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トラブル多発! 安易な為替取引に注意

今井 純子  解説委員

為替取引によるトラブルが多発しています。今井解説委員

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【注意が必要な為替の取引。どのようなものですか?】
きょう取り上げるのは、外国為替証拠金取引=FXと呼ばれる取引です。日本の円と外国の通貨を売り買いする、為替取引の一種です。少ない証拠金をもとに、日本では、個人の場合、最大で25倍まで取り引きできるのが特徴です。

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【証拠金というのは、担保として預けるおカネですね。それを上回る取り引きができるのですね】
そうです。
▼ 例えば、証拠金の10倍の取り引きをするとします。110万円あれば、1ドル=110円の時に、その10倍の1100万円分。つまり10万ドルを買うことができます。
▼ そして、5円の円安で、1ドル=115円になると、10万ドルは、日本円では1150万円になり、50万円もうかるわけです。
▼ 逆に、5円の円高になると、同じ110万円で、50万円損するという仕組みです。ある程度、損が膨らむと強制的に取り引きを終了させるルールになっていますが、為替が急激に変動した場合、預けている証拠金を上回る損がでることもあります。

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【大きく損をすることもあるのですね】
その通り。リスクのある取引ですが、個人投資家による取引は、昨年度、初めて6000兆円を超えました。前の年度より47%増えたのです。

【なぜ、それほど増えたのですか?】
もともと、スマホで、少ない手数料、少ない額から、24時間取り引きできる。その手軽さから、初心者でも取り引きする人が多かったのですが、
▼ いわゆる「老後2000万円不足問題」から将来の生活資金への不安が高まった一方、新型コロナの影響で、家で過ごす時間が増え、若い人の間で投資全般への関心が高まっていること。さらに
▼ 昨年度は、コロナやアメリカ大統領選挙などの影響で、為替の値動きが比較的大きく、大きな利益を狙う人が増えたこと。
こうしたことも、背景としてあるのではないかと言われています。

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【若い人の間でも関心が高まっているのですね】
そうなのです。そもそもがリスクが高くて、注意が必要な取引なのですが、関心が高まっています。そこに、このところ、その関心の高さを悪用したとみられる、悪質な事業者によるトラブルが多発していて、相次いで注意喚起が行われています。
まずは、消費者トラブルの現場から。全国の消費生活センターには、FXに関する相談が、昨年度、1600件近く寄せられました。前の年度の2点1倍です。さらに、今年度は、前年の同じ時期と比べ、その3倍を超える勢いで相談が増えています。

【どのような相談ですか?】
スマホのアプリなどをきっかけにした、詐欺的な被害が多いのが特徴です。例えば、
▼ 恋人などとの出会いを仲介する「出会い系アプリ」で知り合った外国人の女性から、「みんな利益を得ている。やらないのはもったいない」と、FXの投資を勧められた。指定された口座に、おカネを振り込んだら利益が出たというので、さらにおカネを振り込んだ。ところが、おカネを引き出そうとしたら、手数料を払うよう請求され、結果的に、消費者金融から借りたおカネを含め400万円近くをつぎ込んだけれど、おカネが引き出せない。また、
▼ SNSで知り合った人に、FX投資を勧められた。利益が出て、資産が1000万円になったところで、おカネを出そうとしたら、税金や保証金が必要だと言われ、さらに数百万円振り込んだ。それでも、引き出せないままFXの会社のホームページが見られなくなり、連絡先もわからなくなった。
このように「儲かる」「利益が出た」「お金を引き出すには手数料が必要」と言っては、次々、おカネを振り込ませる。そして最後には、引き出せないまま連絡が取れなくなる。こうした詐欺的なトラブルが多いと言うのです。

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【悪質ですね】
コロナの影響で、人との接触が制限されたことから、出会い系アプリやSNSで出会いや会話を求める人が増えた。そこに詐欺的な悪質業者が目を付けて、将来への不安、投資への関心につけこんで勧誘し、おカネをだまし取っているとみられています。
そして、注意喚起の二つ目。政府の証券取引等監視委員会が、先月、警鐘を鳴らした事例です。

【どのような事例ですか?】
シンガポールに本社がある「スカイ プレミアム インターナショナル」という会社が、無登録で日本の個人投資家からFX取引への出資を募っていたという事例です。監視委員会によると、この会社は、全国各地、あるいはオンラインで、投資セミナーを開くなどして、これまでにおよそ2万2000人から、1200億円を集めてチェコにある銀行の口座に送金。FXで運用するなどと説明していました。ですが、調査したところ
▼ チェコの銀行には、この会社名義の口座が存在していない。その上
▼ FXの取引を行っているという事実が確認できない。
▼ 会社側からも合理的な説明が得られない。ということです。
監視委員会は、この会社と、日本での営業活動を統括している責任者に業務の差し止めを命じるよう、裁判所に申し立てをしました。集めた金額は、これまでに監視委員会が申し立てをした中で最大。金融庁も、無登録の業者として公表し注意を呼び掛けています。

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【無登録ということは、違法なのですか】
はい。無登録ということだけで、違法です。
▼ 日本に住んでいる人を対象に、FXを業として行う場合、金融商品取引法という法律に基づき、登録が義務付けられています。これは海外の事業者であっても同じで、違反した場合、罰則も定められています。
そして、登録事業者に対しては、
▼ 万一、経営破たんしても、客から預かっている資産が守られるよう、事業者自身の資産とは分けて、客のおカネを信託銀行などで管理する。
▼ 客の方から要請していないのに、電話などで勧誘することを禁止する。など、
投資家保護のための様々な規制がかけられています。
一方、無登録の業者は、この規制の外にいることになります。

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【投資家が守られないことになるのですね】
はい。行政の目が届かないため、業者の実態はわかりません。金融庁や監視委員会は、今まで返金を受けられていたとしても信頼できるとは言えない。おカネが引き出せなくなったり、連絡が取れなくなったりしても、解決は難しい。として、投資家に、無登録の業者とは取り引きしないよう呼びかけています。 
金融庁のホームページで、登録を受けている事業者のリスト。一方、無登録業者として警告を発した業者の名前を公表していますので、取り引きを始める前に確かめることが大事です。

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【すでに取り引きしている業者が、無登録だった場合はどうしたらいいですか?】
金融庁などは、すぐにも取引をやめるよう。そして、もし、おカネが戻ってこないなどトラブルになったら、身近な消費生活センターに相談をするよう呼び掛けています。全国共通の番号188から、電話でつながる仕組みになっています。

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【無登録の業者とは、とにかく取り引きしないことが大事なのですね】
はい。無登録の業者とは、取り引きしないことが大事です。
その上で、もうひとつ。そもそもFX取引と言うのは、何度か触れたようにリスクの高い取引です。一定の専門知識も求められます。登録事業者と取り引きする場合でも、きちんと仕組みを理解し、リスクも承知した上でやることが大事です。
世の中に、安全で必ずもうかる商品はありません。どうやって儲けるかではなく、どこまで損をしても大丈夫か。という考えで、取り引きするかどうかを含め、判断することが大事ではないかと思います。

(今井 純子 解説委員)

(参考)※クリックするとNHKのホームページからはなれます
金融庁 外国為替証拠金取引ついて   https://www.fsa.go.jp/ordinary/iwagai/
金融先物取引業協会 FFAJの学ぼう!FX https://www.ffaj.or.jp/learning/

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