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コロナ禍のたばこ事情

土屋 敏之  解説委員

◆新型コロナウイルスの影響で、たばこをめぐる状況にも変化

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 コロナ禍でお店の営業自粛やテレワークの増加など私たちのライフスタイルにも様々な変化が起きていますが、これが「たばこの吸い方」や「吸う人の意識」にも影響していることがわかってきました。

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 国立がん研究センターが、3月にインターネット上で喫煙者と非喫煙者の1千人ずつにアンケート調査を行って回答を得た結果を、5月31日に発表しました。この中でまず、喫煙者ではコロナ禍で「たばこを吸う量が増えている」と答えた人が18%いて、一方で「減っている」という人も11%と両方の動きがあったものの、増えている人の方が多かったんです。
 たばこの量が増えたという人に最大の原因を尋ねたところ、最も多かったのが、「日常生活や社会環境の変化に伴うストレス増加」というもので、約半数を占めていました。次いで、「職場は禁煙だが自宅は制約がないため」、そして「職場では周囲の目が気になるが自宅では気にならない」などが挙げられていました。

◆たばこに関して近年の状況は?

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 まず前提として、近年、健康志向や法律による規制も強まる中で、たばこを吸う人の数は減少傾向が続いており(2019年の喫煙率は16.7%)、これに伴ってたばこの販売本数もJTの推計でこのように少しずつ減っています。近年急増している加熱式たばこ等は3年前からしかデータが出ていませんが、全体としては去年も少し減っています。
 ただ、新型コロナの影響はどうか?というと免税店などの売り上げは落ち込んだものの、たばこ業界全体ではコロナによる影響は限定的だとされています。
 今回のアンケート結果もある意味それを裏付けた印象で、企画した国立がん研究センターの平野公康研究員は、「本来もっと減っていてもよいのに、在宅勤務などで消費が押し上げられた面もあるのでは」と見ています。

◆在宅でたばこを吸う量が増えることでの懸念

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 家で吸う量が増えることで懸念されるのが、喫煙者本人だけでなく同居している家族の健康にも影響することです。
 たばこは、がんだけでなく心筋梗塞、脳卒中など様々な病気を悪化させる原因になります。日本では毎年10万人以上がたばこが原因で亡くなっているとされ、本人が吸わなくても家族などの喫煙、いわゆる受動喫煙で亡くなる人も1万5千人にのぼると推計されています。
 そして今回、非喫煙者へのアンケートで、コロナ禍で「同居する人のたばこによる受動喫煙が増えている」と答えた人が10%に上りました。

◆一方で「たばこを吸う量が減っている」人も11%いた

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 最初のグラフで、コロナ禍でたばこが減っていると答えた人も11%いましたが、こちらの理由にも世相が現れています。
 吸う量が減った原因として一番多かったのが、「飲み会などがなくなり喫煙する機会が減ったため」というものでした。次いで「自宅では家族の目が気になる、家族を受動喫煙から守りたい」といった家族を理由に挙げた人が多く、「感染症による重症化がこわいから」という人もかなりいました。

◆新型コロナウイルスと喫煙の関係

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 新型コロナに感染した際に、喫煙者は重症化しやすい、死亡リスクが高いということが既に多くの研究で示されています。
 「持病がある人や高齢者は重症化のリスクが高い」とされることは知っている人も多いと思いますが、実は喫煙はそれ以上の重症化リスク要因だと分析した研究もあり、WHOなどは禁煙を強く呼びかけています。これは加熱式たばこなども例外ではありません。
 逆に言えば、禁煙すれば数週間から数か月で循環器や呼吸器の働きも改善するとされますので、禁煙で新型コロナが重症化するリスクも下げられる可能性があると言えます。
 一方で、喫煙と感染リスクの関係はまだはっきりしていませんが、感染リスクが高いと心配される場面というのもあります。

◆「喫煙室」と新型コロナ

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 専門家などがリスクを指摘するのが、喫煙室や喫煙所です。新型コロナ対策では、「三密」=密閉・密集・密接を避けることが重視されていますが、喫煙室はこの三密になりやすい状況とも言えます。喫煙所の運用ルールなどによって変わりますが、場所によっては狭いところに何人もの人が数分間一緒にいたり、会話することもあります。その上、たばこを吸うためには当然マスクをはずします。
 既に喫煙室で感染が拡大したと見られるケースも報告されており、日本呼吸器学会などは喫煙室の使用をやめ閉鎖することも呼びかけています。
 今回のアンケートで喫煙者でも「喫煙所の閉鎖や使用停止に賛成」する人は30%いて、「反対」と同じぐらいを占めていました。これは喫煙者も喫煙所のリスクを感じている人が多いことを示しているようです。
 
◆喫煙室などが閉鎖になると吸える機会もさらに少なくなりそう

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 こうした中、喫煙者の4人に1人が禁煙に取り組みたいと答えています。この割合自体は必ずしもコロナ禍で増えたとは言えませんが、ただ、今は飲み会などが無くなり自分のペースで禁煙に取り組めるという点ではよい機会だと思います。
 そこで今、禁煙に取り組みたいという方にお勧めしたいのが、オンライン診療の活用です。

◆コロナ禍の禁煙とオンライン診療

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 まず禁煙は自分一人の力でがんばろうとするより、専門家の指導を受けたり医療機関で処方される薬を使う方が成功率が高いことがわかっています。
 さらに今、コロナ禍で院内感染への不安から通院をためらう人も少なくありませんが、オンライン診療ならそのリスクがありませんし、また、現在既に「初診からオンライン」、つまり一度も医療機関に行かずにスマホなどでも禁煙治療を受けられる制度があります。
 これまで禁煙しようとしたけれどなかなか続かなかったという人も、今は在宅でご家族と相談しやすい状況が増えている面もありますし、禁煙に取り組む良いチャンスになるかもしれません。

(土屋 敏之 解説委員)


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