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「新型コロナ対策 国民の意識は」(くらし☆解説)

曽我 英弘  解説委員

2月のNHK世論調査がまとまった。新型コロナウイルスの感染者数は全国的に減少傾向が続く一方で、亡くなった人の数は高い水準が続いている。菅政権の取り組みを国民はどう評価しているのだろうか。

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【緊急事態宣言延長】
新型コロナ対策をめぐって、ここにきて政府の対応に動きがみられる。緊急事態宣言の延長、そして関係する法律の改正で、一連の対策の実効性をあげたうえで、ワクチンの接種を進めて感染拡大を何とか抑え込みたいというのが政府の考えだ。

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まず今月2日、菅総理大臣は7日が期限だった緊急事態宣言を栃木県だけ解除し、東京など10の都府県については来月7日まで延長した。そこで、1か月間という延長期間をどう思うか聞いたところ、「適切だ」が57%、「短すぎる」が23%、「長すぎる」が7%、「宣言は解除すべきだった」が4%だった。「延長」それ自体には大半の人が理解を示している。また来月の期限までに解除「できると思う」と答えた人が12%、「一部でできる」が55%、「できない」が28%だった。年代や地域を問わず大半の人が宣言の延長を評価し、また今後全面的に解除することには慎重な考えであることがうかがえる。

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解除の見通しを政府はどう見ているのだろうか。菅総理は宣言の延長を決めた際、感染状況が改善した地域は期限を待たずに順次解除する方針を表明しており、今週、具体的に検討する方針だ。ただ、高齢者の感染者や重症の人の数は依然高いレベルにあること。また医療現場のひっ迫から自宅療養となったり、入院の調整がつくまで何日も待ったりするなど、十分な医療を受けられないケースも起きていること。こうしたことから、宣言を解除した地域についても、先の法改正に従って飲食の自粛などの対策を継続し、段階的に緩和することを検討している。

【法改正の効果】

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政府が宣言の延長を決めた翌日の今月3日、与党だけでなく立憲民主党、日本維新の会なども賛成して法律が改正された。改正法には飲食店が営業時間の短縮に応じなかったり、感染者が入院を拒んだりした際の罰則が盛り込まれた。そこでこの法改正が感染拡大の防止にどの程度効果があると思うか聞いたところ、「大いに」または「ある程度効果がある」が58%、「あまり」または「まったく効果はない」が37%だった。
ただ懸念も根強くある。罰則が強調されるあまり、感染した事実を隠したり、差別の風潮を増長したりしかねないのではないかという点。また当初の政府案から罰則が軽減されたとはいえ、国民に対し一定の強制力を持ち、私権の制限が強まることも事実だ。一方で法改正では、要請に応じた飲食店や医療機関などに、財政上の支援を行うことを国と地方自治体に義務つけている。

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「罰則と給付金などの支援をセット」にすることで、対策の実効性を上げるという法改正の趣旨に従い、罰則の適用には透明性と慎重さを、そして臨機応変な支援が必要だ。

【ワクチン接種したいか】

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政府が感染防止の「決め手」としているのがワクチンで、今月中旬に接種が始まるように準備を進めている。そこで接種したいか、したくないか聞いたところ、「接種したい」が61%、「接種したくない」が28%だった。先月の調査より「接種したい」が11ポイント増えた。欧米などが先行していることもあり、ワクチン接種で感染が収束することへの期待度が高まっていることが背景にあると思われる。今回の調査でも「大いに」または「ある程度期待する」が79%に上り、「あまり」または「まったく期待しない」が17%にとどまった。

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ただ現場を担う地方自治体からは、接種を行う会場や、それに見合う医師や看護師をどう確保すればよいのか。またワクチンの供給や配送が予定通りに進むのかなど、様々な声が上がっている。多くの人が短期間に効率よく、そして安心して接種するため、国は地方自治体と連携を密にしてあらゆる支援を行うこと。また副反応も含めた安全性、有効性の情報も包み隠さず明らかにする責任がある。

【内閣支持率】

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先月「支持」と「不支持」が初めて逆転した菅内閣の支持率は今月、「支持する」が38%、「支持しない」が44%だった。2か月連続で不支持が支持を上回り、その差は6ポイントに拡がった。

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中でも支持しない理由として「実行力がない」が34%と最も多くなり、政権発足直後の去年9月より26ポイントも増えている。これは自分や家族が感染する不安を「感じる」と答えた人が8割を超える中で、政府のこれまでの対応を「あまり」または「まったく評価しない」人が、先月より減少したものの依然過半数に上っていることとも符合する。

【政党支持率】

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政党支持率にも若干の変化がみられた。これまで40%前後で安定していた自民党の支持率が35.1%と先月より、3ポイント近く下げた点だ。自粛を呼びかける側が自粛を破るといった一連の振る舞いなどが支持率に影響を与えたことがうかがえ、最近の地方選挙で与党側が推薦した候補が敗れたり、党所属の現職議員が多数議席を失ったりしたことにもつながった可能性もある。
対する立憲民主党はというと、6.8%と自民党に大きく水をあけられたままだ。新型コロナ対策で積極的に提言し、政権への追及も強めているが、無党派層などからは政権の受け皿とまでは期待が高まらずにいることがうかがえる。

【政治の行方】
今後の国会、政治はどうなるのだろうか。現在審議が行われている新年度予算案が年度内に成立すれば、年内の衆議院の解散総選挙をめぐる駆け引きが一層活発になるだろう。また開幕まで半年を切った東京オリンピック・パラリンピックについて、IOC=国際オリンピック委員会などは開催を前提に準備を進めているが、国民の間では意見は様々だ。国内では来月25日から聖火リレーが始まる予定だが、果たして感染拡大を収めて大会を7月に予定通り行えるのか。行うとしたら観客を入れるのか入れないのか、入れるとしたらどの程度とすべきなのか、国会でも議論となるだろう。大会を開催するかどうかは解散・総選挙のタイミングと密接に関係するとみられる。それだけに、新型コロナの感染状況が今後の政治状況を大きく左右することに変わりはなさそうだ。

(曽我 英弘 解説委員)

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