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「コロナ禍で子どもの自殺急増 小さな変化に気づいて」(みみより!くらし解説)

二宮 徹  解説委員

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新型コロナウイルスの感染が広がった去年の春から、子どもの自殺が大幅に増えています。どうして子どもの自殺が増えているのか。そして、もうすぐ迎える夏休みに、保護者や学校はどうしたらいいのかなどについて、お伝えします。

<コロナ禍で子どもの自殺が急増>
小・中・高校生の自殺は去年1年間でおよそ500人。おととしより100人も増えました。

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小・中・高校生の自殺者の月別のグラフです。青がおととし、赤が去年です。去年6月からおととしを上回り、その後も多い状態が続きました。その結果、去年は499人とおととしより100人も増えて、統計が残る1980年以来、最多となってしまいました。
おととしは9月に増えているのに、去年は6月や8月などに増えていますが、これが、コロナ禍が子どもの自殺に関係していると見られるデータなのです。
去年の6月は、全国で1回目の緊急事態宣言で一斉休校した学校の多くが再開した時期です。また、去年の8月は、休校した分、短縮された夏休みが明けて、2学期が始まった時期です。
これまでも夏休み明けに増える傾向がありました。去年は11月にも増えていますが、文化祭や修学旅行などが中止され、授業も詰め込みになった影響が考えられています。

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そして、去年のグラフに、ことし5月までの推移を緑色で重ねました。多かった去年をさらに上回る状況で、すでに192人にのぼっています。過去最多の去年を上回るほどの深刻さです。
こうした中で、もうすぐ夏休みを迎えます。例年以上に夏休み中の子どもをしっかり見守ってほしいと思います。

<子どもの自殺の内訳>
データを詳しく見ると、これまでと違い、コロナ禍の影響が見えます。

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去年の内訳を見ると、小中高別、男女別、いずれもおととしより増えたのですが、特に女子が小中高すべてで増えて、219人と、87人も増えました。中でも、高校生女子は、去年は140人と、60人・75%も増えました。高校生女子はことしも5月までに57人と、去年をさらに上回る状況です。

<原因・動機は?>

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自殺の原因については、多くの場合、様々な原因が重なっているので、明確には言えませんが、統計上の原因・動機を多かった順に並べると、去年は、進路に関する悩み、学業不振、親子関係の不和、うつ病以外の病気の悩み・影響、うつ病の悩み・影響の順でした。
うつ病は、おととしは8番目だったのですが、5番目に多くなりました。中でも中高生女子のうつ病が増えています。学校や保護者は、子どものうつに対して、早期に医師などと連携してほしいと思います。

<コロナ禍が子どもを追い詰める>
コロナ禍で進路や勉強が上位の理由は、例えば、コロナ禍で家庭の収入が減って、進学を諦めるよう親に言われてといったことも考えられます。こうしたコロナ禍の影響について、子どもの自殺予防を検討する文部科学省の有識者会議が、審議まとめの中で具体的に指摘しています。

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まずは家庭です。在宅勤務や外出を控える「ステイホーム」が広がって、保護者が家庭にいる時間が増えたことが影響した可能性が指摘されています。保護者との時間が増えるのは、子どもにとって良いことと思うかもしれませんが、逆の家庭もあります。
たとえば、部屋が少なく、リビングで在宅勤務をしている家庭では、子どもは邪魔にならないよう息を殺して過ごしているとか、ストレスや経済的な不安が増した保護者がイライラして、夫婦げんかをしたり、子どもに当たったりする、それに、家でお酒を飲むことが増え、きつい言葉や感情をぶつけてしまうなどで、子どもが息苦しい生活を送っている可能性があるといいます。
また、ここまでではなくても、ゲームや動画を楽しんでいる子どもが目に付いて、「遊んでばかりいないで勉強しなさい」などと叱ることについても触れています。
子どもは今までは楽しく過ごしていた時間が、親に干渉され、叱られる嫌な時間になってしまったと悩んでいるかもしれないというわけです。このように、コロナ禍が「家庭で居場所を実感できない子ども」を追いつめているおそれを指摘しています。
この夏休みも、在宅勤務や「ステイホーム」が続く家庭が多いでしょうが、家庭の雰囲気や子どもへの接し方に気を遣ってほしいと思います。

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次に学校です。コロナ禍では3密回避や行事の中止などで、友達や先生との交流が減っています。これも「家庭で居場所を実感できない子ども」にとって重大なことです。学校や放課後、楽しく過ごすことで、家庭での嫌なことを癒している。部活動の達成感や友達とのおしゃべりも「息抜きの場所」、「自分を支える場所」だといいます。
いじめや学校になじめない、成績が上がらないなど、学校でのことに悩む子どもを含め、まずは担任やスクールカウンセラーに相談しやすい環境や機会を増やすことが大切です。

コロナ禍の子どもたちの変化やSOSをキャッチするために役立てたいのが、スマホやタブレットを使った相談体制です。これまでに全国ほとんどの公立の小中学校で、一人一台、タブレットなどの情報端末が配られました。文部科学省は、自治体や学校に対して、これを活用して、子どもがSNSなどで相談できるような体制を整えるよう通知しました。
学校は、相談しやすい雰囲気・環境をつくるとともに、子どものSOSに適切に対応できるよう関係機関との連携も進めてほしいと思います。

<相談先>

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悩んでいる子どもの相談先は各地にあり、電話やメール、SNSなど、方法もたくさんあります。
年中無休で相談を受け付けている「24時間子供SOSダイヤル」は、0120-0-78310(なやみ言おう)です。また、「チャイルドライン」のホームページ(https://childline.or.jp/)では、チャットでも相談できます。つらいと感じたり、誰かに話を聞いてほしいと思ったりしたら、まずは連絡してみてください。
大人を含めて、さまざまな相談機関を検索できる厚生労働省のサイト(http://shienjoho.go.jp/)もあります。保護者が相談できるところもありますので、ためらわずに相談してください。

長引くコロナ禍で、大人も子どももストレスがたまっていますが、子どもはそうしたストレスや悩みをうまく言葉にできず、一人で抱え込んでしまいがちです。周りの大人は、子どもの小さな変化やSOSに気付けるよう見守り、手を差し伸べてほしいと思います。

(二宮 徹 解説委員)

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