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「熊本地震から5年 命を守る大地震での避難」(みみより!くらし解説)

二宮 徹  解説委員

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2度の震度7を観測し、災害関連死を含め、276人が死亡した熊本地震から、来週で5年になります。
熊本地震を教訓にした大地震での避難について、災害担当の二宮解説委員が解説します。

<熊本地震の概要>

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熊本地震は、観測史上初めて震度7が2度観測された地震でした。5年前の4月14日夜に益城町で震度7、16日未明に益城町と西原村で震度7の揺れを観測しました。
地震の規模を示すマグニチュードは、6.5、7,3と、2度目の方が大きく、よくある「本震と余震」ではなく、1度目が「前震」、2度目が「本震」とされました。
その後も余震が多かったことが特徴でした。8月までの4か月半で、震度5弱以上の地震が24回にのぼり、住民は地震に怯える日々が続きました。

<激しい揺れを経験>
私は前震のあと、益城町に取材に入り、熊本市のホテルに泊まっていました。ホテルのある中央区は震度6強で、揺れの後、部屋の様子を撮影しました。

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ベッドでうとうとしていたら、突然、突き上げるように激しく揺れて、液晶テレビやポットが飛ぶように落ちました。閉じ込められないようにドアを開けなければと思いましたが、身を起こして、落ちてくるものがないか確認するのが精いっぱいでした。

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その後、「安全確認のため外に出て」との館内放送があり、急いで外に出ました。真っ暗で寒い中、駐車場で毛布が配られましたが、朝まで10回近く大きな余震がありました。そのたびに、すぐ近くの熊本城の方からゴロゴロ、ドスーンと大きな音が響きました。
夜が明けてから見ると、あちこちで石垣が崩れていました。熊本城も、本震で被害が大きくなりました。

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<連続する揺れの恐ろしさ>
大地震では、その後も続く地震を十分警戒しなければなりません。熊本地震のように最初の地震よりも大きく揺れることもあります。しかも、建物や地盤は、最初の揺れでダメージを受け、壊れやすく、崩れやすくなっています。

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こちらは前震の翌日、益城町で撮影しました。左側の離れの建物だけが倒れていて、奥の立派な母屋は被害がないように見えました。下は本震の11日後。母屋も倒壊していました。震度7を1回は耐えたけれど、その後の揺れで倒れてしまったのです。
静岡大学の牛山素行教授の調査によりますと、熊本地震で倒れた家の下敷きになるなど、地震の直接の影響で死亡した50人のうち、前震で死亡したのは9人、本震は41人です。そして、前震でいったんは避難したものの自宅に戻り、本震で死亡した人が少なくとも13人いたと見られるということです。
重要な教訓は、古い木造住宅などでは、大きな揺れの後は必ず避難するということです。

<応急危険度判定を待って帰宅を>
では、避難所から家に戻っていいか、いけないか、どうやって判断すればいいのでしょうか。一見無事に見えても倒れやすくなっているかもしれません。被災した建物や土地は、「応急危険度判定」という調査が行われます。

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専門の講習を受けた建築士が調べ、危険な場合は赤、要注意は黄色、使用可能なら調査済みを示す緑色の紙を貼っていきます。赤は、住むのはもちろん、立ち入ることも危険という意味です。この判定が、熊本地震では本震に間に合わず、その後もすべて終えるまで1カ月以上かかりました。
しかし、安全のためには、この判定が出るまで避難を続けてください。

<地震避難の課題>

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ただ、今は避難所でのコロナ感染を心配する人も多いと思います。益城町では最も多い時で人口の約半分およそ1万6000人が避難しました。避難所の体育館は、1か月近くたっても、廊下にまで人があふれていました。コロナ禍の今、このように過ごすことはできません。このため、多くの避難者を受け入れできて、しかも感染防止を徹底した避難所が必要です。

<コロナ対策徹底の避難所>
最近の地震でコロナ対策を徹底した避難所があります。一つのモデルケースになると思います。

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A)2月13日に震度6強の揺れを観測した福島県相馬市の避難所には、92人が避難しましたが、感染対策を徹底するため、検温や消毒に加え、世帯ごとにテントを用意。この日は2メートル間隔で35張のテントを並べました。それに、熱がある人が来た場合に備えて、医師や保健師、救急車を待機させ、抗原検査もできるようにしました。

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今、こうしたテントを導入する自治体が増えています。屋内用なので1万円前後からありますが、問題は設置するスペースと数です。相馬市は1000張を購入したそうですが、人口は3万6000人あまりです。スペースも数も足りないといいます。
これは大都市では、もっと深刻な問題です。これまでのおよそ3倍のスペースが必要とされているので、教室や他の施設、民間も含めてフル活用しなければなりません。

<コロナ禍の地震避難>
マンションに住んでいて、今まで避難したことはない人でも、大地震が起きたら避難することになるかもしれません。マンションでも大地震では停電や断水などで自宅での生活が厳しくなります。コロナ禍の避難や備えについて、誰もが真剣に考えておく必要があります。

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その際、最優先にするのは、命を守ることです。避難所はコロナが心配だからと、倒壊する危険がある家に留まってはいけません。
みみよりポイントは、避難所が混み合うのを避けるため、実家や親せきの家、車中避難など、避難所以外の「分散避難」ができないか、家族での話し合いや準備をしておくことです。
また、耐震性の高いマンションでも、断水や停電、トイレが使えない、食べ物がないなどの理由で避難所に行かなくて済むように、在宅避難できる備えをしてください。
水や食料、携帯トイレなどを最低3日、理想は2週間分、多めに買い置いた備蓄を、ふだんから消費しながら買い足す「ローリングストック」がおすすめです。

命を守るため、熊本地震の教訓をコロナ禍でも活かしてください。
まずは、安全に避難できるよう、揺れでケガをしないことが重要です。タンスや食器棚など、倒れそうな家具の固定、それに古い住宅では耐震診断や耐震補強を進めてほしいと思います。

(二宮 徹 解説委員)

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