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「新型コロナ 菅政権 国民の意識は」(くらし☆解説)

曽我 英弘  解説委員

1月のNHK世論調査がまとまった。内閣支持率の低下が続く中、菅政権が取り組む新型コロナウイルス対策は国民にどう映っているのだろうか。

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【緊急事態宣言、再び】
今回の世論調査の特徴、それは緊急事態宣言など新型コロナをめぐる政府の対応に不満の声が多数を占めたこと。それに伴って菅内閣の支持率で「支持しない」が「支持する」を初めて上回ったことだ。

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菅総理大臣は7日、東京、埼玉、神奈川、千葉の1都3県を対象に特別措置法に基づく緊急事態宣言を出した。この「タイミングをどう思うか」聞いたところ、「適切だ」が12%、「遅すぎた」が79%、「宣言を出すべきではなかった」が3%だった。年代や地域を問わず、7~8割の人が「遅すぎた」と答えている。年が明けたら動きが急になった印象だ。
対象地域が「1都3県」だったことについても「適切だ」は12%、「ほかの地域にも出すべき」は47%、「全国で出すべき」は33%、「出す必要はない」は3%だった。さらに「宣言の期間の来月7日までに解除でききると思うかどうか」を尋ねたところ、「できる」は6%、「できない」は88%、などとなった。期間内に解除できないという悲観的な声が大多数だった。
1都3県に加えて政府は13日、大阪・兵庫・京都のほか、愛知と岐阜、それに福岡、栃木のあわせて7府県を対象に緊急事態宣言を出す方針で、往来や外出自粛を求める動きも各地で相次いでいる。菅総理大臣は「1か月後に必ず事態を改善させるため、ありとあらゆる方策を講じていく」と述べ、西村経済再生担当大臣は「東京都で1日当たりの新規感染者数がおよそ500人を下回ることが宣言解除の目安の一つと明かしているが、発出して1か月での解除を疑問視する見方もあり、先行きは見通せない。

【ワクチン接種意向、罰則明記賛否は】
「ありとあらゆる方策」のひとつとして、政府はワクチンの接種に向けた準備も急いでいる。
宣言中、飲食店の営業時間短縮やテレワークなどを徹底してもらうことで感染を何とか抑え込みつつ、2月下旬までにワクチンの接種を開始できるようにすることで、収束に道筋をつけるというのが政府のシナリオだ。

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そこで「ワクチンを接種したいかどうか」聞いたところ、「接種したい」が50%、「接種したくない」が38%だった。依然として一定程度の人が慎重な考えだ。ワクチンの効果に期待する一方で、安全性や有効性に不安や疑問を感じる人もおり、情報開示をしっかり行うことが政府に課せられた責任だ。
緊急事態宣言、ワクチンの準備と並行して、政府は18日に召集される通常国会で新型コロナ対策の特別措置法を改正し、事業者への財政支援と罰則をセットにすることを目指している。
そこで「罰則の明記に賛成か反対か」聞いたところ、「賛成」は48%、「反対」は33%だった。これについても意見が分かれている。
現在の特措法では店が休業要請などに応じなくても、行政は店名を公表できるだけで、罰則がない。菅総理大臣は「給付金と罰則をセット」にすることで、「より実効的な対策を可能にしたい」としていて、政府与党は2月初旬には成立させたい考えだ。これに対し立憲民主党の枝野代表は「全否定ではない」としながらも、要請に応じた店への給付金が1日6万円では不十分で、さらに充実するよう求めている。また野党内には「財産権の侵害になりかねない」という慎重論もあり、法案の取り扱いは通常国会序盤の焦点だ。

【内閣支持率】
課題が山積しているが、政府の取り組みへの国民の評価はどうだろうか。

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自分や家族が感染する不安を「感じる」と答えた人が87%と高い水準が続いている。このため、政府のこれまでの対応を「評価する」と答えた人は38%、「評価しない」は58%だった。「評価する」は、安倍前総理大臣の辞任表明直前の去年8月の調査と並んで最も低くなった。

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こうしたことと連動する形で、去年12月に14ポイントも低下した菅内閣の支持率は1月、「支持しない」が、「支持する」を初めて上回り、「支持する」が40%、「支持しない」が41%だった。「支持する」は政権発足直後の去年9月の調査から22ポイント減ったことになる。

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中でも与党支持層が85%から66%に、およそ4割を占める「無党派層」が50%から24%に大きく減ったことが目を引く。

【政治とカネ】
さらにもうひとつ、菅総理大臣の政権運営に影を落としているのが「政治とカネ」をめぐる問題だ。年末には「桜を見る会」の前日夜に開かれた懇親会をめぐり安倍前総理大臣の公設第1秘書が政治資金規正法違反の罪で罰金100万円の略式命令を受けた。これを受けて安倍氏は年末、過去の国会答弁が事実と異なっていたと説明し、謝罪した。

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そこで安倍氏の説明に「どの程度納得できるか」聞いたところ、「大いに」または「ある程度納得している」は20%、「あまり」または「まったく納得していない」は72%だった。与党支持層でも「納得していない」は62%に上った。
「当時知る限りを答弁したつもりだが、結果として、事実に反するものがあった」という安倍氏の説明、謝罪に多くの人が依然納得する状況には至っていないと言える。
前の政権から「政治とカネ」をめぐる事件が相次ぐ中、吉川貴盛元農林水産大臣が大臣在任中に大手鶏卵会社の元代表から現金を受け取っていた疑いが出ているが、吉川氏は去年秋の自民党総裁選挙で菅陣営の中心的な存在のひとりだった。
野党側は新型コロナ対策に加えて、政治とカネについても菅総理大臣の責任や姿勢を追及していく構えで、世論の動向しだいでは政権にさらに影響を与える可能性もある。

【政党支持率】

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今何党を支持しているか尋ねたところ、「支持」と「不支持」が逆転した内閣支持率とは対照的に、政党支持率は大きな変化は見られなかった。このうち自民党は40%前後を一貫して維持して他党に大きく水をあけており、政権内で党の発言力は今後も強まりそうだ。立憲民主党は政権に批判的な層をうまく取り込めてないことがうかがえ、衆議院の解散・総選挙に向け戦略の見直しも必要になるかもしれない。

【ことしの政治は】

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今年の政治は衆議院選挙と東京オリンピック・パラリンピックの2つの重要日程を軸に展開していくことになるが、オリンピックを「開催すべき」という人が16%だったのに対し、「中止すべき」が38%、「さらに延期すべき」が39%と年内開催に否定的な見方が、調査のたびに増えている。また衆院選のタイミングが読み切れないのも、新型コロナの状況次第という点が大きい。
であればこそ今は、腰を据えて実効性ある感染防止対策、そして収束後をにらんだ社会のありようについて議論を深めるよう政府、与野党には求めたい。      

(曽我 英弘 解説委員)

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