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雪にともなう製品事故に注意

水野 倫之  解説委員

この冬の大雪にともなって、家庭用の除雪機の事故や発電機や暖房器具による一酸化炭素中毒が相次いでおり、注意が呼び掛けられています。水野倫之解説委員の解説。

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雪国では必須のエンジン付きの家庭用の除雪機、毎年事故があり、製品評価技術機構によると報告があっただけでも昨年度までの10年で50件、19人が死亡。
さらにこの冬は大雪というところが多く、全国でこれまでに少なくとも7人が亡くなっている。
先月26日には新潟県で86歳の男性が除雪中に滑って転び、除雪機に巻き込まれて死亡。
そして先月14日には広島で80代の男性が死亡するなど、年配の方の事故が目立つが、製品機構によると今年は新型コロナの影響でふるさとへの帰省が控えられ、高齢の方が作業するケースが増えていることが影響しているのではないかということ。
ただ先月新潟県では、父親が作業中に9歳の男の子が巻き込まれて亡くなるいたましい事故も。
製品機構が過去の事故の原因を分析したところ、誤った使い方、特に安全装置を切ったまま使って事故にあうケースが多い。

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家庭用の除雪機は、積もった雪を本体前方の回転式の刃で砕いて集め、奥にある回転装置で雪を吸い込んで煙突のようなシューターから飛ばす仕組み。
回転部分が複数あって危険なためボタンで止まるなど複数の安全装置。
中でも重要なのがハンドルの両側についている安全装置で、使用者が手を離すと走行と刃の回転が停止。
使用者の手を離れたまま作動することを防ぐものだが、過去に長野県で70代の男性が除雪機の下敷きになって死亡した事故では、この装置がテープで固定されていた。
安全装置を固定すると手を離しても走行は止まらない。
また刃も回転したままで、巻き込まれたり下敷きになる危険性が高くなり大変危険。
除雪機の販売業者によると、短い時間で除雪したいと考える人がいるということ。
実はこの安全装置、事故が相次いだことから業界基準で2004年に取り付けが義務づけられたもので、それ以前の古い除雪機の中には手を離したままでも作動し続けるものあり。
こうした古い除雪機を使っていた人の中には、刃だけ回転させてそこに手作業で雪を入れて除雪したいと考える人がいるということで、安全装置を止めるケースがあると言う。

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またおととし新潟県で60歳代の男性がシュータに詰まった雪を取り除こうとしたところ右手を負傷。
エンジンを止めずに直接手を突っ込んで雪を除去したため、回転部分に触れてけがをしたとみられる。
除雪機を使う時の注意点。

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使うときは安全装置を絶対に切らない。
雪で滑って下敷きになるケースが多いことから、靴は滑りにくいものを。
雪を取り除くときは必ずエンジンを停止し、素手では行わず、付属の雪かき棒で。
さらに子供など周りに人がいないことにも注意。

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除雪機以外の製品でこの時期怖いのが停電などで使う携帯型発電機や暖房器具での一酸化炭素中毒。
この10年間にあわせて13人が死亡。
この冬も先月、暴風雪で6万戸が停電した秋田県の能代市の住宅で、60代の夫婦が死亡。当時、家の玄関にはガソリンを使う携帯発電機が作動した状態で置かれていたということで、屋内で使ったことで一酸化炭素中毒を起こした可能性。

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私たちの体では、肺で取り込まれた酸素が血液中のヘモグロビンと結合して全身へ。一酸化炭素はこのヘモグロビンと結合しやすく、濃度が高まると酸素がヘモグロビンに結合できなくなって行き渡らなくなり、最悪死に至る怖い中毒。
一酸化炭素はものが不完全燃焼すると発生しやすいが、無色・無臭ですぐに気づくことはできない。
先ほどの携帯発電機の排ガスには一酸化炭素が多く含まれる。
これを室内で使うとどうなるのか。
4畳半の部屋で1時間に空気の半分が入れ替わる換気をした状態で、携帯発電機を使って実験をすると▽1分半で空気中の濃度が300ppmに。
この濃度が長く続くと、頭痛や耳鳴りの症状。
▽4分半で600ppmに達し、長く続くと激しい頭痛や嘔吐の症状。
▽さらに6分で1100ppmを超え、続くと意識がもうろう。
▽8分で2000PPM 、呼吸も微弱になり、5000ppmを超えると死亡する危険高。
あっという間に濃度高くなるので大雪で停電したときに携帯発電機を使う場合は、絶対に屋内や倉庫など排ガスがこもりやすい場所では使ってはいけない。屋外で。

そして一酸化炭素中毒は身近な暖房器具でも。
過去にも窓を閉め切った状態で石油ストーブを使い一酸化炭素中毒で死亡した事故が多く起きているが、その再現映像を見ると、窓を閉め切っていると酸素が不足して不完全燃焼となり、一酸化炭素が発生しやすい状況となることがわかる。
一酸化炭素は石油だけでなくガスストーブでも発生。
今、新型コロナウイルスもあるので石油やガスストーブを使う時はこまめに換気する事が重要。

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一酸化炭素、感じることができないがストーブをつけていて家族の誰かが頭が痛いと言って横になったら要注意。
心配な場合は一酸化炭素の警報機も有効。
もし警報機が鳴ったらすぐに部屋から出て、そのあと外から窓を開けるなど換気を。
まだまだ寒い季節続くので、雪国に限らず注意を。

(水野 倫之 解説委員)


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