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「新型コロナ対策 国民の意識は」(みみより!くらし解説)

曽我 英弘  解説委員

5月のNHK世論調査がまとまった。政府は、東京、大阪、兵庫、京都の4都府県の緊急事態宣言を今月31日まで延長し、愛知県と福岡県を12日から対象地域に加える。一方で高齢者へのワクチン接種を7月末までに終えるよう取り組むとしている。一連の取り組みを国民がどう感じ、いま政治に何が問われているのだろうか。

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【世論調査のポイント】
今回の世論調査のポイントは、菅内閣の支持率が「支持する」が35%と発足以降最も低い結果となり、「支持しない」は43%に上った点だ。政府も新型コロナの対策を取ってはいるが、感染拡大が続く現状にこれまでにない批判や不満が上がっていることが背景にある。

【緊急事態宣言延長の効果】

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対策の柱のひとつの緊急事態宣言は「短期集中」ということだったが延長された。政府は、人流の抑制に一定の効果があったとみる一方で、医療体制は大阪や兵庫などで「破綻の危機」に直面している。また休業要請などの対象となった事業者からは、「このままではつぶれる」という悲鳴も上がっていた。
こうした中政府は愛知、福岡を追加して7月末まで宣言を延長した。そこで延長は感染の拡大防止にどの程度効果があると思うか聞いたところ、「大いに」または「ある程度ある」は56%、「あまり」または「まったくない」は39%だった。
延長にあたって政府の方針に修正や変更もあった。感染対策の追加として飲食店は、酒やカラオケを提供する店に加えて、酒の持ち込みを認めている店にも新たに休業を要請し、集団での「路上飲み」「公園飲み」を自粛するよう強く要請している。

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一方で緩和としてこれまで休業が要請されていた大型商業施設は午後8時まで営業を認め、大規模イベントも原則として無観客から上限5000人または定員の50%以下のいずれか少ない方に変更となった。ただ東京や大阪では知事の判断で百貨店などへの休業要請が続いている。今回の決定を臨機応変とみるか、チグハグで中途半端とみるか。その人が置かれている状況で見方は分かれるのだろう。

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ただ国民には「疲れ」や「慣れ」、「飽き」もあり、そうしたことが対策の効果に影響しているとの指摘もある。それだけに、どこまで感染を抑え込めば解除するのか、対策の効果はどの程度なのか、途中段階でも繰り返し説明しないと国民も頑張りようがないのではないか。

【ワクチン接種 進捗の評価/政府対応の評価/内閣支持率】

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現状を打開するため、政府が頼みにしているのがワクチン接種だ。菅総理大臣は7月末を念頭に65歳以上の高齢者へのワクチン接種を完了できるよう取り組む考えを示している。
そこで、接種の進み具合をどう思うか聞いたところ、「順調だ」は9%、「遅い」は82%だった。
政府は今後1日100万回のワクチン接種を目指しているが、1回目の接種を受けた高齢者は1%にも満たず、2回の接種を完了した医療従事者も24%ほどにとどまっている(5月7日時点)。現場を担う自治体からは必要な会場や人の確保の遅れから政府目標の7月末以降にずれ込むことは避けられないという声も漏れる。

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こうしたことから政府の新型コロナへの対応を「大いに」または「ある程度評価する」と答えた人は、4月より11ポイント下がって33%、「あまり」または「まったく評価しない」は10ポイント上がって63%だった。

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また5月の菅内閣の支持率は、「支持する」は4月より9ポイント下がって35%、「支持しない」は5ポイント上がって43%だった。
不支持が支持を上回ったのはことし2月以来3か月ぶりで、安倍内閣の最終支持率と同じ水準にある。

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以上の通り内閣支持率のグラフに政府対応の評価を重ねると、2つは連動して推移する傾向にあることがわかる。
菅政権は今、かつてなく厳しい局面に立たされているといえそうだ。

【処理水の海洋放出の賛否】
私たちに身近でかつ、将来を左右する重要な方針が相次いで決定されている。それが気候変動対策、そして原発の廃炉の問題だ。このうち廃炉に向けた当面の最大の課題が、東京電力福島第1原発の放射性物質のトリチウムを含む処理水の取り扱いで、原発敷地内でタンクに貯蔵する今のやり方は2022年秋に限界を迎えるとされる。これを受けて政府は国の基準を下回る程度に薄めたうえで、海に放出する方針を決めた。

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そこでこの決定について聞いたところ、「賛成」は29%、「反対」は22%、「どちらともいえない」は43%だった。「どちらともいえない」が最も多いのは、それだけ難しい問題だということだろう。
政府は2年後をめどに海に放出する方針で、トリチウムの濃度を原発の排出基準の40分の1以下に海水で薄め、海水中の濃度を監視するとしている。ただ福島県沖では水揚げを事故前の水準へ徐々に増やしていくための操業が4月に始まったばかりで、新たな風評被害への強い不安を感じるのは当然だ。
政府は特に海外への情報発信に努め、地元にも丁寧に説明する必要がある。

【憲法改正論議を進めるべきか】
国会では憲法改正をめぐる法案の審議が進んでいる。憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案が衆議院憲法審査会で可決され、今国会で成立する見込みだ。

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そこで憲法改正に向けた議論について聞いたところ「進めるべき」は54%、「進める必要はない」は27%だった。
ただこれで憲法改正に向けた動きが進むのかは不透明だ。というのも修正のうえ可決された改正案には資金力によって結果が左右されないよう、広告規制を「3年を目途に法制上の措置を講じる」という文言がある。これについて立憲民主党が広告規制を優先すべきだとしているのに対し、自民党は改憲論議が制約されることはないと解釈が食い違っている状態だ。

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ことしの衆院選挙に向け改憲・護憲それぞれの立場から成果を示そうというのはやむを得ない面もあるが、個人の自由に制約も多い今だからこそ憲法の中身の議論を活発にしてほしい。

【政党支持率/感染、変異ウイルスの不安/東京オリンピック・パラリンピック】

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5月の政党支持率で特徴的なのは、自民党が菅内閣になって最も低くなった一方、「特になし」は最も高い点だ。永田町では早期の衆院選は遠のいたとの観測が強まっているが、国民の心理は9割近くの人が自分や家族の感染や変異ウイルスの存在に不安を感じ、東京オリンピック・パラリンピックを「中止すべきだ」と答えた人も49%に上っている。今後の政治日程はコロナ次第でどう展開してもおかしくないだけに、与野党ともに気の抜けない局面が続きそうだ。

(曽我 英弘 解説委員)

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