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「どうしたらいい? 野菜・加工食品の値上がり」(みみより!くらし解説)

今井 純子  解説委員

野菜や加工食品が値上がりしています。今井解説委員。

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【実りの秋になりましたけれど・・野菜は高いですね】
高いですね。野菜の卸売り価格は(9月18日・東京都中央卸売市場)
▼ レタスが一キロあたり371円と、平年の2倍
▼ はくさいも2倍になっているほか、
▼ じゃがいも、トマト、なすなども、平年より高くなっています。

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【スーパーでは、レタスが品薄になっています】
はい。私も近所のスーパーをいくつか回ってみたところ、野菜売り場に「産地の天候不順のため、相場高騰中」と書いてあるスーパーや、レタス売り場に「入荷量が激減しています」「品質も低下しているので、回復までの間は、できれば購入を見合わせてください」といった貼紙をしているスーパーもありました。スーパー側からは、
▼ なかなか数量が確保できない。
▼ できるだけ、多くのお客さんに行きわたるよう、通常以上に、レタスを半分に小分けして個数を増やす対応をしている。といった声も聞かれました。

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実際に、小さいレタスをさらに半分にカットした商品です。これでも149円。

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【中もすかすかですね】
そうですね。
一方の普通サイズは430円でした。

【高いですね。なぜ、このように野菜の価格が上がっているのですか?】
やはり、天候の不順が大きく影響しています。農産物の成長には気温と日照量がカギを握っているのですが、
▼ 例えば、レタスやはくさい。今は、長野県や群馬県が主な産地になっていますが、東日本の「過去30年の平均気温」と「この夏の気温」との差を見てみますと、8月の中旬以降、大雨の影響で、気温が低く日照不足の日が続きました。9月に入っても、気温が低くて日照が足りない日が続きました。
▼ 雨が長く続いたことで、レタスは、病気が出て葉が傷むなど品質が悪くなったり、成長が遅くて小さいまま出荷せざるをなかったりしているということです。
▼ トマトも、主な産地の東北地方で、8月中旬以降、気温が低く日照不足の日が続いたため、生育が悪く、色が悪くなったりしてします。

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【じゃがいもや玉ねぎは?】
じゃがいもや玉ねぎの主な産地は、北海道です。こちらは、7月中旬から8月上旬にかけて、記録的な猛暑、そして、雨不足に見舞われました。土がからからになって、肥料を吸収できなかったことから、十分に育たず、小さめのまま出荷されたり、出荷量が大幅に減ったりしています。

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【今後どうなるのでしょうか?】
今後の天候次第というところがありますが、農林水産省は、きゅうりやトマトについては、産地の天候が回復してきているため、9月末から10月に向かって、次第に出荷が回復する可能性があると話しています。
一方、産地が変わるタイミングが価格の変わり目となる可能性がある野菜もあります。

【産地が変わる。どういうことですか?】
野菜の産地は、全国に散らばっていますが、それぞれが栽培時期をずらして、リレーする形で出荷を担っています。例えば、レタスで言えば、夏から秋にかけては、長野県や群馬県の高原地帯が主力です。それが、9月下旬から、徐々に茨城県、さらに兵庫県といった大都市の近郊へ産地が移り、冬の間は、静岡県や香川県など比較的温暖な地域からも出荷され、一年中、供給できる体制となっています。
足元、茨城県など次の産地では、順調に生育が進んでいるということで、農林水産省は、レタスやはくさいなども、10月以降、価格が落ち着いてくる可能性があると話しています。

【もう少しの辛抱ですね】
一方、じゃがいも。こちらは、当面は、ほぼ北海道産に頼ることになり、小玉傾向、出荷量が少ない状態が続く見通しです。農林水産省は、九州から、じゃがいもの本格的な出荷が始まるのは、年明けになるため、年内は、今の高値が続く可能性があると話しています。

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【この秋は、加工食品も値上がりが相次いでいますね】
そうですね。一部のメーカーで
7月にマヨネーズの出荷価格が上がったのをはじめ、
9月には、パスタやそば、レギュラーコーヒー。
10月も、マーガリンや9月とは別のメーカーのコーヒー。そして、お菓子。
さらに、11月には、食用油、冷凍食品の出荷価格が上がることが発表されています。食用油は、今年4回目の値上げというメーカーもあります。
こうした商品は、店頭での価格も上がる可能性があります。

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【これは、どうしてですか?】
原料の価格が上がっているからです。
マヨネーズや食用油などの原料になっている大豆。そして、パスタやお菓子などの原料になっている小麦の国際価格の推移を見てみましょう。大豆は一時期より落ち着いてきていますが、2019年のはじめと比べて1,4倍の価格。小麦も1.4倍の価格になっています。
▼ 小麦は、主な産地のアメリカ北部やカナダ南部の高温や乾燥の影響で生産量が減少していること。そして、
▼ 大豆は、環境政策に力を入れるバイデン政権の誕生で、バイオ燃料としての需要に期待が高まっていること。それに加えて、
▼ いずれも、中国の輸入が増加していること。
▼ さらに、世界的な経済活動の正常化に伴って、輸送に必要なコンテナが不足して、日本に運んでくる運賃が上昇していることも、価格を押し上げる要因になっています。

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【今後はどうなるのでしょうか?】
国際価格の先行きは、読めない面がありますが、長期的には世界の人口が増えていることや新興国での穀物の需要が増えていることから、高値の傾向が続くのではないかとの見方もあります。少なくとも小麦については、政府が、輸入した小麦を製粉会社などに売り渡す価格を、10月から19%引き上げることを決めています。過去2番目の上げ幅で、小麦粉やパン、パスタなどのさらなる値上げにつながる可能性もあります。

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【それは心配ですね】
特に、最近は、新型コロナウィルスの影響で、外食の機会が減った一方、自宅で調理をする人が増え、野菜や加工食品への支出が増えています。コロナで収入が減って、生活が厳しくなっている世帯も多くありますので、高値の状態が続くと、家計への影響が心配です。

【どうしたらいいでしょうか?】
対策のヒントになるのが・・
▼ ひとつは、にんじんの卸売価格が、平年より20%安くなっているという点です。ピーマンやねぎ、さといもも、平年とほぼ同じ価格です。農林水産省は、こうした野菜を、上手に利用してほしいと話しています。
▼ また、スーパーの中には、レタスなどについて、「カットサラダの利用をお薦めします」と張り紙をしているところもありました。カットサラダは、工場が産地と長期契約をして野菜を入荷しているため、日々の市況によって価格が変わらない。価格や品質が安定しているため、野菜の高値が続いている現状では、割安になることがあるというのです。
▼ さらに、生協などの宅配事業者でも、あらかじめ決めた価格で長期的に農家と契約を結んでいるため、足元、スーパーより割安になっている野菜があります。
▼ 一方、加工食品についても、大手スーパーの間では、プライベートブランドについては、すでに原材料の調達を確保していたり、物流の効率化につとめたりすることで、当面、価格を据え置くことを決めたところも出てきています。
▼ コメも、外食での需要が落ちていることから、安値傾向となっています。

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天候不順で、農家の人たちも本当に大変だとは思いますが、消費者としても、こうしたことを上手に利用しながら、味覚の秋を少しでも楽しむことができれば・・と思います。

(今井純子 解説委員)

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