NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「続く緊急事態宣言 生活困窮者に新たな支援策」(みみより!くらし解説)

今井 純子  解説委員

緊急事態宣言が一部の地域で続いている中、国の無利子の融資制度を使いきって、なお、生活に困っている世帯がいます。国はそうした世帯に、返す必要のないおカネを給付するなど、新たな支援策を打ち出しました。今井解説委員。

m210609_1.jpg

【新たな支援策。どのような制度でしょうか?】
きょう取り上げるのは、主に、生活費や家賃、子育て支援の追加の対策です。

m210609_2.jpg

まず、生活費を支援するための無利子の融資制度からみてみましょう。
この制度、具体的には、
▼ 新型コロナウイルスの影響で、収入が突然減って生活費に困っている世帯が、「緊急小口資金」そして「総合支援資金」あわせると、(申請の時期によりますが)最も多いケースで200万円まで借りられる制度です。これまでに、1兆円近い融資が決まっていて、今も、週に1万件程度、新たな申し込みがあるということです。

【すごい額ですね】
とりあえず、このおカネで、なんとかしのいできた、という方が多くいます。今回、緊急事態宣言が延長されたことを受け、政府は、
▼ 6月末までとなっていた申請の期限を8月末までに延ばしました。

m210609_7.jpg

その上で、この制度で、上限まで借り切って、これ以上借りられない。でも、引き続きコロナの影響で生活が厳しいといった声が相次いでいることを受け、
▼ 新たに、返さなくてもよい「自立支援金」という制度を設けることにしたのです。

【新たな制度は、返さなくてもいいのですね】
はい。これ以上融資の枠を増やしても、借金の負担が重くなるだけだとして、今回は、返さなくてもいい給付金にしました。対象になるのは、
▼ 上限まで借り切った。あるいは、再貸付を断られた人で、さらに、
▼ 預貯金が100万円以下など、いくつかの条件があります。
対象になれば
▼ 単身世帯では、月6万円。3人以上の世帯は10万円。それぞれ3か月間、受け取ることができます。

m210609_11.jpg

【3人以上の世帯だと、あわせて30万円もらえるということですね】
はい。ただ、7月から8月末までの間に、自ら、自治体の窓口に申請する必要があります。問い合わせ先は、今は、無利子融資と同じ、国のフリーダイヤルです。今後、具体的な窓口などは、それぞれの自治体が決めることになっていますので、こまめに、自治体のホームページなどを見ていただければと思います。ただ、この支援金。課題も指摘されています。

【どのような課題ですか?】
条件が厳しすぎるという点です。つまり国から借金をしていないと対象にならない。これまで、預貯金を取り崩してがんばってきた。でも、底をつきそうだ。という人は、苦しくても、この支援金はもらえないことになります。

【それは厳しいですね】
条件を緩めて対象を拡大してほしいという声は上がっていて、今後の課題になると思います。
ただ「これまで借金はイヤで無利子融資の制度を利用してこなかった」という人にも、ひとつ、情報があります。去年の年収が、住民税非課税の水準であれば、緊急小口と最初の総合支援資金、あわせて最大80万円分は、「返さなくてもいい」ことがすでに決まっているということです。自分が非課税かどうかは、一般的にはこの6月以降、市町村で確認できます。確認して、もし、非課税で、コロナで、生活が厳しいという場合、あらかじめ「返さなくてもいい」とわかった上で、おカネを借りられる可能性があるということになります。

m210609_13.jpg

【つまり、これまで歯を食いしばって、国の無利子融資の制度を利用してこなかった方。新たな支援金はもらえないけれど、住民税非課税であれば、返さなくてもよいとわかった上で、国の無利子融資を借りられる道があるということですね。ただ、8月末までに申請しないといけない。これは、大事な情報ですね。事実上の支援金ということになりますね】
そう言ってもいいかもしれません。そういう制度になっているということです。
次に、2点目の家賃の支援を見てみたいと思います。

m210609_14.jpg

仕事を失ったり収入が減ったりして家賃が払えなくなった人に、自治体が一定額を上限に家賃を支給する制度です。支給が終わった人が、再び3か月支給を受けられる仕組みもあり、その再支給の申請期限が、6月末から9月末に延長されました。この間に、支給が終わってしまう。あるいは、いったんは収入が戻って支援の対象基準から外れたけれど、3度目の緊急事態宣言などで再び収入が減ったという方も対象になります。

m210609_18.jpg

はい。そして、支援策の3つ目。所得が少ない子育て世帯への支援です。

m210609_19.jpg

これは、3月に決定していた対策で、原則18歳未満の子どもを育てている低所得の世帯を対象に、子ども1人あたり5万円を支給するというものです。これも返す必要のないおカネです。

m210609_20.jpg

こうした現金の給付。これまでは、ひとり親世帯を対象にしてきましたが、今回は、両親がいる住民税非課税の世帯なども対象としました。

【対象が広がったのですね】
はい。今回、児童扶養手当を受け取っているひとり親世帯にはすでに多くの世帯におカネが振り込まれていて、
▼ 新たに対象となる両親がいる世帯のうち、今年4月分の児童手当を受け取る=中学生以下のこどもがいる世帯には、その口座に、これから振り込まれることになっています。自分から申請する必要はありません。一方、注意が必要なのは、
▼ 対象になるこどもが高校生だけという世帯。
▼ それから、これは、ひとり親世帯も含めてですが、ここ直近、コロナの影響で、収入が、低所得の水準まで急激に減ったという世帯。
こうした世帯も、給付を受けられますが、自ら申請することが必要になってきます。

m210609_26.jpg

【申請することが大事ですね】
はい。これは、権利ですので、ぜひ、対象の方は、申請していただきたいと思います。ここまでは、新たな支援策を見てきましたが、一方、当初の想定より、コロナの影響が長期化していることで、新たな課題も浮き上がってきています。
ひとつ目は、コロナの影響で借金が返せなくなった個人や個人事業主が、自己破産とは別の方法で、返済を免除、減額してもらえる制度です。金融機関の信用情報=いわゆるブラックリストに載ることがないなどのメリットがあって、12月に運用が始まって以降、利用する動きが進んでいます。ただ、対象は、去年10月30日までにコロナの影響で借りたローンなどに限られています。このため、この後にコロナの影響で借りたお金を返せなくなる人が増えるのではないか。対象の拡大を検討する必要があるという指摘が、専門の弁護士などから出ています。

m210609_31.jpg

そして、もうひとつの課題は、事態の長期化にあわせて、次々、対策を追加したり、修正したりした結果、支援策が非常に複雑になってしまったという点です。貧困に追い込まれる人は増えています。コロナの長期化、あるいはその先を見すえて、生活保護のあり方を含め、生活支援の仕組み全体を見直すべきだとの指摘もでています。

m210609_32.jpg

【確かに、これまで見てきた支援策も複雑ですね。どの支援策がつかえるのか、どこに相談したらいいか、迷う方も多いかもしれませんね】
改めて当面の、それぞれの問い合わせ窓口を見てみましょう。
また、今週土曜日には、労働組合や弁護士、NPOなどでつくる支援グループが、失業や生活の困窮、借金問題などの相談に応じる電話相談会も開かれます。

【電話番号は、0120-157-930ですね】
きっと何らかの解決方法は見つかるはずです。一人で悩みを抱え込むのではなく、こうしたぜひ、相談をしていただきたいと思います。

(今井 純子 解説委員)

キーワード

関連記事