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だるい・・・これって新型コロナの後遺症!?

矢島 ゆき子  解説委員

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新型コロナウイルスの第5波が収まり、新規感染者はかなり少なくなりました。
新型コロナの感染後におこる後遺症、長引く症状は、感染から数か月後に出ることもあります。
今、後遺症が気になる方が多いかもしれません。

◆新型コロナウイルスの後遺症とは

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10月、WHO(世界保健機関)が後遺症の定義を発表しました。これまで世界共通の定義はありませんでした。具体的には、
・新型コロナの感染で発症してから、または無症状で陽性が確認されてから3か月以内に症状が出て、それが2か月間以上続く
・症状は感染初期から続くこともあれば、回復後に初めて出ることも
・そして症状のために日常生活に支障がある   などです。
後遺症については、まだまだわかっていないことが多く、今後、新たな知見が増えれば修正されるかもしれないとのことです。

◆後遺症 どんな症状がある?

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後遺症にはどのような症状があるのでしょうか?
新型コロナウイルスは肺だけでなく脳・心臓・肝臓・消化管・皮膚など体のあらゆる部分に影響し、症状が出ます。そのため、肺の症状だけにとどまらないのが、新型コロナの後遺症の特徴です。主なものとしては、記憶障害・集中力低下、頭痛、うつ、けん怠感、関節痛・筋肉痛、さらに下痢・腹痛、動悸(き)、息切れ・せき・たん、嗅覚・味覚障害、脱毛などです。後遺症にどういう症状があるかはわかってきましたが、どうしてこれらの症状が長引くのか、さまざまな仮説はありますが、まだ明確なメカニズムはわかっていません。

◆新型コロナウイルスの症状はどのくらい続く?

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では、後遺症といわれる症状はどのくらい続くのでしょうか?
先月発表された、20代から70代の軽症から重症までの457人を対象にした症状についてのアンケート調査では、症状がずっと続くわけではなく、時間がたつうちにおさまる人が大半でした。症状によっては、いつ頃、発症して、どれぐらい長引くかも変わります。例えば、嗅覚障害・味覚障害の場合、診断後に患者の割合が増えますが、その後減少していくのがわかります。脱毛の場合は、診断直後は少なく、時間がたってから増えますが、時間経過とともに減少。記憶障害・うつも、時間の経過とともに徐々にですが、減少しています。特に注目したいのは、赤で示した「けん怠感」です。けん怠感、つまり、だるい症状は、診断直後、半数ほどの患者であったことがわかります。しかし、だんだん減り、1年後はおよそ3%まで減少したのです。多くの患者でけん怠感がおさまったことがわかります。

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調査を行った国立国際医療研究センター総合感染症科の森岡慎一郎さんによると「新型コロナが軽症でも後遺症が長引くことがある。女性は男性より、けん怠感、味覚・嗅覚障害、脱毛が出やすく、味覚障害が長引きやすい」ということがわかったそうです。

◆新型コロナウイルスの後遺症 治療は?

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これらのさまざまな症状がある後遺症。どのような治療があるのでしょうか?
実はまだ、後遺症に対する確立した治療法はほとんどなく、基本的には対症療法、つまり症状に応じた治療になります。
特に注意したいのは、先ほど、グラフもご紹介した、発症直後に半数ほどの人に出ていた「けん怠感」です。放置して慢性化すると対応が難しくなるのでなるべく早い段階からの治療が大切という専門家が何人もいました。

◆新型コロナウイルスによる だるさ・けん怠感の治療

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ひどいけん怠感があった40代の患者さんのケースをみてみます。出張中に発熱。感染が確認され、酸素投与は必要ない中等症で、10日間入院。けん怠感、せき・たん、味覚障害が続いたそうです。とくに一番つらいのが、けん怠感。体を動かした翌日、だるくて車の中でうずくまって何時間も動けなくなったそうです。けん怠感は重症の人にも出ますが、軽症の人でも、家事や会社へ出勤などで体を動かした後に、けん怠感がひどくなり動けなくなる人も多いと複数の医師が話していました。Aさんは発症から2か月後に、後遺症の外来を受診。治療をはじめました。体力がなかったので、まず体力改善のために漢方薬、そして味覚障害に亜鉛が処方されました。そして不規則な生活は疲れの原因となり、けん怠につながるので、規則正しい生活、そして、冷たい飲み物・食べ物をさけるよう指導されました。その後、せき・たんは無くなり、発症4か月後には、けん怠感・味覚障害もだいぶ改善したそうです。漢方に詳しい千葉大学附属病院和漢診療科の並木隆雄さんは、「けん怠感など全身症状がひどい場合は漢方が効くかもしれない。これから学会で、全国の症例を集め、治療の有効性を確認予定」とのこと。

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後遺症と考えられるだるさ・けん怠感ある場合、漢方以外の治療もあります。体位性頻脈症候群がおこっている可能性がある場合です。これは新型コロナの感染で、自律神経に関連した障害が起こっているかもしれず、例えば、立ち上がっただけで脈がかなり速くなることでもわかることがあり、その場合、β遮断薬という脈を抑える薬で治療すると、だるさ・けん怠感がよくなることがあるそうです。聖マリアンナ医科大学病院で後遺症外来を担当している総合診療内科の土田知也さんに話を聞いた所、体位性頻脈症候群と「診断できたら、まずその治療をして、だるさ・けん怠感を抑えることが大切だ」とのことでした。

◆新型コロナウイルスの後遺症 けん怠感があったら・・・

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新型コロナウイルスの後遺症、特にけん怠感がある場合、医療、つまり医療関係者などによる精神面でのサポートが大切だという話が複数の医師からありました。体のけん怠感があると、治るのだろうかと不安になり、会社からいつ出社するのかと聞かれてストレスがかかり、その結果、余計、だるくなることがあるそうです。このような不安・ストレスへの対応や時に治療が必要だそうです。
また家族・同僚など周囲のサポートが大切というアドバイスもありました。ひどいけん怠感があったら無理をさせない、体をできる限り休めることが必要で、周囲の人は「もう治ったはず」と追い詰めないで、患者の話をよく聞くことが大切だということです。
そして、社会・国のサポート。診察のとき、会社を休んだり、早退はできないと患者に言われることもあるそうです。大学病院だとソーシャルワーカーが、時に会社と交渉し、勤務を変えて「体を休める環境」を整えることもできるようですが、勤務環境を変えることができない人も多いと思います。休業保障もなく、休めないケースもあり、社会・国のサポートが必要ではないかと思います。

これまでワクチン接種で後遺症が出るリスクを減らせるという論文がありましたが、残念ながら、後遺症を防ぐには、新型コロナの感染を防ぐ、感染しないことが一番かもしれません。まだまだわかっていない後遺症。治療の仕方は医療機関・医師によって違い、個々の患者さんの症状を聞きながら治療を模索している状況です。はやくさまざまな知見が集まり、後遺症の治療が進んだらと思います。

(矢島 ゆき子 解説委員)

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