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「今どうなっている? テレワーク」(みみより!くらし解説)

今井 純子  解説委員

緊急事態宣言が延長されている中、テレワークは、今どうなっているのか。今井解説委員に聞きます。

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【電車の中は、結構混んでいます。テレワークは広がっていないのでしょうか?】
コロナの感染拡大前よりは、定着してきているのですが・・
▼ 働いている人への調査をみると・・1年前。最初の緊急事態宣言の時には、30%を超える人がテレワークをしていましたが、今年の4月は20%を切っています。
▼ また、別の調査ですが、テレワークをしている頻度について、
1年前は、ほぼ毎日という人が25%いましたが、今年の4月は12%まで減り、一方、週1日とか、それ以下の人が大幅に増えています。全国的に、テレワークをしている人も、その頻度も減っているというのです。

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【なぜ、テレワークの利用が減っているのでしょうか?】
企業が置かれている状況が1年前とは違っています。
▼ 1年前は、全国で多くの施設が営業を自粛しました。学校も休みになりました。どうしても必要な業務を除いて、出社を禁止した企業もありました。事実上の自宅待機を求められ、テレワークをせざるをない状況になった方も多かったと思います。
▼ 一方、今回、営業自粛などの対象は、1年前よりは絞られています。また、職場でも、席の間隔をあけたり、仕切り版をつけたりと、感染対策がとられてはきています。マスクや消毒などの対策をとりながら働けばリスクを減らせると考える人も増えています。

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【確かに感染対策がとられてはきていますよね】
このため、企業の間でも、準備が整わないまま緊急避難的にテレワーク導入に踏み切った1年前とは違って、今回、職種や企業の規模によって、テレワークが難しい仕事で無理はしない、という姿勢が見られます。

【テレワークが難しい。どのような仕事ですか?】
まずは、職種。テレワークの実施率の内訳をみると、
▼ 企画・マーケティングやIT系の技術職などで、テレワークをしている人が多い。
▼ 一方、開発・研究とか営業。さらに、工場や介護といった仕事では、テレワークが進んでいないということがわかります。
また、企業の規模。
▼ 1万人以上の大企業では45%の人がテレワークをしていますが、
▼ 規模が小さくなるほど、低い割合になっています。
1年前は、営業や工場、それに中小企業でも、仕事をとめたというところもありましたが、今回、そこまでして無理にテレワークはしないという考えなのです。

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【現場で働いている方。そして、中小企業の方。テレワークができないという大変な方は、大勢いらっしゃいますよね】
その通りです。ただ、特に大企業の中からは「テレワークがしにくい」とされてきた仕事についても、取り組みを進める動きが始まっています。
▼ 例えば、研究部門。電子回路基板などを自宅に持ち帰ることを認めたり、実験装置に遠くから監視や停止ができる機能をつけて自宅で作業できるようにしたり
▼ 営業でも、オンラインのセミナーや商談を積極的に行うことで、新しい顧客の開拓を含めて、多くの商談をしている企業もあります。必要に応じて、技術者や責任者も臨機応変に参加できるようになり、効率が上がったといいます。
▼ また、工場でも、生産ラインのデジタル化やロボット化を進めた上で、自宅から生産工程の監視などを行ったり
▼ 個人情報を扱うコールセンターについても、自宅から社内のシステムにつなげることで、端末にはデータが残らない仕組みをつくってテレワークを進めている企業もでてきています。

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【投資をしながら地道にテレワークを広げようとしているのですね】
はい。というのも、テレワークのメリットがこの間、見えてきたからです。
働く側からは、「感染リスクを減らせる」ということはもちろんですが、「通勤の時間やストレスを減らせる」「育児や介護と両立しやすい」といった声があがっています。テレワークをしている人に「コロナの終息後もテレワークを続けたいか」を尋ねたところ、「続けたい」「やや続けたい」と答えた人が、80%近くに達したという調査結果もあります。去年の4月時点では、50%あまりでしたので、大幅に増えています。テレワークに慣れるにつれてメリットを実感する人が増えているのだと思います。

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【周りでもテレワークをしたいという人は多いです】
このテレワーク。企業からみても、オフィスの面積を縮小したり、出張費を減らしたりすることでコストを削減できる。加えて、テレワークを希望する優秀な人材を採用したり、介護や家族の転勤で社員が辞めるのを防いたり、といったメリットが期待できます。離れた場所からでも働けるということで、一歩取り組みを進めて、社員が望まない転勤や単身赴任をなくそうという企業もでてきています。

【働き方の選択肢が広がりますね】
広がりますね。ただ、課題も多く指摘されています。
▼ 働く側からは、「通信環境の整備」「情報セキュリティ対策」など。以前より改善されていますが、まだ多くの人がこうした点を課題としてあげています。「上司や同僚とうまくコミュニケーションできない」という指摘もあります。ほかに、「プライベートとの区別がつかない」とか、「孤独感を感じる」といった声も上がっています。
▼ 一方、管理する企業の側からも、「かくれ残業が増えているのではないか」「人事評価が難しい」「生産性が下がっているのではないか」といった懸念の声。そして、社内のコミュニケーションについても、「同じ空間で話し合う方が、社内のやりがいや連帯感を高めるのではないか」「直接顔を合わせての雑談から新しいアイデアが湧いてくることがある」といったオフィスの良さを指摘する声もあがっています。

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【確かに、顔をあわせる良さもありますよね】
このため、企業は、課題を解決し、出社とテレワークとの最適な組み合わせを模索しながらじっくり進めていきたいという考えです。長期的にみて、この考えは理解できます。ただ、今は、緊急事態宣言が出されています。職場での感染事例も報告されています。医療体制の崩壊や変異株の脅威も指摘されているだけに、今は、もう一段、取り組みを強化することが大事だと思います。

【できることはありますか?】
まず、大企業などで、すぐにできること。
「会社が消極的でテレワークを実施しにくい」という人が10%に達したという調査もあります。他にも「出社している人から不公平とみられる」「上司や同僚が出社している」といった理由で、テレワークがしづらいと言った声もあがっています。経営層が、改めて呼び掛けることで、テレワークを後押しすることはできると思います。

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そのうえで、もう一つ。

【なんでしょう?】
テレワークが進んでいない中小企業へ支援。これも大事です。環境を整える資金がない。デジタルのノウハウもないという企業に対して、政府や自治体は、テレワークに必要な機器の購入や運営費などを補助する様々な制度を設けています。また、ワンストップ相談窓口を開設したり、テレワークのためにホテルを利用した場合の補助を出したりしている自治体もあります。政府や自治体は、中小企業に寄り添って、成功例を示したりしながら、支援制度の利用を働きかけてほしいと思います。

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中小企業にとっても人材を確保したりデジタル化を進めたりすることにつながります。できるところからもう一段。企業は、テレワークを進めるよう取り組んでほしいと思います。

社員の命を守るためにも、ぜひ一歩進んでほしいですね。

(今井 純子 解説委員)

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