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コロナ下で急増 調理家電の火災に注意

水野 倫之  解説委員

新型コロナウイルスの影響でおうち時間が長くなり、手軽に料理ができる調理家電を使う機会が増えたのに伴い、火災事故が増え注意が呼びかけられている。
水野倫之解説委員の解説。

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電子レンジやオーブントースター、IHコンロなどの調理家電の事故は、
昨年度までの5年間で490件報告され、7割以上が火災になり7人が亡くなっている。
このうち昨年度は、特に電子レンジやオーブントースターの火災事故が目立ち、
前の年より14%増えていることがわかった。
機構では感染拡大でおうち時間が増えたことが影響しているとみている。
実際、昨年度出荷された電子レンジは前の年より8%、またトースターは15%増。
そして調理に関係する家電の使用時間も、
大手電機メーカーがネットにつながっている家電のデータを分析したところ、
緊急事態宣言が出された去年4月は
冷蔵庫の開け閉めの回数が平日正午時点で前の年の同じ月の2倍に、
またレンジとトースターの機能を兼ね備えたオーブンレンジが使われた回数も
同じく平日正午に2倍に増えたことが判明。
そしてメニューもピザトーストや焼きそばと言った手間暇かからないものが多く、
レンジなどが重宝されていることがわかる。
それにともなって事故も増えており、最も事故が多い電子レンジでは、加熱しすぎによる事故が多く発生。
去年8月埼玉県で電子レンジで肉まんを温めていたところ発火する事故。
再現実験では700wで肉まんを加熱し続けて12分近くたつと…突然破裂、扉が開いて発火。

電子レンジには温めすぎることがないようセンサーがついていて、オート機能あるが
冷凍食品の場合特に注意が必要。

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例えば冷凍チャーハンをオートで温めた場合、
温たまり方にばらつきがあってまだ冷たいところが残っていた、という経験あると思う。
こうした場合センサーが冷たい方を検知してまだ温まっていないと判断し、
ずっと温め続けてしまい、やがて炭化し火がついてしまうことがある。
注意点。
冷凍食品などの場合は袋の注意書きにオート機能の利用禁止と書いてあれば絶対に使わず、
何Wで何分加熱するか指定通り設定して使うこと。

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ほかには汚れによる発火事故も多い。
レンジの内部が食品カスで汚れたまま飲み物を温めようとする再現映像見ると…、まもなく火花が散る。
火花が右横から出て、…その後発火している。

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電子レンジは特殊な電磁波で食品中の水の分子を振動させてあたためる仕組みで、
このレンジの場合は右横の金属カバーの奧に電磁波の発生装置。

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そのカバーの隙間に食品カスが残っているとそこに電磁波が集中し、
食品カスとカバーの間で火花が飛び散り発火してしまう。
注意点。
レンジ内はこまめに掃除して食品カスを取り除くこと。
特に電磁波が出るカバー付近の汚れは要注意。

最近は蒸気で卵の温めができる機種もあるが、
一般的なレンジの場合、卵は固い殻で覆われているので、
内部が温められて圧力が高まり、やがて破裂。
そして注意するのは何も卵だけではない。
我々解説委員室にある電子レンジも、最近注意書きが貼り出された。

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ガムシロップは温めないでと書いてある。パッキングされたガムシロップごと温めて、
内部で圧力が高まり破裂したことが何回かあった。密封された入れ物に入ったものを温めると圧力が高まり破裂するので、
注意喚起が行われたわけ。

もう一つ事故が多いオーブントースターも温めすぎと汚れによる事故が多い。
再現映像では、薄切りのパンを焼いていると…、6 分あまりで煙が出始め、
やがて…破裂音とともに発火。
ほかにもぎょうざの皮を加熱しすぎてやはり火災になったケースも報告。

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注意点
薄いものを焼くときは時間に注意。
焦げ臭い匂いがしたら食品の様子をチェックし、煙が出たらすぐにタイマーを止める。

そしてこのトースターも汚れによる事故が多く、
再現実験では7分間の過熱でヒーター部分の汚れから発火。
そしてこの汚れはパンの場合、バターやジャムを先につけて焼くと汚れがつきやすくなる。バターやジャムが溶け落ちてヒーター部分に付着、炭化して発火しやすくなる。

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注意点
トースターの取扱説明書には
「バターやジャムを塗ったパンは焼かないでください。」と書いてある。
同じように魚や肉、揚げ物などあぶら分が落ちやすい食材は、
網に直接載せて焼くのではなく必ず受け皿を使う。
またお皿にたまったあぶら分に火が付いたケースもあるので、
あぶら物の調理中はこまめに内部をチェック。

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さらに火が出たからといってあわてて扉を開けると
空気が供給されて炎の勢いが強くなる。
レンジやトースターの内部は、ある程度耐火性のある部材でできている。
扉を閉めたままにしておけば酸素がなくなって火は消えるということ。
ただもちろん火が広がってしまったら迷わず消防に連絡を。

コロナ下でおうち時間が長い今こそ、こうした調理家電の正しい使い方、
取扱説明書などであらためて確認し、
おうちでの食事が楽しい時間になるようにしてもらえれば。

(水野 倫之 解説委員)


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