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広がる『定額サービス』 ただし注意も

今井 純子  解説委員

「定額サービス」が広がっています。どのようなサービスがあるのか。そして、どのような注意点があるのか。今井解説委員。

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【定額サービスとは、どのようなものでしょうか?】
明確な定義はありませんが、例えば、1か月いくら。といった、決まった金額を払えば、モノやサービスを繰り返し利用できるサービスのことです。最近は「サブスクリプションサービス」とも呼ばれ、様々なサービスがでてきています。

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【サブスクと呼んだりもしますね】
そうですね。例えば、
▼ ドラマや映画などの動画を見放題。音楽聴き放題、パソコンなどの不具合について専門家に質問し放題という、サービスがありますね。

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【私も、動画や音楽のサービスは利用しています】
また、
▼ 週に決まった回数、地域の様々な店から好きな料理をテイクアウトできる。というサービスもあります。

他にも、
▼ スタイリストが選んだ洋服を借りて、返却する時に「もう少し明るい色、カジュアルな服がいい」などの意見を伝えると、次はそれを踏まえて、より好みに近い服を届けてくれるサービス。

▼ こちらは「テレワークの集中度を高めたい」という人などに向けたメガネアプリの定額サービスです。特殊なセンサーがついたメガネを買うと、視線の変化やまばたきの状態をはかって、利用者が作業にどのくらい熱中しているか、などを判定しスマホに知らせてくれる。ストレッチなどのメニューも提案してくれる。

このような様々な機能を組み合わせたサービスも、次々でてきています。

【いろいろなサービスがでてきているのですね】
もともと、モノを「所有」するのでなく、「利用したい」という消費者が増えていた。そこに、コロナの感染拡大で、家で過ごす時間が増え、
▼ その「家で過ごす時間を少しでも充実させたい!」ということから、新しいサービスを、割安、気軽に利用できる定額サービスへのニーズが一気に高まった。
▼ 一方、事業者側も、消費者の行動が大きく変わるなか、固定客を増やし、継続的に、一定の売り上げを確保できる。ということから、次々、新しいサービスを打ち出しているのです。
定額サービスの国内の市場規模は、昨年度に、およそ8760億円と、前の年度より、30%近く増加。今年度もさらに15%近く増え、1兆円に近づくという予測もあります。(矢野経済研究所)

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【一気に利用が広がっているのですね】
はい。ただ、サービスが広がるにつれて、トラブルになる例も出てきています。全国の消費生活センターには、今年度に入って、毎月500件程度の相談が寄せられています。統計は今年度からとり始めたので、過去と比較はできませんが、相談現場の感覚では、かなり増えているということです。主に、ネットを通じて、申し込みや解約の手続きをするサービスについての相談が多いということです。

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【どのようなトラブルが起きているのですか?】
▼ 例えば、動画見放題で「まずは一か月無料お試し」という広告を見て、申し込みをした。無料お試しを申し込んだつもりだったのに、いつのまにか月2000円の有料会員になっていて、6か月分の料金を口座から引き落とされていた。この間、利用していないので、おカネを返してほしいという相談。無料お試しの期間に解約をしないと、自動的に有料プランに移行することが、小さく書いてあったのですが、気が付かなかったということなのです。

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▼ また、解約したつもりが、できていなかった。という相談もあります。

【解約できていなかった。どういうことですか?】
例えば、
▼ こうすれば痩せますというダイエットトレーニングの1週間無料体験の広告をみて、アプリをダウンロードした。数日利用して、必要ないと思ったので、アプリを削除した。ところが、アプリを削除するだけでは、解約できない仕組みになっていて、最近になって、8か月分の利用料が口座から引き落されていたことに気づいた。

▼ 動画配信サービスに、「今なら音楽配信サービス付き」と広告されていて登録をした。その後、動画配信サービスを解約したのに、オプションの音楽配信サービスの料金が引き落とされ続けていたことに、最近になって気づいた。というケースもありました。

【解約の方法が、自分が思っていたのと違っていたということですね】
はい。さらに、
▼ 解約しようと思って事業者のホームページを見たけれど、解約の方法がわからない。
▼ どのメールアドレスで登録したのかわからず、解約できない。
▼ IDもパスワードも忘れて、解約ができない。
このような相談もあります。

【自分のせいだと思って、泣き寝入りしてしまう方も多いのではないでしょうか?】
消費者側も、少し注意が必要というケースはあります。ただ、このサービスでトラブルが起きがちになっている背景もある。そう指摘する声もあります。というのも、
▼ 最近、こうしたサービスでは、無料お試しを申し込む時点で、クレジットカード番号の登録が求められる。
▼ そして、お試しの期間がすぎると、自動的に有料サービスに移行し、解約しない限り、自動更新で、定額料金を払い続ける仕組みになっていることが多くあります。
消費者にとっても、まずは無料で試してみて、思ったようなサービスでなかったら、有料になる前に解約できる。という、メリットがある仕組みだとは思います。
ただ、問題なのは、無料期間が過ぎたら自動的に有料サービスに移行するという表示や、解約の方法がわかりにくいケースがあるという点です。

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【それは、問題ではないのですか?】
▼ 無料お試しを強調する一方、自動的に有料プランに移行するという表示が、離れた場所に書いてあるなど、わかりにくい場合、今でも、特定商取引法などの法律で、「誤認を招く表示」として、行政処分の対象になったり、契約の取り消しが認められたりする可能性はあります。
▼ さらに、来年6月までに施行されることになっている改正特定商取引法では、規制が強化され、価格や支払時期、解約方法などについて、よりわかりやすい表示が事業者に義務付けられます。誤認をさせる表示で、消費者が申し込みをした場合、契約を取り消して、おカネを取り戻せることも明記されました。

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それだけに、今後、事業者は、
▼ 消費者が誤解をしない、わかりやすい表示をすること
▼ 問い合わせ先も明確にすること、が求められます。
その上で、消費者が安心してサービスを利用できるよう、
▼ 有料に移行する前。そして、長期間使っていない人には、このまま契約を続けていいのか、メールなどで知らせる仕組みも、検討してほしいと思います。

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【消費者側も、気を付けなければいけない点がありそうですね】
最初は、ひんぱんに使うので割安に思えても、次第に利用しなくなると、結果的に割高になってしまいます。また、多くは、自ら解約しないと、自動更新で料金を払い続けなければいけません。
契約をする前には、
▼ この先、ひんぱんに利用し続けるサービスか、慎重に検討すること。
▼ そして、解約することも考え、申し込みをする前に、解約の方法や条件を確認して、パスワードやIDはきちんと保管しておくこと。さらに、
▼ 利用していないのに料金を払い続けている定額サービスがないか。クレジットカードの明細を毎月確認することも大事です。
その上で、事業者との間で、トラブルになったら、身近な消費生活センターに相談していただきたいと思います。全国共通で188の電話番号から身近な相談窓口につながる仕組みになっています。

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定額サービス自体は、魅力的なサービスもたくさんあります。自分にあったサービスを上手に利用していただきたいと思います。

(今井 純子 解説委員)

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