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「コロナで進む少子化 子育て支援に配慮を」(みみより!くらし解説)

米原 達生  解説委員

新型コロナウイルスの感染拡大の裏で、少子化が進行しています。子育ての家庭で何が起きているか、ひも解きます。

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■進む少子化
Q。
コロナの影響で少子化が加速しているというニュースを耳にしますね。
A。
ことし1月から3月までに生まれた子供の数は、19万3000人で去年の同じ時期よりもおよそ2万人、率にして9%あまり下回りました。特に1月の出生数の落ち込みが大きくて、子供が生まれるまで10か月と考えると、去年春に妊娠を控える人が多かったとみられます。

Q。
ちょうど1回目の緊急事態宣言が出されていた時期ですね。
A。
そうです。こちら、妊娠届出数といって、おおむね妊娠3か月まで届け出られる妊娠届を集計したものなのですが、ことし1月までの数字が5月末に発表されました。

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これを見ると、去年5月は、前の年から2割近く減って、8月ころまで低い水準が続きました。その後回復傾向にありましたが、期間のトータルとして戻っているとは言えない状況です。出生数はおととし初めて90万人を割り込んで86万ショックともいわれましたが、ことしの出生数が戦後初めて80万人を割り込むという民間の推計も出ています。

では、どんな人が妊娠を先送りしたのか、この時期のことを調べた調査の一つをご紹介したいと思います。

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こちらは中京大学などが、こどもがいる男女に行った調査です。もう一人子どもを持つ予定だった人がこの黒い帯で、このうち次の子どもを持つ時期を考え直したかきいたところ、男女ともに3割ほどが持つ時期を変更した、つまり先送りしたと回答しました。ではどういう人が先送りしたか分析をすると、まず男性だと、所得の低い人で先送りする傾向が出たということです。

Q。
お金の問題ですか。
A。
経済的な問題はいつも希望の数の子供を持つかどうかを決める大きな要素ですが、感染拡大で経済の先の見通しが不透明になり、教育費が心配になるということもあると思います。

一方で、女性は同じように経済的な問題に加えて、妊娠中の感染の不安も大きな要因と指摘されることが多いんですが、この調査で目立ったのは専業主婦の人たちです。

Q。
専業主婦ですか?
A。
はい。調査を行った松田教授は、子育ての孤立が背景にあるのではないかと分析しています。もともと専業主婦には子育て支援が薄いですし、当時は外出自粛が呼び掛けられていて、外でほかの親子と交流することも難しかったんです。この孤立について語るうえで、もう一つ別の調査をご紹介したいと思います。

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上の図は横浜市港北区と子育て支援団体が行った調査です。コロナでなかなか行き来が出来なかったのを反映して、里帰り出産も、出産後の親族の手伝いも減っているんです。そして生まれる前の両親教室の利用も減っていました。調査を行った団体は「感染拡大で、出産後、幼稚園に入るまでの家庭の孤立が表面化している」と話しています。

■緊急事態宣言で分かれる対応
Q。
親の支援が望めない、となると、ほかの支援がより大切だと思いますが、行政の子育て支援はどうなっているんですか?
A。
今、緊急事態宣言が出ている地域でも対応が分かれています。

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例えば乳幼児がいる親のために全国にある地域子育て支援拠点では、主に、親子の交流の場の提供や、地域の子育て情報の提供、両親学級といった講習、そして子育て相談を行っています。
上の3つは主に来館を前提としているので、人数や催しを制限しながら続けているところもありますが、大阪市や福岡市、札幌市などは、基本的に閉鎖しています。人の動き自体を抑制することが求められているからだということで、児童館なども同じような対応になっています。
ただ、子育ての悩みについての「相談」は、どの自治体も電話などでどこも継続しています。ふらっと入って相談することはできないのですが、スタッフは出勤しているので、悩んでいる方はぜひ利用してもらいたいと思います。

Q。
私も一人目が生まれたときに、こういうところで開かれる母親教室で地域の人と知り合って、そのあと本当に助かったので、そういう機会が失われることの大きさはよくわかります。
自治体の判断はどうして分かれたんでしょうか。
A。
判断に迷ったという自治体は多いです。というのも住民からは両方の声が寄せられているんです。

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利用している親からは「行くところがない、相談する場がない」という切実な声が出ています。
一方で、住民の一部からは、「みんなが感染防止のために自粛しているのに、子どもが集まる遊びは「不要不急」なのではないか」という声もあるそうなんです。

Q。
でも、遊びは幼児期の子どもの発達にとって欠かせませんよね。
A。
その通りです。感染症が専門で新型コロナ対策の政府の分科会のメンバーであり、また小児科医でもある岡部信彦さんに聞きました。新たな変異ウイルスが広がれば別だ、としたうえで、「現時点では感染の中心は大人であり子どもが集団で感染するリスクは限定的だ。従来の活動をそのままというわけにはいかないが、子どもの発達とのバランスを考えて大人が感染に気を付けて工夫しながら、ある程度のリスクを許容していくことが必要だ」と話しています。

■つながり続ける取り組みに“暖かいまなざし”を
Q。
従来の活動そのままでなくて、バランスを取りながらやっていくということですね。
とすれば、現場ではどのような工夫が必要でしょうか?
A。
最初の選択肢はオンラインで、ということになりますが、集まる場所でもいろんな工夫が行われています。

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東京・目黒区の児童館を訪ねると、「距離を取る」とか「道具を共有しない」といった4点を意識して30種類もの遊びを考えました。例えば、キャップチャレンジという遊びは、もともと片手の甲にペットボトルのキャップを乗せて、それを取り合うという遊びだったんですが、接触が避けられないということで、手の甲にキャップを乗せたまま、スタッフに習ってジャンプしたりポーズを取ったりして、最後までキャップを落とさなかった子どもの勝ちというゲームにしたんだそうです。

Q。
でもマスクを外さないというと、一緒におやつなんかは食べられないですよね。
A。
そうですね。その影響を大きく受けているのは子ども食堂です。
子ども食堂は貧困の子どもだけでなくて、今や親子と地域をつなぐ交流拠点にもなっているんですが、一緒にご飯を食べるということが難しくなっています。ある調査では、半数以上は、御飯を食べるのではなく食材の配布に切り替えているそうです。また、遊ぶときは糸電話でソーシャルディスタンスを取ったり、感染リスクが比較的低い屋外で遊んで、最後にお弁当を配布したりしている子ども食堂もあります。
それでも、子どもを集めることについての苦情は相次いで寄せられるそうです。
考えないといけないのは、感染対策も大事なのですが、つながりを保とうとするこうした活動が、居場所を見つけにくい子どもや親子にとっては欠かせないということです。

Q。
今回コロナで深刻になっていますが、こうした孤立をどう支えるかは、もともと問題でしたよね。
A。
その通りです。子どもや親子にどう居場所を作るかは、子どもたちの将来、ひいては少子化にも関わることですから、コロナであっても「つながろうとする努力」に温かいまなざしを送っていただきたいと思います。

(米原 達生 解説委員)

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