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災害時のまさかの製品事故に注意

水野 倫之  解説委員

9月の台風シーズンに入り今週も13号14号と相次いで発生、備えをされている方多いと思うが、それだけでなく災害をきっかけに製品事故が発生し命に関わることもあることから、消費者庁と経済産業省が注意の呼びかけを始めた。
水野倫之解説委員の解説。

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温暖化の影響なのか、特に水害が増え規模も激しくなっていることがデータからも明らか。
1時間に50ミリ以上の、傘が役に立たない雨の年間平均発生回数は、
40年ほど前に比べ1.4倍に増。
氾濫危険水位を超えた河川の数も2014年の5倍に増。
これに伴って防災意識も高まり、
避難場所の確認や食料・水などを準備するという人は確実に増。
しかし災害に伴って製品事故が発生し、
命にかかわることもあるということは意外と知られていない。
そこで台風シーズンに合わせて消費者庁と経済産業省が合同で注意の呼びかけ。

製品評価機構には、水害のあと電気製品から出火する事故が多く報告。

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実際に起きた事故のイメージ映像みると
大雨で床上まで浸水し電気製品が水に浸かり

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その後雨がやみ水がひいたからといって、水没した電気製品を使うのは危険。
製品内部では電子部品の間で火花が散り、ひどい場合は火災になってしまう。

実験では水没後、2日間乾燥させてから電気を通したが、
外観上問題なくても内部の電子基板には水分や汚れがしっかり残っていたということで、
電気の通り道が形成されて火花が散った。

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注意点。
▽電気製品は水没してしまったら使わないことが基本。
▽使いたい場合は自分で内部を開けて乾かすことは危険ですのでやめて、
メーカーなどに問い合わせを。

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ほかには落雷に伴う製品事故も多く報告。
徳島県でエアコンのスイッチを入れたところ電子基板付近から出火した事故があり、
製品機構が調べたところ、

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近くの電柱に雷が落ちて一帯が停電、
その復旧直後の運転で出火していることから、

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落雷でエアコン内部が損傷し、発火したことがわかった。
落雷があると、過大な電流が電線を通して建物内の配線に流れ込んで、
コンセントにつながったままのテレビやエアコンなどの電子部品を損傷させることあり。
損傷に気づかないまま電源を入れるとショートして発火する。

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注意点。
▽近くで雷の大きな音が聞こえたら、
普段コンセントにつなぎっぱなしのテレビやエアコンのプラグは抜く。
▽ただ落雷の時に家にいるとは限らないので、
コンセントにつなぎっぱなしだった製品をその後使う場合、
異常な音やにおいがしたら使用を中止し、メーカーなどに相談を。

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でも雷のたびにプラグを抜くというのも大変。
こうしたトラブルを防ぐため、過大な電流が製品に流れないようシャットダウンするタップも
市販されており、こうした製品を使うことも対策の一つ。

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そしてもう一つ、災害に伴って多いのは停電の復旧によって起きる製品事故、
いわゆる通電火災。
地震からしばらくたって、停電から復旧する様子を再現した映像をみると
電気ストーブが倒れているところ、20秒後、煙が出始め近くにあった衣類から炎が上がった。
電気ストーブは停電でいったん消えるが、スイッチはONの状態のままなので、
電気が復旧すると同時にヒーターがついてやがて火災になる。
ちょうど2年前、千葉県を中心に長期間の広域停電を引き起こした台風15号でも
通電火災が発生し、男性が負傷。

電気が復旧したときに自宅にいれば、何らか対応できるかもしれませんが、
まだ避難している時に電気が復旧して事故になることも。

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これを防ぐのに最も効果的なのは避難する前に分電盤のブレーカーを切っておくこと。

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また地震で揺れを感じると備え付けのボールが落ちるなどして自動的にブレーカーを切る
「感震ブレーカー」をつけておくことも有効。

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ここまで電気製品中心に見てきたが事故は災害に備えて準備した製品、
携帯型発電機やカセットコンロなどでも起きる。
いずれも防災意識の高まりからか出荷台数増、
使い方をあやまると死亡事故にもつながる危険性。
ちょうど3年前に起きた北海道胆振東部地震では
北海道のほぼ全域が停電するブラックアウトが発生し、
室内で携帯型発電機を使っていた少なくとも3人が死亡。
死因は一酸化炭素中毒。
携帯型発電機にはガソリンを燃料とするものが多く、排ガスには一酸化炭素が含まれる。一酸化炭素は無色無臭で、体内取り込まれると酸欠になり、
換気が悪い部屋だと数分で吐き気をもよおし、やがては死に至る非常に怖いもの。

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注意点。
携帯型発電機は必ず外におく。
また最近は新型コロナの感染拡大で、テントでの避難を考えている方もいるかと思うが、テント内でも排ガスたまりますので絶対にテント内では使わない。

そしてもう一つ、災害に備えた製品で注意が必要なのがカセットコンロ、
中でも古いカセットコンロは事故につながりやすいので注意。
コンロには装着するカセットボンベと気密を保つために
ゴム製のパッキンが使われているが、時間がたつと劣化してひび割れを起こし、
ここからガスが漏れて火が出る事故が報告。
10年が目安と言われるが、製品に記載されている製造年を確認し、
古いものは買い替えるか、買い替えが間に合わない場合はガスが漏れていないか
音やにおいで十分確認して使う。
このカセットコンロ、東日本大震災後にかなり売れた時期があった。
その時買ったものはちょうど10年たっているため今回特に注意が呼び掛けられた。

自然災害そのものの被害だけでも大変、さらに製品事故が重なることがないよう、この際どのような製品でどんな事故が起こりやすいのか知り、
事前に対策をしてもらえれば。

(水野 倫之 解説委員)


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