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「災害時 SNSで情報をつかむには」(くらし☆解説)

三輪 誠司  解説委員

10年前の東日本大震災では多くの自治体が被災し、情報がほとんど入らなくなりました。このため、生活支援に関する情報を得るために、SNSで流れる口コミ情報を頼りにする人が多かったと思います。

これから、スマートフォンやSNSを始めるという人もいると思いますが、今は、災害時に情報をやり取りするための一般的なツールとなっています。

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自治体側の取り組みとしては、被災者にやさしい情報を、SNSを通じて発信するところが多くなっています。平成29年に内閣官房がまとめた報告書によると、934の自治体が災害用のSNSアカウントで情報提供できるようにしています。人口カバー率は81.5%となっています。

発信内容もわかりやすく工夫しています。内閣官房が、平成28年の熊本地震の後で被災地の自治体から聞き取りをしたところ、「今は入れる避難所はここ」とか、「今通れる道路はここ」という、被災地でどう行動すればいいかを具体的に知ることができる情報が好まれたということです。また、平成28年に発生した台風10号の際、北海道南富良野は、災害対策本部に張り出した手書きのメモを撮影し、そのままFacebookに投稿しました。SNSで、いち早く情報提供をしようと努力した取り組みの一つだと思います。

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このため、私たちも、自分の自治体の公式アカウントを登録しておくといいと思います。また、離れた地域に家族がいる場合は、その自治体のアカウントも、登録をお勧めします。ご高齢の家族の中には、SNSを利用していない人もいるかもしれませんので、代わりに情報収集をしてあげるつもりで、備えておくといいと思います。

次に、SNSの使い方としては、被災者が、みずからSOSを発信するという方法もあります。

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大きな災害が発生すると、自治体も消防も、被害の全体像を把握することが難しくなります。このため、被災者の方が、こんな被害が発生していますとか、このようなものが不足しているという書き込みをして、状況を伝えるというものです。実際、SNSの書き込みをきっかけに、救助や支援につながったケースもあります。

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自治体がこうした書き込みを生かせるようにする取り組みも進んでいます。東京・小金井市の情報通信研究機構などは、開発した、ツイッターの書き込みを分析し、浸水被害や暴風が発生しているなどと分類するシステムを開発しています。

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さらに、土砂崩れなどの発生場所も、SNSの書き込みから場所を推定し、地図に表示する機能もあります。

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また、人工知能が被災者に直接問い合わせるシステムも開発されています。無料通話アプリのLINEを利用するものですが、利用登録をしている人に対して、近くで何か起きていませんかなどと問い合わせてきます。例えば、火災が発生していますと書き込むと、場所はどこかとか、写真があるかなどと自動で聞いてきます。こうした情報は自治体側に送信される仕組みです。

ぜひ、迅速な救助活動に生かしてほしいと思います。

ただ、SNSならではの難しさもあります。それは、デマを見分けることが難しいことです。
この10年に起きた災害でも、様々なデマがありました。

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東日本大震災では、千葉県市原市で起きた製油所の火災に関連し、「有害物質が雨と一緒に降る」というツイートが拡散し、石油会社がそんなことは起きないと発表するなど、デマの打ち消しに追われました。熊本地震では「ショッピングセンターが火事」という写真付きの書き込みがありましたが、別の写真とうその情報でした。

意図的なデマでなくても、「その可能性があるかも」という書き込みが、事実であるかのように広がってしまうものもあります。しかし、SNS情報を頼りにする自治体が多くなっていますので、自治体や救助隊の活動を妨げてしまう危険性があります。

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災害時に利用するSNSの注意点をまとめます。

まず、自治体や報道機関など、確かな情報を出すアカウントを事前に登録しておくことです。これは、デマに振り回されないようにするための自衛策となります。

次に、自分が書き込む場合です。本当かどうかわからない、見ず知らずの人の書き込みを、転送することは避けてください。「本当なの?」とか「大変だ」などという感想も、やめたほうがいいです。それが積み重なると、デマであっても事実と誤解する人が出てくるかもしれないからです。発信する場合、災害時は、自分の目で見たり、聞いたりしたことだけを書き込むようにしてください。

SNSは、自分の気持ちや近況を気軽に発信できるのが魅力で、普段はそれでいいと思います。しかし、災害時に使い方を誤り、意図しなくてもデマを拡散させてしまうと、被災地をパニックに陥れたり、人の命を危険にさらしたりするおそれがあるツールになってしまいます。その危険性も十分に理解したうえで利用してほしいと思います。

(三輪 誠司 解説委員)

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