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「新型コロナ 官僚接待 国民の意識は」(くらし☆解説)

曽我 英弘  解説委員

3月のNHK世論調査がまとまった。東日本大震災の発生からまもなく10年となるが、1都3県では新型コロナウイルスの緊急事態宣言が延長される一方で、ワクチンの接種が医療従事者を対象に始まった。こうした取り組みを、国民はどう評価しているのだろうか。

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【震災10年 風化が進んだか】
東日本大震災の発生と東京電力福島第一原子力発電所の事故から、11日で丸10年ですが、もう10年という気もするし、まだ10年という感じもする。
震災について風化が進んでいるか思うか、そうは思わないか聞いたところ、およそ7割の人が「そう思う」、つまり風化が進んでいると答えた。被災地では震災後も、台風や豪雨災害、そして今のコロナ禍と困難が重なっていている。また福島第一原発で増え続ける放射性物質を含んだ処理水の処分をどうするかも待ったなしの課題だ。政府は責任をもって復興に取り組み、私たち一人一人も風化させない意識と継続的な支援に心がけることが必要だ。

【首都圏 宣言再延長の評価/感染や変異ウイルスへの不安】
新型コロナだが、政府の取り組みに動きもあった。その取り組みには、「攻め」と「守り」があったように思う。
「守り」は緊急事態宣言の延長だ。政府が宣言解除の目安としていた「新規感染者数が東京で500人以下」は達成されたものの、首都圏では感染者数の減少スピードが鈍化し、病床のひっ迫も十分に改善されたとは言えない現状で、首都圏の1都3県で3月21日まで宣言が延長された。そこで、この2週間の延長期間についてどう思うか聞いた。

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「適切だ」は39%、「短すぎる」は41%、「長すぎる」は5%、「宣言は解除すべきだった」は6%だった。2月に1か月延長した際に比べ、「適切だ」が減り、「短すぎる」がかなり増えている。今回の再延長について菅総理は「感染拡大を抑え込むと同時に、状況を慎重に見極めるために必要な期間だ」と述べていて、PCR検査の拡充や保健所の体制強化によって宣言解除を確実にしたいとしている。

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ただ、自分や家族が新型コロナに感染する不安や、変異ウイルスへの不安を「感じる」人がともに8割に上っていることに加え、感染者をどこまで減らせば解除されるのか、下げ止まったままの今の対策で大丈夫なのかという疑問や不安が根強くある。
こうしたことが2週間の延長では「短すぎる」と考える人が多い背景にあるのではないか。
一方で営業時間の短縮を迫られている飲食店の経営者などからは「もう限界だ」といった声も上がっている。3月、4月は言うまでもなく歓送迎会、花見シーズンだ。感染が拡大しては再び宣言を繰り返すようなことを避けるため、政府は解除後をにらんでこれまでの対策を引き続き徹底するよう丁寧に呼び掛けていくことも必要だ。また宣言の長期化で苦境に陥っている事業者などには、今年度の残りの予備費およそ2兆7000億円を活用し、支援を追加することも臨機応変に検討すべきではないだろうか。

【ワクチンを接種したいか】
「守り」の動きが宣言の再延長ならば、「攻め」はワクチン接種だ。新型コロナのワクチン接種が、2月中旬から国内で始まった。そこで、ワクチンを接種したいか、したくないか聞いた。

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「接種したい」は67%、「接種したくない」は21%だった。「接種したい」という人は先々月から徐々に増えている。

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政府のスケジュールでは、今行われている医療従事者への接種のあと、4月に高齢者に段階的に始まって以降、順次行われる予定だが、製造元のヨーロッパからどの程度のペースで供給されるかは不明な点も多い。このため実務を担う自治体からは「いつ、どれだけの量のワクチンが届くのか分からないと、いつまでも計画が固まらない」という声が上がっている。政府が国民や自治体に提供する情報の質と量が、接種を円滑に進めるうえでカギとなりそうだ。

【政府対応の評価/内閣支持率】

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政府の取り組みを国民はどう評価しているのだろうか。これまでの政府の対応を「評価する」と答えた人は48%、「評価しない」は47%と4か月ぶりに「評価する」が「評価しない」を上回った。これに伴い菅内閣の支持率は今月、「支持する」は2ポイント増えて40%に回復し、「支持しない」は7ポイント減って37%だった。支持が不支持を上回るのは、去年12月以来3か月ぶりだ。

【広報官辞任 菅総理の説明は十分か/官僚接待 行政はゆがめられたか】

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ただコロナ対策とは別に、政権にここにきて重くのしかかっている問題もある。それが総務省幹部らの接待問題だ。衛星放送関連会社に勤める菅総理の長男などから接待を受けていた山田内閣広報官が辞職した。そこで、これについての菅総理の説明は十分だと思うか、不十分だと思うか聞いた。「十分だ」は15%、「不十分だ」は65%だった。「不十分だ」が6割を超えている。  
さらに総務省だけでなく、農林水産省の幹部が公務員倫理法の倫理規程に違反する接待を受けていたことも明らかになっている。そこで、一連の接待で行政がゆがめられたと思うか、そうは思わないか聞いたところ、「ゆがめられたと思う」は56%、「ゆがめられたとは思わない」は24%となっている。「ゆがめられた(と思う)」が半数以上に上っている。与党支持層でも62%、「無党派層」では70%が総理の説明は「不十分」と答え、また与党支持層の54%、無党派層の59%が「行政がゆがめられた」と考えている
政府は真相を究明し、再発防止に努めるとしているのに対し、野党側は菅総理大臣、武田総務大臣らの任命責任や政治責任を問うとともに、接待を受けた幹部に対し偽証罪に問える「証人喚問」を行うことも含め追及していく構えだ。

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接待を受けた中には、政権の肝いり政策、携帯電話料金の値下げにも関わった幹部もおり、調査を徹底し国民の不信を解消することが、政府、国会の責務だ。

【今後の政治は】

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今後の政治はどうなるだろうか。
各党の3月の政党支持率で自民党は35.6%、立憲民主党は4.5%などとなった。

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今後のポイントとなるのが、3月から4月にかけて相次ぐ6つの選挙だ。国政レベルでは、4月25日に参議院長野選挙区の補欠選挙、広島選挙区の再選挙、そして衆議院北海道2区の補欠選挙が行われる。このうち広島と北海道は「政治とカネ」の問題で現職が辞職、長野は新型コロナに感染して死去したことに伴うものだ。菅政権発足後初の国政選挙であるだけに、ことしの衆議院の解散・総選挙を占う「前哨戦」とも位置づけられている。

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また地方では千葉、秋田、福岡の3県の知事選挙なども控えている。有権者の動向、とりわけ無党派層の投票行動が今後の政治の流れにも影響を与えそうだ。

(曽我 英弘 解説委員)

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