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「歯と口の健康週間 歯ブラシによる事故を防ぐには」(みみより!くらし解説)【取材後記あり】

水野 倫之  解説委員

乳幼児にとって大切な生活習慣の歯磨き。身に着けさせようと頑張っている保護者の方多いと思うが、歯ブラシでけがをする事故が相次ぐ。
今週10日までは「歯と口の健康週間」、注意が呼びかけられている。
水野倫之解説委員の解説。

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歯ブラシが口の中に刺さって大けがをする事故が多発している。

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消費者庁によると、
6歳以下の子どもが歯磨き中に歯ブラシが口の中に刺さるなどの事故、毎年起きていて、
この5年間で120件報告。

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年齢別では最も多いのが1歳児で48件、次いで2歳児、3歳児と
多くが3歳までに起きていることがわかる。

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日本小児科学会に寄せられた3歳児の事故の画像をみると
喉の奥に歯ブラシの先端がおよそ1.5㎝刺さっていたことがわかり、
7日間の入院を余儀なくされた。

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また日本小児歯科学会に寄せられたいずれも4歳児の事故事例をみると、
歯ブラシが奥歯のさらに奧に突き刺さり、穴が空いてしまっているのがわかる。大学病院に移され縫合措置を受けたということ。
そしてもう一つは歯ブラシが刺さりほっぺたの脂肪分が露出。
ただ切除するには至らず縫合措置が行われたということ。

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事故の原因で最も多いのは転倒によるもの。
▽歯ブラシをくわえたまま廊下を歩いていて転んだり、
▽歯磨きしながらベッドの上で飛び跳ねていて転倒、
▽歯磨き中にきょうだいでじゃれあっていて転んで喉に刺さるといった事例が
報告。
▽また歯ブラシをくわえたまま母親の背中に勢いよく抱きついてぶつかった拍子に刺さった
という事故も。

子どもは大人が予想できない行動すること多い。
ソファーから床に転落して刺さる事故も。

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消費者庁によると事故のほとんどは保護者が目を離した隙に起きていて、
死亡事故の報告はないが、全体の3分の2は通院や入院が必要な事故だった。
先端に丸みがある歯ブラシがなぜ刺さるのか。
産業技術総合研究所が分析した様子を見ると、
乳幼児はからだのわりに頭が重く、重心が高いため
平らな床でもよく転ぶ。
歯ブラシをくわえたまま転ぶとどうなるのか。
1歳児の頭の重さに相当するおもりに歯ブラシをつけ、
転んだことを想定して12センチの高さから、子どもの口の中にみたてた鶏肉に落下させると
肉に穴があく。先端にかかった力は最大で27.5キロ。
瞬間的に一点に大きな力がかかるため丸みのある形状でも口の中に刺さる。

ただ歯科医師らによると、
こうした重症事故の危険性を知らない保護者もまだ一定数いるということ。
そこで歯科医院の中には歯ブラシによる事故についての注意喚起に
力を入れているところがある。
東京都内の歯科医院を取材。待合室には事故への注意を呼びかけるポスターが貼ってある。
院長の浜野美幸医師は日本小児歯科学会が認定する乳幼児の歯科の専門医で、
医院には乳幼児が多く検診に訪れる。みがき残しや虫歯がないかどうかをチェックし歯ブラシの使い方などを教えるのと同時に、
歯ブラシによる事故がたくさん起きていることを必ず話題にし、
幼児の場合は子どもにも話しかけるように。
ただ1歳や2歳の子に伝えるのは難しく、
事故を防ぐにはやはり保護者に危険性を理解してもらうことが重要。この日はおかあさんに事故の発生状況を丁寧に伝えていた。
浜野医師は
「保護者の方には歯磨きを見守っていただきたいが事故は0.5秒というほんの一瞬で起きるので、歯磨き自体を安定したところに座ってなさっていただきたい。
事故の対策がなされている歯ブラシもある。
歯磨きはお子さんとおかあさんのスキンシップの時間でもあるので、声かけしてもらえるといい経験になる。」と話す。
今回のみみより情報、
あらためて事故を防ぐポイント。

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▽まず歯みがきは乳幼児一人でやらせず、保護者が見守りのもとで行うように。

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▽危険を減らすため立った状態ではなく座った状態で磨かせる。

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▽そして立ってしまうようであれば歯ブラシを取り上げて
歯磨きはそこで終了。
事故を防ぐ対策を取った歯ブラシには持ち手がリング状になっているものや、つばがついているもの、さらには柄の部分が柔らかい素材でできていて
力が加わると先端が曲がるものなどが市販されている。
持ち手がリング状になっていれば口元で止まって喉の奥には届かない。つばがついたものも同じような効果。柔らかい素材でできているものは力が加わると先端が曲がる。
浜野医師によると保護者が見守り座らせることに加えて、
こうした歯ブラシを使うことで事故のリスクをかなり抑えることができるということ。
ただ、リング状になったものなどは奧の歯には届きにくいこともあるので、歯磨きの最後の仕上げはやはり保護者の方がしてあげて、親子のスキンシップ深めてほしい。

(水野 倫之 解説委員)


●取材後記
今回、歯と口の健康週間を前に消費者庁が注意を呼びかけましたが、
きくと過去にも注意が呼び掛けられていました。それなのになぜ事故が
減らないのか。事故の多くは3歳以下で起きていますが、乳幼児の親も
世代変わりしているので現役の乳幼児の親に危険性が伝わっていない
可能性があるとのことでした。これはこの健康週間にあわせて解説した
ほうがいいと考え、都内の歯科医院などに協力していただきました。
歯磨きは親子のスキンシップを深める機会にもなるということで、
乳幼児の保護者の大変さとともにその役割の大きさがよくわかる取材と
なりました。

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