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「スズメバチ被害 今こそ対策を」(みみより!くらし解説)

名越 章浩  解説委員

毒が強く、刺されると死亡するケースもあるスズメバチ。被害は毎年のようにニュースになります。
「スズメバチ被害 今こそ対策を」というテーマで名越章浩解説委員が解説します。

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【住宅地にも巣を作るスズメバチ】
厚生労働省のまとめを見ると、この10年、多い年で24人もの方が、ハチに刺されて亡くなっています。

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中でも要注意なのは、キイロスズメバチ。
性格が凶暴で、住宅地にも巣を作ります。
今年の場合、新型コロナウイルスの影響で外出自粛が続く中で、「家の出入りが少なくなって、軒先などに巣が作られやすくなっている」として、ハチの生態に詳しい玉川大学学術研究所 所長の小野正人教授は、「今の時期こそ対策してほしい」と呼び掛けています。
今は、巣を徐々に大きくし、ハチを増やそうとしている時期です。
このため、活動も活発でない、今のうちに駆除しておくと、刺されるリスクを減らせるというわけです。

【今は手のひらよりも少し大きな巣】
では、今の時期の巣はどれくらいの大きさなのでしょうか。

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そもそもスズメバチの巣は、春に冬眠から覚めた女王蜂が、たった1匹で作り始めます。
上からいくつもの層が重なっていって大きくなっていく仕組みです。
今の時期だと、1段目から2段目の層ができる程度の大きさだということです。
手のひらよりも少し大きな巣です。
この中で卵を産んで幼虫を育てますが、6月中旬頃は、羽化して増えていく時期です。
羽化したハチは「働き蜂」になります。働き蜂は、巣を作ったり、餌をとりにいったりします。
ですから、それまで1匹でなんでもやっていた女王蜂は、今度は外に出ることなく、巣の中で卵を産み育てる役割に徹することができるようになります。
したがって、どんどん卵は増え、羽化する働き蜂も増えるというわけです。
8月頃には、300匹から400匹。9月になると、600匹から700匹、10月には1つの巣で1000匹にもなります。
夏から秋にかけてスズメバチの被害が相次ぐのは、このためです。

【どこへ巣を作っているの?】
では、住宅地の場合、どういう所に巣を作っているのでしょうか。

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多いのは、軒下とか、床下、それに、雨戸の戸袋などです。
排水管の中や、分電盤の中など、人に見つかりにくく、狭いところも好みます。
また意外と注意が必要なのは、庭などに置きっ放しにしている鉢植え。逆さにして置いておくと、ちょうどいい空間ができるので、隙間から中に入って巣を作るのです。
他にも、自転車にカバーをかけたまま、しばらく使わないでいると、その中に巣を作ることがあります。
知らずに人が動かしたら、中からハチが出てきて刺されてしまうということがありそうです。
鉢植えを片付けるなど、ハチが好む場所を作らないように心がけましょう。

【近くに巣がある? 気づくポイントは?】
スズメバチは、巣の近くに人が近づくと、警戒してその人のまわりをまとわりつくように飛ぶことがあります。庭などで作業している時に、そのようなことがあったら近くに巣があるかもしれないと疑ってみて下さい。
また、ブドウとかビワなどの果物を庭で栽培していると、果実の香りにひかれて果汁を吸うためにスズメバチが寄ってくることがあります。
果物などに寄ってくるスズメバチがいたら、活動範囲に自分の家が入っている証拠だと考えて下さい。

ここで、スズメバチが果汁を吸うと聞いてビックリする人がいるかもしれません。
ほかの昆虫を襲う凶暴なイメージがあるという人も少なくないからです。
実際、スズメバチは昆虫を捕まえるのですが、それは幼虫に与える餌として捕まえています。
つまり、幼虫の頃は肉食。しかし成虫になると、樹液や果物の果汁を吸って生きているのです。

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では、巣を見つけたら、どうすれば良いのでしょうか。
この時期のハチであれば、専用の殺虫剤でも駆除できるということなのですが、万が一、刺されたら大変ですので、まずは役所や保健所などに相談してみて下さい。

【刺されないためのポイントは?】
次に、刺されないようにするためのポイントです。

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ハチはこちらから刺激しない限り、ハチの方から攻撃をしてくることはほとんどありません。
このため、巣の近くで大きな音をたてたり、振動を与えたりしないことが重要です。
巣を見つけたら、大きな音をたてないように、ゆっくりと離れて下さい。

また、ハチは黒いものに対して攻撃性が高いといわれています。
家の近くに巣がある場合、黒ではない明るい色の服を着たり、帽子をかぶって髪を隠したりして、刺されるリスクを減らしましょう。
また、香水やヘアスプレーなどは、スズメバチを刺激する成分が入っている可能性があるので、要注意です。

【刺された時はどうする?】

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もし、刺されてしまったら、一刻も早く、その場から逃げましょう。別のハチが次々に襲ってくる可能性があるからです。次に、刺された部分を指で、グッとつまんで毒を出して下さい。
血液と一緒に毒が出てくるので、きれいな水で洗い流して下さい。
口で毒を吸い出す場合、口内炎などがあると、そこから毒が入り込む可能性がありますので、避けた方が良いでしょう。
アウトドアショップなどでは、毒を吸い出すための器具が売られているので、予め用意しておくと良いかもしれません。
そして、体にじん麻疹が出たり、呼吸が苦しくなったりする症状が出た場合、これは危険なサインですので、すぐに救急車を呼んで下さい。
過去にハチに刺されたことがある人は特に危険です。
強いアレルギー反応、アナフィラキシーショックを引き起こし、最悪の場合、窒息死します。
別の種類のハチの毒でも反応する場合があるので、自分はどのアレルギーがあるのか、予め、アレルギー内科や、皮膚科などで調べておくと、いざというときに慌てなくていいと思います。

【新型コロナのワクチン接種は可能?】
アナフィラキシーは、新型コロナのワクチン接種の関係で最近よく聞く症状ですよね。
ハチに刺されてしまうと、新型コロナのワクチンを打てなくなるんじゃないか、と気にする方もいるでしょう。
厚生労働省は、公式HPに「ハチ刺されによるアレルギーがある人であっても、新型コロナのワクチンは接種できる」と記しています。
ただし、アナフィラキシーなどの重いアレルギー症状の起きたことがある人は、ワクチン接種後に急激なアレルギー反応が出ないことを確認するために、通常より長く(30分程度)、接種会場で待機するようお願いしているということです。
医師の問診の際に、アレルギーがあることをしっかりと伝えておくことが重要です。

スズメバチの活動範囲は、大体半径2キロから3キロメートルと言われています。
1匹でも見かけたら、その範囲に巣がある可能性があると思って、今一度、自宅の周辺をチェックしてみて下さい。

(名越 章浩 解説委員)

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