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「実験開始!自動配送ロボット 街を走る!」(くらし☆解説)

櫻井 玲子  解説委員

車や自転車が行きかう交差点を渡る、配送ロボット。
街中を、ヒトとロボットが並んで歩く時代が、まもなく来るかもしれません。
今日のテーマは「自動配送ロボット」。担当は櫻井玲子解説委員です。

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【自動配送ロボットが注目される理由】

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Q さきほどのVTRをみますと、ロボットが普通に道路を走っていましたね。

A はい。配送ロボットといいますと、これまでホテルや商業施設の中で荷物を運んでくれるものはあったんですが、あくまでも私有地の中でのサービスでした。これに対し今、企業各社が相次いで実験をしているのは、これまでは法律上許されていなかった公道、つまり街なかを移動して、食料品などを配達するロボットです。

Q なぜ、各社はこうしたビジネスに参入しようとしているんですか?

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A ▼最大の理由は、「人手不足」対策です。ネットショッピングの普及で、宅配便の数も年々増える中、配達をしてくれる人手の確保は、ここ数年、課題となってきました。また、お米とか、水など、自分で運ぶには重たいものを注文する人も多く、配達員の負担にもなっているそうです。ロボットが使えれば、重いものはロボットが、軽いものは人間が運ぶといったことも可能になります。

Q 役割分担ができる、ということですね。

A はい。そして、▼もう一つの理由は「地方などでの利便性の向上」です。社会の高齢化がすすむ中、配達網があまり発達していない地域でロボットの宅配がすすめばと、自治体も関心を寄せています。
▼さらには、新型コロナウィルスの影響もあります。人と人が接触しなくて済む「非接触型」の宅配サービスへの関心が一層、高まっています。

Q お客さんはもちろん、配達をする人たちの健康も守るための選択肢にもなる、ということですね。

【各社の実証実験、開始】
A ここからは、実際のロボットのしくみや、企業の取り組みを、幾つかご紹介します。
こちらは、先月、行われた実証実験の様子。
住宅街をロボットがスムーズに通行できるか、テストしています。

Q ロボットの後ろを、人がついているようですが、どういったことでしょうか?
 
A 今は実験段階なので、安全確認のために人がついているんですが、実際には、各社のロボットに、センサーやカメラがついていて、人や障害物が近づくと、自動的に止まります。

Q ロボットだけで自動で走るんですね。

A また、その様子を、コントロールルームから人間が遠隔監視することが義務付けられていて、異常があれば、遠隔操作でロボットの動きを変えたり、現場に応援要員を出したりします。

【地域密着型のサービスを検討する楽天】

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Q このロボットは実際、何を運んでくれるのですか?

A 食べ物や日用品を近所のスーパーからそれぞれの家に運ぶサービスを考えているということです。楽天と横須賀市が連携して行った実験なんですが、なぜ横須賀市かといいますと、坂道など起伏がある場所が多く、高齢化もすすんでいるため、買い物に出かけるのが大変な人向けの対策を考えているそうです。
そこで、企業側ではロボットに狭い坂道をのぼりくだりさせるような実験も行なっていて、地域の課題を解決するようなビジネスができないか、模索しています。

【郵便配達ロボット、都心を走る】

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A 次は、日本郵便のロボットです。都心で小包を運ぶという試みでしたが、ご覧のとおり、人も車もたくさん行きかう中での実験となりました。

Q ロボットが横断歩道を渡るんですね。信号を見て、判断できるんですか?

A はい。青か赤かをセンサーで受信して渡ります。私も現場で様子をみていたんですが、信号が点滅しだすと、次の青信号をきちんと待ってから、渡っていました。
こちらのロボットは、1台あたり最大30キロの荷物を運べるということです。

Q 途中で、手紙が盗まれたりとか、ロボットごと持ち去られたりという心配はないんでしょうか?

A 小包や手紙を受け取る人にはセキュリティーコードが割り振られて、その人しかロボットのドアを開けられないほか、異常があれば警報音が鳴り響くしくみになっているそうです。

【多方面へのビジネス展開を狙うパナソニック】 

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A 最後に、こちらはパナソニックが藤沢市で行なっている実験です。
この住宅街では30代から40代の共働き・子育て世帯が多く、宅配サービスへの期待が高いそうです。そこで近くの複合商業施設のいくつかのお店をロボットがまわって、荷物を家庭に届けるというサービスを想定しています。

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また、今後色々なビジネス展開を追求していきたいということで、たとえば、▼近場からの配送を5分単位の時間指定で請け負う宅配サービスですとか、▼ロボットに搭載されたカメラを使った警備ロボットとしての活用なども考えているそうです。

【最大の課題は、交通上の安全】
Q こうやってみてきますと、消費者にも企業にもメリットはありそうですが、配送ロボット、いつ、実用化されるのでしょうか?

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A はい。複数の企業が「ことし中にもサービスを始めたい」としています。政府もその動きを後押しするために、必要な法律の改正などを2021年度中に目指したいということです。ただ、実用化に向けては、2つの大きな課題があります。

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やはり最も重要なのは、交通上の安全です。
各社のロボットは歩道を走ることも考えられています。このため、長さ120センチ、幅70センチ程度の大きさで、速さは時速6キロ以下というのが一つの目安となっています。ちなみに、時速6キロといいますと、人間の早歩きよりは、やや早く、自転車にくらべると、かなりゆっくりとしたスピードです。
また、人や車と接触しないようカメラやセンサーがついていて、遠隔監視が行われることが条件となっています。

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ただ、交通量の激しい街中も通りますので、
▼歩行者や車、障害物をきちんと避けられるか。といったロボットの基本動作の確認はもちろん、
▼逆に、車や自転車がロボットにぶつかってきたときにどうするか。や、
▼遠隔監視を可能にする通信状況が不安定になった場合はどう解決するか、などを
一つ一つ、考える必要があります。
不測の事態が起きないか。また起きた場合の対応をどうするか。
実証実験を確実に行なった上で、検証することが重要です。

【企業側の課題は、コスト】
Q もう一つの課題というのはなんでしょうか?

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A 逆に、企業側からみると、悩ましいのがコストの問題です。ロボットを人間が遠隔監視し、なにかあれば現場に応援要員を出せるしくみを各社とも準備する予定ですが、1人の監視員に対し、何台のロボットを監視することが許されるのかといったところが大きなポイントとなりそうです。安全が第一なのはいうまでもありませんが、人件費が具体的にどのくらいかかりそうかで、配送ロボットが実際、どこまで普及するかが、左右されそうです。

【世界で広がる自動配送ロボットの活用】
Q ところで、こういった自動配送ロボット、海外でも使われているのでしょうか?

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A ヨーロッパやアメリカの一部の地域ではすでに、サービスが始まっています。
ピザ専用の宅配ロボットも登場して話題を呼んでいるそうです。
中国でも大企業が競って開発をすすめています。
世界的にも、数年以内に、広く使われていくのではとみられています。

Q 配送ロボット、近いうちに、身近な存在になってきそうですね。

A はい。今回、実証実験中にたまたま散歩中の保育園児たちが通りかかって、「ロボットが走っている!」と喜ぶ姿をみかけました。配送ロボットが街の中でも、私たちの生活の一部となる日が近づいていることを感じました。
人口減少がすすむ中、また、新型コロナウィルスが広がる中、配送ロボットの活用に期待も高まっています。課題を克服しながら、実現への取り組みを着実にすすめてほしいと思います。

(櫻井 玲子 解説委員)

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