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「新型コロナウイルス どう防ぐ?リバウンド」(みみより!くらし解説)

中村 幸司  解説委員

緊急事態宣言が、2021年6月20日をもって沖縄県を除いて解除され、東京や大阪など10の都道府県では、まん延防止等重点措置が適用されています。今回は、新型コロナウイルスの感染の再拡大=「リバウンド」をどう防ぐか、考えます。

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Q:今後、リバウンドの恐れはどれくらいありそうなのでしょうか?
A:専門家は、リバウンドのリスクは高いと話しています。どういうことなのか。まず、現状を見てみましょう。

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こちらは、全国の1週間の感染者数を人口10万人あたりでみたものです。減少傾向で、ピークの頃から比べると、かなり低くなっています。緊急事態宣言の対策の効果が出ているものとみられます。
ただ、都道府県別に見ると、状況は違って見えます。

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宣言が延長された沖縄県ですが、人口あたりの感染者数が、まだ十分下がっていないのです。

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東京都は上の図で、下げ止まっています。
この人口10万人あたりのデータは、感染状況の指標の一つとして使われています。15人以上が「ステージⅢ」、25人以上が「ステージⅣ」です。専門家からは“ステージⅢより下”まで下げたいという声が聞かれますが、東京はステージⅢです。

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東京については、他にも心配になるデータがいくつかあります。
一つは、「繁華街の夜の人出」で、1か月以上前から増加傾向にあるという点です。
さらに上の図の左は、東京都の5月から6月の感染者数のデータを年代別にみたものです。各年代で、減少しています。

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20代が6月前半の時点で増加しているのがわかります。既に若い世代では、リバウンドが始まっているのではないかと専門家は指摘しています。
過去にも、若い世代で感染が広がって、それが家庭などで親の世代、高齢者などに広がるといったことが起きています。同じ様に感染が拡大しないか、警戒されているのです。

Q:東京以外のリスクは、どうなのでしょうか?
A:東京以外でもリバウンドに警戒が必要です。というのも、今後、感染リスクを上げる「新たな要因」があるからです。
一つは変異ウイルスで、もう一つは1か月後に近づいている夏休みです。

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まず、変異ウイルスについてですが、3月から4月、大阪で感染者が急激に増えて、医療が非常に危機的な状況になりました。このとき、関西では感染力の強いイギリスで見つかった変異ウイルス「アルファ株」への置き換わりが、全国の中でも早く進んだことが、急増の大きな要因になったと考えられています。
現在は、全国的にこの変異ウイルスに、ほぼ置き換わっていますが、さらに感染力が強いインドで見つかった変異ウイルス「デルタ株」の感染例、国内で報告されています。今後、インドで見つかったデルタ株に置き換わると、感染者の急増につながる恐れがあると指摘されます。

Q:夏休みも、大きなリスクになるのでしょうか?
A:これまでの感染拡大を振り返ってみましょう。

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▽第2波は去年の「夏休み」のころ、▽第3波は年末から年始にかけて、「冬休み」のころ、▽第4波は年度に切り替え、「春休みから大型連休」のころといったように、休みで人の動きが出てくると感染が拡大しています。夏休みが近づく中、感染拡大に警戒が必要です。

Q:接種が進んでいる、ワクチンによって感染は抑えられないのでしょうか?
A:確かに、ワクチンの効果が期待されています。国内で接種されているワクチンでみると、例えば、ファイザーのワクチンは、イギリスで見つかった変異ウイルス、アルファ株に対して有効で、インドで見つかったデルタ株についても、効果はやや低下しますが2回接種することでワクチンとして有効だとする報告があります。
ただ、日本では。医療関係者や高齢者がワクチン接種の中心となっていますので、現時点では、ワクチンが感染拡大を抑えてくれる効果は、限定的と考えておいた方がいいと思います。

Q:変異ウイルスに対して、どう対策をとったらいいのでしょうか?
A:一つは、変異ウイルスの特徴を考えて対策をするということです。

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これまでは、「3密」の3条件が重なると、リスクが高くなるとされていました。

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しかしそうではなく、「1つでも条件がある」と集団感染のリスクが高まることが指摘されています。さらに「時間」という要素も考える。つまり、リスクのある時間をなるべく短くするということです。

Q:具体的にはどのような対策を心がけたらいいのでしょうか?
A:変異ウイルスは、感染者から出されるウイルスの量が多く、受ける側は同じ量のウイルスを浴びた場合に、従来のウイルスより感染しやすいと考えられています。

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マスクをするとき、▽鼻の横などに隙間がないようにするとか、▽「不織布」のようにフィルター性能の高いものをつける。▽マスクをしていても会話は短時間に、▽大声は出さない、▽人との距離を、なるべくとるようにする。▽飛沫が漂う状態にしないため「換気」を徹底する。この換気は変異ウイルス対策として特に大切と考えられています。
感染対策は、日常生活で求められますが、飲食の時も、もちろん対策を徹底しなければなりません。
東京都は、まん延防止等重点措置に移行したのに伴って、飲食店での酒の提供を認めました。その際に、利用は1グループ2人までで、感染対策の責任者を登録することなどを条件にしています。こうした飲食のルールを守ることも大切になります。

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Q:今後のことというと、もう一つ、東京オリンピック・パラリンピックもあります。
A:6月21日に組織委員会や政府、IOCなど5者による会談が行われ、東京オリンピックについて、観客を入れることが発表されました。収容定員の50%以内で、1万人を上限にすることを原則にするという発表でした。

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専門家が懸念していることの一つが、▽チケットを持っている人が会場に見に行く前後で集まること、▽仲間で一緒にテレビを見ながら応援することで、感染が拡大してしまうのではないかということです。

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Q:選手を応援したいという人も多いと思いますが、どうしたらいいのでしょうか?
A:会場に行く人は、会場につく前や競技が終わった後にどこかで集まるようなことはせずに、そのまま家に帰るといった行動が必要になります。
会場に行かない人は、例えば自宅で別々にテレビ観戦して仲間とオンラインで結んで盛り上がるといったこともできると思います。

Q:リスクの低いオリンピックの応援の仕方、どんな工夫ができるのか、今から考えておくのもいいかもしれません。
A:これまで第1波、第2波、第3波を経験して、感染が減少するたびに「次のリバウンドを抑える」、あるいは「リバウンドが起こったとして感染拡大を小さく抑える」ということが言われてきましたが、実現できませんでした。
今回の第4波の後、リバウンドを抑えるのは容易ではありませんが、大阪で見られたような本来救える命を救えない状況を引き起こさないためにも、ワクチン接種を加速させるためにも、ひとり一人が対策の必要性を考えて行動することが、ますます大切になっていると思います。

(中村 幸司 解説委員)

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