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「コロナで変化? 時間の使い方」(みみより!くらし解説)

名越 章浩  解説委員

日本人の生活がどのように変化しているのか。
NHKが5年ごとに行っている調査がまとまりました。
「コロナで変化? 時間の使い方」というテーマで名越章浩解説委員が解説します。

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【どんな調査?】

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この調査は、人々の生活を時間の面からとらえる世論調査で、「国民生活時間調査」といいます。1960年から5年ごとに行っています。
NHKは、その結果を番組編成などに活かしているのですが、日本人の生活実態を明らかにする基本データとして、広く各方面でも活用されています。
そして、去年13回目にあたる調査が行われ、その結果が、このほどまとまりました。

調査は、住民基本台帳から無作為に抽出した10歳以上の7200人を対象に、去年の10月に調査票を郵送し、本人に記入してもらう方式で行われました。
主な項目を見ていきましょう。

【仕事時間の変化】

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まず仕事時間の変化についてです。
サラリーマンだけでなく、自営業、パートなども含め、すべての職を持っている人の平日の仕事時間の平均、要は、1日何時間働いているかという数字を男女別に示しています。
もちろん在宅勤務の場合も、仕事時間に入ります。
25年前の1995年の調査以降の5年ごとの変化を示したグラフを見ると、男性は、2015年まで8時間30分前後の状態が続き、最新の2020年は、男女ともにグッと下がって、男性が7時間52分。女性が5時間42分でした。

この調査は、あくまでも時間を何に使ったのかの調査なので、仕事時間が減った理由までは質問していませんが、もともと仕事時間が減る傾向にあった中、コロナ禍でそれが後押しされたことが背景にあると考えられます。

実際、1日に10 時間を超えて働く、長時間労働者の割合がどう変化したのか、別のグラフで見てみましょう。右側の赤い色の部分が1日10時間以上働いた人の割合です。

2020年の調査では、5年前の調査と比べるとずいぶん減少していることが分かると思います。
この内訳を詳しく見てみると、特に男性の30代、40代の働き盛りの人が大きく減少していました。
コロナで仕事がなくなるのは当然困ったことですが、日本人は特に働きすぎと言われますから、働き方の改善という面では良かった感じる人もいると思います。
一方、このグラフでは、もう1つ特徴的なものがありました。
最も左の白い部分。仕事時間が0時間という欄が、2020年の調査では16%も占めています。
0時間だった人の割合が、5年前と比べて増えていることも分かります。
勤務の関係で、たまたま調査日が休みだった人も含みますから、過去の調査結果でも一定程度0時間という人はいるわけですけども、今回の調査では増えています。
これを詳しく、販売職・サービス職に限ってみてみると、仕事時間がゼロだった人の割合が29%で、5年前から大きく増加していました。
販売業やサービス業にコロナの影響が大きかったと言えるのではないか、と思います。

コロナでダメージを受けた経済を立て直す際、手厚く支援してほしいと感じます。

【家事にかける時間の変化】

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※1995年に調査方式を(プリコードからアフターコードに)変更した。
長期的な変化の方向を みるために両方式の結果を併記したが、数値そのものを直接比較することはできない。

次に、特徴的だったのは家事にかける時間の変化です。
平日の家事の時間は、男女ともに増えています。
特に男性は、この20年以上ずっと増えていて、今回の調査では、それがさらに増えた格好です。
一方で、依然として男性よりも、女性の家事の時間が多いことは変わりません。
ご家庭のそれぞれの事情はあるでしょうけど、男女で開きが大きいのは、ちょっと気になりますね。
ただ、これは意識だけの問題ではなく、仕事時間の長さとも関係していることが調査で分かりました。
職を持つ男性を見てみると、平日の仕事時間が8 時間超え 10 時間以下の場合、42%の人が何らかの家事をしていたのですが、仕事時間が10時間を超えると家事をする人の割合は28%でした。
つまり、長時間労働の人ほど、家事をする人が少ないことがわかったのです。

働きすぎが、家事の時間にも影響しているのかもしれません。

しかも今回はコロナ禍で保育園などの利用を控えたりすることで、小さな子どものいる世代で子どもの世話の時間が増えたということもあり、家事時間の変化は、男女格差の問題だけでなく、様々な社会事情が複雑に絡み合っていると言えると思います。

【睡眠時間の変化】

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最後に、睡眠時間の変化を見てみます。
平日の平均で7時間12分という調査結果でした。
2010年まで、平日の睡眠時間は減少傾向が続いていて、その後はほぼ変化がなかったのですが、実はこれ、年代別に見ると、興味深いことが分かりました。
高齢層の夜更かしの傾向です。
70歳以上の方は、例えば、22時~22時30分の時間帯に起きている人は、5年前は50%だったのが、今回は6割以上の方が起きています。
23時~23時30分の時間帯でみても、5年前は22%だったのが、30%へ増えていました。

では、その時間に何をしているのでしょうか。
「テレビ」「録画番組・DVD」を見ている人などが増えていました。
夜の時間帯にテレビや録画を視聴し,就寝時刻が遅くなっている様子がうかがえます。
遅い時間ですので、家族団らんでテレビを見るというより、個人の時間を楽しむ方が増えているのかもしれませんね。

60年以上にわたる5年ごとの調査で、今回、たまたまコロナ禍のタイミングでの調査になった訳ですけど、この1年あまり、私たちの生活は、それまでの常識を変えざるを得なくなり、時間の使い方は大きく変わりました。
その時間、その瞬間に、自分は何に比重を置いて暮らすのか。改めて見つめ直す機会になっているのかもしれません。

(名越 章浩 解説委員)

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