NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「狙われる18歳 消費者被害を防げ」(みみより!くらし解説)

今井 純子  解説委員

きょうは「狙われる18歳 消費者被害を防げ」というタイトルで、今井純子解説委員です。

k210414_001.jpg

【狙われる18歳。どういうことですか?】
成人。つまり、大人になる年齢は、今、20歳ですが、来年4月から18歳に引き下げられます。

k210414_002.jpg

そのとたんに、新たに成人になる18歳、19歳の若者が、悪質な事業者に狙われるのではないかと、懸念されているのです。

【なぜ、新たな成人が狙われるのですか?】
未成年に認められていた「契約を取り消す権利」がなくなるからです。

k210414_005.jpg

【契約を取り消す権利。どのような内容ですか?】
未成年の人は、契約を結ぶ=例えば、スマートフォンを買ったり、ローンの契約を結んだりする場合、原則、親などの同意が必要になっています。そして、もし、同意がなく契約をしてしまった場合、未成年だという理由だけで、契約を取り消すことができる権利が民法で定められているのです。まだ判断力が十分ではなく、自分に不利な契約をする恐れがあるという考えからです。
それが、成人になると、親などの同意がなくても、自由に契約することができるようになる。その代わりに、原則、後から取り消すことができなくなってしまうのです。

k210414_010.jpg

【大人としての責任がでてくるということですね】
はい。自分の判断で契約を結んだ以上、守らなくてはいけないということなのですが、成人。今は、20歳。になったとたんに、トラブルに巻き込まれる人が増えているのです。

【来年になったら18歳で増えるかもしれないということですね。どのようなトラブルですか?】
典型的な例は・・

(デート商法)
▼ SNSで知り合った女性と、何度かデートをした後、女性の勤め先だという宝石店で、アクセサリーを買うよう勧誘を受けた。「買ってくれなければもうデートはできない」と言われ、買ってしまったが、その後、その女性と連絡がとれなくなってしまった。

(不安をあおる商法)
▼ 進路に悩んでいた時に、インターネットで芸能事務所のオーディション案内を見つけ、応募したら合格したという連絡があった。だけど、「今のままだとダメで、30万円かけて芸能スクールに通う必要がある。今、このチャンスしかない!」と言われ、契約してしまった。

(マルチ商法)
▼ 大学の先輩から、「投資で儲かっている人から話を聞かないか」と誘われ、話を聞いたところ、「今、投資をすれば、この先、楽に暮らすことができる」として、投資用の教材を買うよう勧められた。おカネがなかったが、ローンを借りるよう言われ、50万円で買ってしまった。

(エステなど美容関連)
▼ 「初回、お試し」というネットの広告を見て脱毛のエステに行ったところ、効果を出すには20万円の全身脱毛のコースが必要と勧誘を受け、契約してしまった。
こうしたトラブルです。

k210414_015.jpg

国民生活センターによると、20歳からの相談件数は、19歳からの相談件数と比べて、1.7倍。ローンやクレジットの契約を組ませることで、被害額の平均も、およそ17万円から30万円に膨れ上がるといいます。悪質な事業者ほど、取り消し権がなくなる成人になるのを待って勧誘しているのです。これまでは、それが20歳でしたが、来年4月以降は、18歳になったとたんに狙われる心配がでてきます。

k210414_020.jpg

【18歳というと、高校3年生や大学1年生ですよね。成人になると言われても、急に判断力がつくわけではない。心配ですね】
はい。多くの自治体では、成人式は20歳と、これまで通りになる見通しです。それだけに、「成人としての責任」について自覚のないまま、被害に巻き込まれ、借金まで背負わされる18歳が増えるのではないか心配です。

【被害を防ぐために対策はとられていないのですか?】
政府も対策をとってはいます。
まず、成人になっても契約を取り消せる範囲を広げるための法改正です。先ほど紹介した被害のうち
▼ 恋愛感情につけこむ「デート商法」や
▼ タレントになりたいとか就職したいといった願いの実現に向け、不安をあおって勧誘をする商法については、年齢にかかわらず契約を取り消せるよう、法律が改正され、施行されています。

【こうした被害は、成人でも取り消しができるのですね】
ただ、「未成年だ」というだけで取り消しができたのと比べると、取り消しをするには、事業者の側が「恋愛感情につけこんでいた」とか「不安をあおる発言をした」といった要件が必要となり、その点をめぐって争いになり、簡単に取り消しに応じてくれない心配が残ります。
一方、マルチやエステの被害のような手口も含め、広く使える規定については、まだ、対応ができていません。国会では、成人年齢の引き下げまでに必要な法整備を検討するよう求めた付帯決議が採択され、政府で検討が行われていますが、来年4月には間に合わない見通しです。

【それは、心配ですね】
そうですね。特に、マルチ商法については、若者を中心に、毎年およそ1万件のトラブル相談があり、日弁連などからは、22歳以下との取り引きを禁止するよう求める意見も出ています。ぜひ、被害を防ぐ対策の検討を急いでほしいと思います。

k210414_026.jpg

【法律以外には、どのような対策がとられているのですか?】
2点挙げたいと思います。
1点目は、若者に安易におカネを貸せないようにする対策です。
▼ 金融機関の中には、今後、新たに成人になる18歳、19歳との契約にあたって、融資の上限を通常より引き下げたり、少ない金額でも、きちんと年収があると証明する書類を出すよう求めたりといった、対応を決めたところもでてきています。が、あくまでも自主的で、一部の取り組みにとどまっています。また、悪質な事業者がウソの申告をしておカネを借りるよう指南するケースもあります。被害の拡大を防ぐために、政府は、より多くの金融機関に対応を求めるとともに、悪質な事業者の摘発も強化してほしいと思います。

k210414_030.jpg

【法律以外の対策。2つ目は?】
高校生などへの消費者教育です。
▼ 政府は、高校で「契約がいかに重要か」「クーリングオフなど、消費者を保護するためにどのような仕組みがあるか」教える取り組みを進めていますが、地域や学校によってばらつきがある。まだ、十分ではないという指摘もあがっています。

【学校での教育は、ぜひ、徹底してほしいですね】
そうですよね。借金の怖さ。それから、困った時は身近な消費生活センターにつながる消費者ホットライン188に電話をする。といった知識も教えてほしいと思います。こうした教育を通じて、18歳で成人になるという責任と自覚をもってもらうことが、自分の身を守るためにも、とにかく大事だと思います。
そして、自ら学ぶということでは、法務省が、成人になった後、なにに注意をしなければいけないのかをマンガやクイズで学べる「大人への道しるべ」と題したウェブサイトを、先週、立ち上げました。こちらも参考になるのではないかと思います。

k210414_037.jpg

【私自身、契約についてあまり知りません。これなら家族で読んで一緒に学ぶこともできますね。親がこどもにきちんと教えることも大事ですね】
そうですね。成人年齢引き下げまで、あと1年しかありません。というか、1年を切っています。政府・自治体はSNSや街頭などあらゆる手段を使って情報を発信してほしいですし、家庭を含め、私たち、社会全体で18歳、19歳の若い人たちが、トラブルに巻き込まれることがないよう、全力で取り組んでいかなければいけないと思います。

(今井 純子 解説委員)

キーワード

関連記事