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「相次ぐトラブル "広告に見えない"ネット広告への対策は?」(みみより!くらし解説)

今井 純子  解説委員

一見、広告に見えないネット広告などで、トラブルが相次いでいます。今井解説委員。

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【“広告に見えない”ネット広告。これはどのような広告なのですか?】
例えば、消費者が、シミに効果のある化粧品について、ネットで検索したところ、「シミに効く化粧品おすすめランキング」と称した記事がみつかったので、クリックした。

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【○○美容研究会の記事とありますね】
一見、中立的な立場で評価した記事のようにも見えますよね。商品が点数でランキングされ、

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1位の化粧品について見てみると、「将来のシミも防ぎます」というコメント。実際に使った人の「1か月もたたずにシミが薄くなった」といった体験談。その上で、「今なら、初回900円。30日以内ならいつでも解約OK!」とあったので、「今すぐ使ってみる」という表示を押したところ、

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販売事業者の公式サイトの申し込みページに移るようになっていた。こうした広告です。

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そして、もうひとつ。
▼ 個人のブログに、「DVDを見れば、元本10万円が半年で100万円に!」「初心者にもわかりやすい説明!」というコメントがあった。「もっと知りたい人はここ」という表示を押すと、投資用DVDを販売する事業者の公式サイトに移るようになっていた。こうした広告もあります。

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【こうした記事やブログは、一見、広告とは思わず、コメントを信じてしまいそうですが、広告なのですか?】
いずれも販売事業者の公式サイトに移れる仕組みになっている広告です。ですが、トラブルも起きています。

【どのようなトラブルですか?】
コメントを信じて商品を買ったところ、
▼ 書かれていたような効果がでなかった。30日以内は解約できるとあったので、解約しようとした。
▼ DVDも説明が難しく、損ばかり。ブログの内容と違うとして、料金を返すよう求めた。
▼ ところが、販売事業者から、「個人が勝手に書いた記事で、実際には、最低3回の定期購入が条件となっている」。として、残り2回分の金額を払うよう求められた。DVDも返金に応じてもらえない。こうしたトラブルが、相次いでいます。

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【いずれも、販売事業者は「個人が勝手に書いた記事だ」というのですね】
そうなのです。でも、実際には、こうした広告。販売事業者から報酬をもらっているケースが多いとみられています。

【報酬をもらっているのですか】
こうした広告は、アフィリエイト広告と呼ばれていて、一般的には、専門の仲介事業者が記事やブログを書いている人(=アフィリエイター)と、販売事業者と、それぞれ契約を結びます。そして、記事やブログを見て、消費者が、そこから販売事業者の公式サイトにいって、商品やサービスを購入すると、販売事業者から、仲介事業者を通じて、アフィリエイターにその分の報酬が支払われる仕組みになっているのです。今、アフィリエイターは、国内で数十万人から数百万人にのぼるとも言われています。

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販売事業者からみると、テレビや新聞などに広告を出すのと比べると、多くのアフィリエイターの創意工夫で、ネット上にこれまでになかった多様な広告を出せる。しかも、売れたら報酬を払う仕組みなので、少ない費用で、成果を出すことが期待できます。ということで、今、多くの販売事業者が、アフィリエイト広告を採用しています。今年度の市場規模は、およそ3700億円と、4年前の1.4倍に増えると予測されています。

【でも、トラブルも多いということなのですね?】
はい。アフィリエイターにとってみると、売れた分、儲かる仕組みになっています。ですから、より多くの報酬を得ようと、消費者の関心を引きやすいウソや架空、おおげさな広告を書きがちになる。つまり、不当表示につながりやすい仕組みになっていると、言えるのです。

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きちんとしたアフィリエイターももちろんいますが、一方、架空の体験談を載せたり、ランキングも、報酬が多くもらえる順に、並べたりするケースもある、という指摘もあります。JARO=日本広告審査機構が昨年度、特に不当性が高いとして厳重警告をした広告が15件ありましたが、そのうち、14件がアフィリエイト広告に関連するものでした。

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【アフィリエイトの仕組み自体は違法ではありませんが、ウソや架空のコメントは、違法ではないのですか?】
景品表示法という法律では、ウソや架空の宣伝。それに、消費者を誤解させるようなおおげさな広告は違法、と定められています。
トラブルが相次いでいることを受けて、消費者庁は、今年に入って、「広告の内容については、他の事業者に広告の内容の決定を委ねた場合も、販売事業者が責任を負う」。つまり、「アフィリエイターが出した広告についても、責任は販売事業者が負う」という見解を明確に打ち出しました。
そして、3月には、「たった2ヵ月で髪がフサフサ」など、合理的な根拠がないのに、アフィリエイト広告を使って宣伝をしていたとして、育毛剤の販売事業者に対して、広告をやめるよう行政処分をだしました。アフィリエイト広告について、消費者庁が販売事業者を処分した初めてのケースでした。

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【販売事業者の責任になるのですね】
はい、販売事業者からは、多くのアフィリエイターがいるので、すべての記事は管理しきれないという声もあります。が、自分の意思で広告を依頼しています。売れれば自分が儲かります。だったら、その広告が違法な内容でないか、販売事業者はチェックする責任があるという考えです。
さらに、消費者庁は、先月、被害を防ぐための対策を検討する有識者の検討会も立ち上げました。

【どのような対策が考えられるのですか?】
これからですが、検討会では、委員の中から、まずは
▼ 違法なアフィリエイト広告について、販売事業者の責任が問われることを周知徹底し、国や都道府県が摘発を強化すること。そして、
▼ 違法な表示で消費者が被害を受けた場合、解約や返金に応じるよう販売事業者に徹底することを求める意見が相次ぎました。その上で、
▼ 販売事業者が、仲介事業者と連携をして、自社のアフィリエイト広告を定期的にチェックできる仕組みをつくることや、
▼ 悪質な仲介事業者やアフィリエイターについては、広告の委託契約を解除するよう義務付けること。
▼ ネット上の記事が、アフィリエイト広告だということを消費者が、判別できる何らかの表示の仕組みを導入すること。こうした意見もでました。

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【そうしたら、中立的な意見ではない。ということが、わかりますね】
はい。広告を見る心構えが変わってきますよね。消費者庁は、こうした意見をもとに、年内には対策のとりまとめを行う方針です。

【消費者側も、トラブルに巻き込まれないよう注意が必要ですね】
そうですね。一見、中立的に見えるネット上の記事やブログ、口コミなどの中にも、販売事業者から報酬が入る仕組みの広告があるということを頭に入れて、内容をうのみにしないこと。そして、買う場合は、公式サイトで価格や解約の条件などを詳しく確認することも大事になってくると思います。
その上で、トラブルに巻き込まれた場合は、身近な消費生活センターに相談をしてください。全国共通で188の番号からつながる仕組みになっています。販売事業者が「個人が勝手に書いていることだ」と応じてくれない場合もあるかもしれませんが、先ほども言ったように、消費者庁は、アフィリエイト広告の内容について、販売事業者が責任をもつということを明確にしています。

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解決につながる可能性もありますので、ぜひ、あきらめず、相談をしていただきたいと思います。

(今井 純子 解説委員)

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