が調べたところ、バッテリーは純正品ではなく、
製造時に混入した異物でショートして発火したとみられることがわかった。
事故の再現映像みると充電中に煙が出始める。バッテリーには可燃性の液体が使われているため、ショートすると煙が出始め、その後勢いを増し、最終的に出火。
これ以外にも、そもそも安全装置がついていないケースも確認。
過去に家庭用の電動工具の純正ではないバッテリーで事故が相次いだため、
機構がネット販売されている非純正のバッテリー12種類を買って調べたところ、
そのすべてで義務付けられている、充電のし過ぎを防止する安全装置が
取り付けられていなかった。
もちろん非純正品すべてに問題があるというわけではないが、
掃除機のメーカーによると、
純正品で発火事故はこれまで確認されていないということ。
さらに、非純正品の場合、補償が受けられないという問題も。
実は今回の掃除機用のバッテリーを販売した2社のうち、
すみとも商店が、先月、倒産した。経産省によりますと3,000台あまりがリコールへの対応がなされておらず、
今後業者による回収対応や返金などの補償を受けることは難しいだろうとのこと。
そこで経済産業省は回収や廃棄について何らかの対応を検討したいと。
こうした純正ではない製品は、公平な競争確保のためとして販売自体は規制されていない。ただ経産省は、資本力の弱い業者が扱っている場合もあり、
事故のリスクや問題が起きたときに補償が受けられなくなるリスクを理解した上で
購入してほしいと話す。
ここまで純正ではない製品を見てきたが、経産省は、最近人気の中古の製品も、
同じように業者の補償が受けられないケースや事故も多く、注意が必要と言う。
ネットオークションやフリマサイトの普及で、中古製品の売買は活発になっているが、
経年劣化のほか、リコール対象だったり改造された製品が
混じっているケースもあり、事故が多く発生している。
車やバイクなどを除いて、消費者が一般的に使う中古製品による事故は、
機構によると過去5年間に321件発生。
電気製品が多いが、中でもリコール対象品の事故が目立つ。
去年愛媛県で、中古のコーヒーメーカーから出火する事故があったほか、
おととし静岡県で中古の電子レンジの出火事故があったが
いずれもリコール対象製品。
製品を新品で買えば多くの場合、はがきやネット経由のユーザー登録で、
リコールとなっても購入者に連絡がいき、交換や返金などの補償が受けられる。
これに対して中古品はユーザー登録されることが少なく、連絡がいかず、
補償も受けられないケースが多いという。
経済産業省は、中古製品を買う場合は、リコール対象でないか確認するよう呼びかけ。
対象かどうかは経済産業省や消費者庁のホームページで、
製品の型番などを入力し検索。対象だった場合は使用を中止しメーカーなどに連絡を。
ほかにはガス機器の中古製品でも事故が多く、
不正改造された中古のガスコンロの事故が報告。
ガスコンロは、てんぷら油の火災が相次いだことから2008年以降、
温度を検知するセンサーの設置が義務付けられ、
250度以上で火力が弱まる仕組み。
ところが中華なべなどを使う時に強い火力で料理できるよう、
センサーを不正に解除した製品が、中古品として出回っていることも確認。
その再現映像見ると、改造されたセンサーは鍋の底についておらず、
温度が上がったことを検出できず火力は強いまま。
通常品の方は火力弱まる。
改造品は温度が上がり続け、やがて油に火がついてしまう。
でも改造されているかどうか一般の人では見わけは難しい。
このため経産省では中古のガス機器は
使用開始前に、メーカーやガス会社などに連絡して点検を受けるよう呼びかけ。
純正でない製品や中古の製品には、新品の製品にはないリスクもあるので注意点を確認し事故を未然に防いでもらえれば。
(水野 倫之 解説委員)
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