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「コロナ禍の今注意したい頭痛と対処法」(みみより!くらし解説)

矢島 ゆき子  解説委員

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日本人の潜在患者数がおよそ4000万人、3人に1人が悩んでいて、時に日常生活に支障をきたすこともある頭痛。新型コロナウイルスの感染が広がる中、頭痛が悪化する⼈がいるようです。

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コロナ禍の今、どんな頭痛に注意が必要なのでしょうか?まず注意したいのが「新型コロナウイルス感染による頭痛」。新型コロナウイルスの初期症状で多いのは、せき・発熱ですが、頭痛も34%と多く、頭が痛くて、発熱していた場合は、感染した可能性もあるので注意が必要です。
また、コロナ禍による⽣活の変化、具体的にはマスクの着用が、片頭痛、緊張型頭痛、熱中症による頭痛に影響すると言われています。

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片頭痛は、患者はおよそ840万人、女性に多いといわれています。頭の片側あるいは両側が4~72時間、脈を打つようなズキンズキンというひどく痛みます。頭痛専門医の埼玉医科大学荒木信夫名誉教授にお話しを伺ったところ、「マスクの長時間着用で片頭痛の頻度が増えている患者がいる」ということです。もちろん片頭痛の原因は、すべてマスクのためとは限りません。

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どうしてマスクをすることで頭痛の頻度が増えるのでしょうか?息をするとき、マスクをつけたままだと自分が吐いた息を吸うことになり、結果的に二酸化炭素を多く含んだ空気を吸うと考えられますが、二酸化炭素は脳の血管を拡張させるのです。すると一部の脳の血管を取り巻く神経が刺激され、頭痛につながります。

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また、片頭痛では、光・音などに過敏な人がいます。中には「感覚過敏」といって髪の毛を触っただけでもピリピリするという人も。わずかな刺激でも脳が「痛み」として判断してしまい、マスクのゴムひもが両耳にかかる部分が気になって、頭痛がおこる人もいるとのことです。

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このようなマスクが関係している片頭痛対処法としては、例えば、今、マスクを着けないで出かけるのは、感染防止の観点からも難しいのですが、人のいない場所で換気のよい、感染の心配のない場所でマスクをできるだけ外すことが考えられます。また、ウイルスの感染予防効果は下がりますが、自分でゴムの長さ・強さを調整できるようなマスクを使うこともあるかもしれません。ただ気をつけなければならないのが、個人差がありますが、マスクを外してリラックスすると片頭痛が起こる人もいるそうです。どうしてこうなるかはわかっていませんが、脳の中の様々な脳内物質がうまく働かなくなっているためではないかと言われています。
ただ、「みみより情報」としては、4月26日から片頭痛の新たな予防薬・ガルカネズマブ(商品名エムガルティ皮下注)が使えるようになりました。この薬を皮下注射すると、脳の血管を拡張しようとする脳内物質の働きが阻害され、片頭痛が予防できるということです。値段は、1瓶、3割負担で13500円。これまでも片頭痛の予防薬はいくつかあったが、それらが効かない場合、1か月ごとに皮下注射して使うことで頭痛の軽減効果が期待されています。(最初の1か月は2瓶。その後は1瓶ずつ注射するそうです。)ただし、医師ならだれでも処方できるわけではなく、処方にも条件があるので、まずは主治医に相談してみてください。

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マスクが影響しているのは片頭痛だけではありません。「頭全体が締めつけられるように痛む」緊張型頭痛というタイプの原因になることも。マスクのゴムひもを両耳にかけ続けると、徐々にこめかみの筋肉やあご、頭蓋骨にくっついた首の筋肉に負担がかかるためです。ただ緊張型頭痛に影響するのはマスクだけでないとのこと。東邦大学医療センターの小山教授によると「新年度、新しい職場での仕事が始まったこと、さらに新型コロナウイルスによる、これらの不安・ストレスの増加も影響している」とのこと。さらに同じ姿勢でパソコンなどを⻑時間使い続けると、首の筋肉などがこって緊張型頭痛が起こりやすくなります。また在宅勤務はオフィスに出勤することに⽐べて、オンオフの切り替えが難しいのでストレスが影響しているかもしれません。

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このような緊張型頭痛の対処法としては、例えば、感染の心配のない場所でマスクをできるだけはずすこと。正しい姿勢を⼼がけ、こまめに休憩をとる。適度な運動や睡眠をしっかりとって体も心もリラックスすることも大切です。
頭痛専門医の荒木名誉教授のお勧めは、頭痛体操。例えば、腕をふる体操。そして肩まわし体操があります。
腕ふり体操は、肘をまげて両腕を水平にあげ、頭を動かさずに体を左右にひねります。1分ほど続けてみましょう。
そして肩まわし体操。肘をまげ、鎖骨の高さぐらいまであげて、両肩を後ろから前へリュックを背負うように大きくまわし、また逆に前から後ろへ、上着をぬぐように、交互に10回ほど繰り返えします。これは頭痛を予防するためにもいいそうです。

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そして、明日から5月。これから気温があがりはじめる季節に気をつけたいのが熱中症による頭痛。マスクの着用で体の負担が増すと、熱中症のリスクは高まります。熱い時は、こまめな水分補給などが大切です。

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最後に、コロナ禍の今、注意したい頭痛として、命に関わる可能性のある頭痛があります。例えば、突然、バットで殴られたような激しい頭痛が生じた場合は、脳卒中の一つ、くも膜下出血の可能性があるのです。脳卒中が専門の京都大学医学部附属病院の宮本病院長にお話しを伺ったところ、「新型コロナウイルスの対応で医療がひっ迫し、救急車が出払っていて、脳卒中などの通常の救急の受け入れ制限をしている地域もあるそうです。だからこそ、しゅん巡しないで、一刻も早く救急車を呼ぶことが必要だ」とのことでした。

コロナ禍の今、是非、新型コロナウイルスに感染しないように、感染しても人に広めないようにし、そして、頭痛という、体が発するサインにも耳をすまし、適切に対処しながら、健康な日々を重ねていけたら、と思います。

(矢島 ゆき子 解説委員)

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