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「ことしも不漁?どうなる秋の味覚・サンマ」(みみより!くらし解説)

佐藤 庸介  解説委員

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食欲の秋、代表する味覚と言えば、サンマです。ここ数年、不漁が続いてきたサンマ。ことしはどうなっているんでしょうか。

【ことしのサンマ漁 滑り出しは?】
サンマ漁は、北海道で8月下旬から始まり、ちらほらまとまった水揚げがみられています。9月25日、去年まで11年連続でサンマの水揚げ量、日本一の根室市・花咲港では700トンあまりが水揚げされました。地元では、小ぶりなサンマを無料で振る舞うサービスも行われました。

とはいえ、全体で見ると漁模様は振るいません。

漁業情報サービスセンターによりますと、9月10日までの水揚げ量は北海道・花咲港が1252トン、同じく北海道・厚岸港が177トン、岩手の大船渡港が57トンのあわせて1486トンでした。過去最低だった去年の同じ時期に比べれば、およそ4倍ありますが、歴史的に見るととても少ない水準です。
水産研究・教育機構は、漁の本格化は10月以降になるという見通しを示していますので、もう少し復活する可能性はありますが、厳しい状況には変わりなさそうです。

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この結果、スーパーでサンマの特売を見かけることもめっきり減りました。

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9月27日、都内で売られていたサンマです。1匹、消費税抜きで180円でした。
首都圏で展開している大手スーパーに聞きますと、豊漁の時期には1匹100円以下だったといいますから、値段は高め。
さらに特徴が大きさで、120グラムくらいがメインです。豊漁の時期には150グラムぐらいのものが主体でしたから、1回り、2回りくらい小さい印象です。物足りないと思う消費者も多いかもしれません。

【激減するサンマの漁獲量】
なかなかサンマを見かけなくなっている背景には、漁獲量の深刻な落ち込みがあります。
年によって変動はあるものの、2000年代に入って20万トン以上の水揚げを続けていました。ところが2010年ごろからサンマの量は徐々に減少。去年は3万トン足らずと、過去最低に終わりました。直近のピーク、2008年の10分の1以下です。

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豊漁だった2003年の9月、私が釧路港で取材した時は、産地の卸売価格が1キロ、40円台。連日の大量の水揚げで安値が続いていました。釧路のイベントでは、格安のサンマが飛ぶように売れていたのが印象に残っています。今では考えられませんが、このころは「豊漁貧乏」が漁業者の悩みでした。

サンマはどうしてこんなに減ってしまったのか。

理由は大きく3つ挙げられます。①資源量が減ったこと、②漁場が遠くなったこと、そして③外国の漁獲が増えたことです。まずは資源量の減少についてです。

【理由① サンマそのものが少なくなった】
まず、資源量です。資源が多いのに、うまく取れていないだけという可能性もあります。そこで資源の量がどのくらいなのか、毎年6月から7月にかけて、水産研究・教育機構が調査を行って、サンマがどのくらいいるか、推定しています。
その結果、2003年には600万トン近くあったのが、ことしはわずか84万トンにとどまっています。資源自体が悪くなっているということです。
理由ははっきりしていません。
北海道東部の沿岸でマイワシやサバ類が増えたことが分かっていて、エサが競合するサンマに影響が及んだ可能性もあります。地球温暖化があることも否定できません。

【理由② 漁場が日本から遠くなった】
つぎに漁場が遠くなったことです。

サンマは、春から夏にかけてエサが豊富な日本の東の海域を北上し、8月中旬ごろに南下を始めます。以前は日本の東側に沿って南下していました。近いので漁獲・水揚げがしやすく、取ったその日のうちに水揚げする「日帰りサンマ」も珍しくありませんでした。

ところが、2010年以降、南下のルートが東側に変わったため、主な漁場が日本の排他的経済水域のさらに東、おおやけの海・公海になりました。

北海道東部の沖合に暖かい海水の塊、「暖水塊」が生じ、冷たい海を好むサンマがそれを避けて東に移動したとみられています。

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漁場が遠くなったことで、操業にかかる時間が長くなります。出漁してから水揚げまで10日ほどかかることもあるといいます。漁の時期は限られていますから、10日1回の水揚げでは、毎日水揚げするより、当然、少なくなります。

さらに小型船がなかなか操業できなくなりました。それまで漁場が近い年には、小型の船の漁獲も多かったため、その分も水揚げ量に響きます。

【理由③ 海外の船がたくさん取るようになった】
最後に海外の船による漁獲の増加です。

かつてサンマ漁は日本の独壇場でした。しかし、2012年からは中国の船が操業を始めるなど海外の船の漁獲が急増しました。

北太平洋沖で操業する海外の船は非常に大型で、総トン数は、1隻、およそ1000トンに及ぶと言われています。日本の漁船よりはるかに大きい船です。これらの船は、サンマをすぐに冷凍し、保管する能力も備えています。
海外でもサンマを食べるようになり、需要が増えた一方、漁場が公海になり、どの国の船も操業が可能になりました。そして、大型の船がこぞってサンマを取り、その結果、台湾、中国の漁獲量は日本より大幅に多くなりました。

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資源は減っているにもかかわらず、漁獲しようとする船が多くなりました。専門的な言葉を使うと、漁獲しようという圧力、「漁獲圧」が増し、サンマに悪影響を与えているというわけです。

【秋のサンマを長く楽しむために…】
でも、「やっぱり秋にはサンマを食べたい!」という方も多いと思います。では、どうすればよいか、長年、水産庁で行政に携わってきた農林水産省の宮原正典顧問に聞きました。

農林水産省 宮原正典 顧問
「今まで通り何年かするとサンマがまた豊漁に戻るっていうふうに過去の例が当てはまらないかもしれない。サンマはしばらく取るのをやめるくらいの覚悟でやらないと昔の通り戻ってくることはない。昔は日本しかいなかったから、日本は近海で取れなければしばらくあきらめていて沖で資源が回復すると、また日本の近海に群れが来る状態だったが、いまは台湾や中国がサンマを遠い海でとり続けてしまえば、日本に来る群れが回復する見込みはなくなってしまう。そこはちゃんとやらないとアウトってことですね」

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農林水産省 宮原正典 顧問

まず、海外の漁獲量を抑えるため、各国で協力することが重要だと強調しています。
ことし、中国なども参加する国際会議で漁獲できる量を引き下げることで合意しました。ただ、実効性が低いなど課題もあり、宮原顧問は「しばらく取らない」といったもっと踏み込んだ対応も必要だといいます。

消費者に必要な姿勢は何か、この点も宮原顧問に聞きました。

農林水産省 宮原正典 顧問
「1シーズンにそれこそ10匹食べていたものが3匹になっても我慢してほしい。イワシとかサバもあるので、ほかのものを食べてよということですね」

北海道の沿岸で増えているイワシやサバも、サンマに負けず劣らず、おいしい魚なので、ある魚を大事に食べましょうということです。
魚は環境によって、たくさん水揚げされる種類がどうしても変わってしまいます。減った魚にこだわって漁獲を続けると、将来、回復する芽も摘んでしまうことになりかねません。
しばらくはサンマを少し我慢し、豊富な魚を食べるようにすることが、長い目で見て、サンマを秋の味覚として守っていくことにつながるのではないでしょうか。私もさっそく、週末はイワシ料理にしたいと思います。

(佐藤 庸介 解説委員)

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