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「新型コロナ 五輪・パラ 国民の意識は」(みみより!くらし解説)

曽我 英弘  解説委員

7月のNHK世論調査がまとまった。東京で4回目の緊急事態宣言が発出される中、1都3県に加え北海道、福島でも観客無しで行うことになったオリンピックの開幕を目前に控えた現状を国民がどう感じ、政治にいま何が問われているのだろうか。

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【調査結果のポイント】
調査結果のポイントは緊急事態宣言の効果が疑問視されたこと。また大半の会場で無観客となったオリンピックのあり方をめぐって意見が割れたこと。そして内閣支持率が政権発足以降、最も低くなったことだ。

【感染不安は/政府対応の評価は】

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まずは新型コロナ対策だ。自らや家族が感染する不安を感じる人が8割近くと依然として高い中、政府の新型コロナへの対応を「大いに」または「ある程度評価する」は39%、「あまり」または「まったく評価しない」は58%だった。

【4度目の緊急事態宣言】

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今後感染をどこまで抑え込めるのか。カギを握るのは緊急事態宣言の効果、そしてワクチン接種の進捗だ。このうち4回目の宣言を東京に出すことで感染防止の効果がどの程度あると思うか聞いたところ、「大いに」または「ある程度ある」は39%、「あまり」または「まったくない」は57%だった。宣言が出ている東京、沖縄でもほぼ同様の結果だ。6割近くの人が「効果はない」と答えている

中でも心配な点は比較的若い人の受け止めだ。年代別では18歳から39歳の30代以下の71%が「効果はない」と答えている。これから夏休み・お盆と外出する機会が増える時期を控え、政府は予防的な意味合いもあって宣言を出した。ただ若い人にとっては単なる夏ではなくて、学生最後の特別な夏などと捉え、人流がどこまで減少するか不透明な部分も多いだけに政府は、注意の呼びかけなどにさらなる工夫や見直しが必要だろう。

【ワクチン接種したいか】

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もう一つのカギがワクチン接種だ。接種したいかどうか、年代によって温度差があることが分かった。ワクチンを接種したいか聞いたところ、「接種したい」は32%、「接種したくない」は5%、「迷っている」は13%、「もう接種した」は46%で、「接種したい」または「した」という人は8割近くに及ぶ。これを年代別にみると「接種したい・した」と答えた人は60代で85%、70歳以上では96%に上ったのに対し、30代以下は59%にとどまった。一方で「迷っている」は30代以下で29%、「接種したくない」も12%と、どちらも他の年代より高く年代でずいぶん違う結果となった。

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高齢者の感染者数や重症化率が抑えられているのは接種の効果とみられるが、様々な理由から接種できない人やためらう人もいて、強制や差別などは決してあってはならない。一方でここにきて政府からのワクチン供給が滞り、自治体によっては予約を停止したりキャンセルしたりするなど混乱が広がっている。 正確な情報を政府は時を置かずに公表し、根拠を含めて繰り返し説明しなければ、宣言の効果もワクチンの進捗も簡単ではないだろう。

【五輪会場の大半が無観客に】

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緊急事態宣言決定と同じ7月8日に発表されたのがオリンピック会場の大半では無観客で行うということだ。東京など首都圏の1都3県の会場を無観客にする決定をどう思うか聞いたところ、「適切だ」は39%、「観客を制限して入れるべきだ」は22%、「観客を制限せず入れるべきだ」は4%、「大会は中止すべきだ」は30%だった。中でも東京では「中止すべきだ」が5ポイント高く35%だった。意見が割れている。

政府などが無観客を決断したのは、観客らに感染が広がり医療体制がひっ迫することになれば、世論の反発は避けられないと判断したからだろう。その後無観客を決めた北海道や福島県にとっても、せっかくの地元開催という期待と感染拡大の不安のはざまでまさに苦渋の決断だったろう。

【水際対策は/政府・組織委員会などの説明は】

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政府が言う「安心安全な大会」を実現するには何が重要なのだろうか。国民にとっては引き続き予防対策を怠らずにいるとともに、海外から来日する選手や関係者に対する水際対策を徹底することだ。今回、来日する海外の選手などに対する政府の水際対策をどの程度評価するか聞いたところ、「大いに」または「ある程度評価する」は38%、「あまり」または「まったく評価しない」は56%だった。

組織委員会は海外からの選手や大会関係者を外部から隔離する「バブル方式」の他、特に報道陣などにはスマートホンのGPS機能を使って行動を管理するなどとしているが、効果には限界があるという指摘もある。東京大会を開催する意義や感染対策についての政府や組織委員会などの説明に、どの程度納得しているか聞いたところ、「大いに」または「ある程度納得している」は31%、「あまり」または「まったく納得していない」は65%と、開幕を目前に控えても「納得していない」が「している」を上回った。すでに来日した選手や関係者の陽性も確認されているだけに、日々の検査や行動管理の徹底し、しっかり説明もしてもらいたい。

【内閣・政党支持率】

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今月の菅内閣の支持率は、「支持する」は先月より4ポイント下がって33%、「支持しない」は1ポイント上がって46%だった。不支持が支持を上回ったのは3か月連続で、支持は政権発足以降最も低く、逆に不支持は最も高くなった。詳しく見ると「無党派層」で支持が5ポイント減り17%にまで下がった。これは「野党支持層」と同じ数字だ。またこれまで比較的支持が高かった30代以下で10ポイント減ったのが目を引く。

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内閣支持率が最低を更新する一方で、各政党の支持率は大きな変動はみられず、依然として「無党派層」が4割を占めている。この人たちの支持をいかに獲得できるかが秋までの衆院選をにらんで各党の今後の課題だ。

今後の政治を展望すると当面は、新型コロナ対策を最優先に取り組むというのが菅総理の基本方針だ。ただ自民党内には4月の衆参の3つの選挙や、知事選で推薦した候補の敗北が続き、都議会議員選挙でも伸び悩んだことで、次の衆院選を不安視する声も出始めている。それだけに東京などで増加に転じた感染を今後抑え込み、宣言を8月22日の期限までに解除できるか。また大会を無事成功させ、結果を示すことができるかがポイントとなる。そして政権にとって何よりも重要なのは、必要な量のワクチンを遅れることなく確実に自治体や企業に供給し、11月までに希望する国民全員に接種を終えるという目標を達成できるかどうか。このことが今後の政治の行方を大きく左右するとみられる。

(曽我 英弘 解説委員)

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