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「2021年 くらしをどう支える? 身近な制度改正」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

あけましておめでとうございます。きょうは、くらしを支える身近な制度の改正や新設について、今井解説委員です。

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【今年こそ明るい一年になってほしいですが、コロナの感染拡大が心配な状況ですね】
そうですね。年明け早々、1都3県への緊急事態宣言の検討、そして、飲食店への営業時間の短縮要請といった動きが出て、くらしへの影響が心配な事態となっています。すでに
▼ 解雇や雇止めで職を失った、あるいはその見通しの人は、きのう(1月4日)までに8万人近くに達し、
▼ NHKの12月の世論調査では、およそ4人に1人が「収入が減った」と答えています。
飲食店の中には、今後、休業を検討するという動きも出ていて、状況がさらに悪化するのではないかと、本当に心配です。

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【支えていく対策。必要ですね】
そうですね。このため、年末にまとまった来年度の税制改正、それに補正を含めた予算案でも、様々な制度が打ち出されました。
まずは、個人の生活費や家賃を支援する対策です。

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去年の春に打ち出された緊急対策のうち、
▼ コロナで、生活が厳しくなった世帯が、無利子で、あわせて最大140万円まで借りられる、緊急小口資金と総合支援資金の特例制度について、受付期間が2020年12月末までだったのが、今年3月末まで延長されることになりました。

【これからでも申し込みができるということですね】
そうです。
▼ また、仕事を失ったり収入が減ったりして家賃が払えなくなった人に、自治体が一定額を上限に家賃を支給する制度。支援を受けられる期間が最長9カ月となっていて、年末に期限が切れる人がでてくる懸念がありました。が、3か月延長されて、最長で12カ月、支援を受けられることになりました。
▼ さらに、非正規雇用の割合が高く、生活実態が厳しいひとり親世帯への支援策として、1世帯5万円。第2子以降はひとりにつき3万円を支給する「臨時特別給付金」を再び、支給することも決まり、すでに年末をめどに支給が行われています。

【なんとか生活費や家賃を支援しようということですね】
はい。ただ、心配なのは、こちらの無利子融資。返さなくてもよい場合があるとありますが、具体的な詳細な要件がまだ決まっていません。早い人は、今年の春から返済が始まります。生活が厳しいのに借金の返済に追われる人が出ないよう、また、いよいよ貯金が底をついたといった人が新たに借りやすいよう、返済免除の要件は、ぜひ、寛容にする方向で検討してほしいと思います。

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【生活に行き詰まる人がでないよう、あまり厳しくしないようにしてほしいですね】
そう思います。一方、雇用や仕事を守るための制度も打ち出されました。
▼ 仕事がない。だけど、社員に休業手当を払って雇用を守っている企業に、国が手厚い助成をしている「雇用調整助成金」の特例措置については、2020年12月末までだった期限を、今年2月末までに延長して、3月以降は、段階的に縮小する方向で検討することになりました。一方、雇用を守る新たな方法として、別の企業に社員を出向させた企業と、受け入れた企業の両方を対象にした新たな助成金制度を設けることになりました。

【両方を支援しようというのですね】
はい、それによって、一時的に別の企業で働いてもらうことで、雇用を守る動きを後押ししようという狙いです。
▼ さらに、コロナで売り上げが大きく減った中小企業や個人事業主におカネを給付する「持続化給付金」の制度は、今月で予定通り終了となります。

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代わって、事業を転換するために、例えば、売り上げが大幅に減ったレストランの経営者が、キッチンカーの事業に乗り出すために必要な設備を整えたり、スポーツジムでダンスを教えていたフリーランスの人が、自宅からネットでレッスンを始めるためにシステムを整えたりした場合などに、費用の一部を補助する新たな制度を設けることになりました。

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【できるだけ前向きに雇用や仕事を支えようということですね】
はい。そのうえで、次に、消費を支えるために、家や車の購入を支援する措置もとられました。

【大変な状況ですが、家や車を買おうという人もいるのですね?】
先ほどのNHKの世論調査を見ると、およそ70%の人が、収入は変わっていないと答えています。一部の人に大きな影響がでている一方、今のところ、経済的には、それほど影響がないという人もいるのです。

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そして、その中からは、都心から離れてでも、少し広い家に住みたい。逆に、できるだけ電車に乗らなくていいよう、都心の家に引っ越したい。通勤のための車がほしい。という声が一定程度上がっているというのです。購入の意欲のある人の背中を押して、消費を支えることができれば、関連している部品や家具の工場、それに販売店で働いている多くの人の雇用や収入の助けにもなる。ということで、それぞれ対策がとられることになりました。

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【まず、住宅ローン減税では、どのような対策がとられたのですか?】
はい。住宅ローン減税は、年末に残っているローン残高の1%分を、その年に払わなくてはならない所得税や住民税から差し引ける=その分減税となる仕組みです。減税を受けられる期間は、本来10年ですが、消費増税対策として、一時的に13年になっています。その特例措置について、入居する期限を2022年12月末までに延長することになりました。ただし、注文住宅は今年の9月末、マンションなどの分譲住宅は11月末までに契約する必要があります。加えて、特例措置の対象も拡大されることになりました。

【どのように拡大されるのですか?】
これまでは、床面積50㎡以上の物件が対象でしたが、新たに40㎡以上も対象になります。夫婦の二人暮らしや単身の人などの、多様なニーズを後押ししようという狙いです。
ただ、新たに対象となった40㎡以上50㎡未満の物件については、所得制限を1000万円以下に引き下げることにしています。

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【さらに新しいポイント制度もできたのですか?】
はい。今年10月末までに、太陽光パネルや断熱性の高い壁を使うなど、省エネにつながる住宅を購入したり、リフォームしたりする契約を結んだ場合、ポイントがもらえる制度ができました。例えば、
▼ 省エネ性能の高い新築住宅を買った場合、40万円分のポイントが。さらに、それが
▼ 東京圏からそれ以外に移住した人や子どもが3人以上いる場合といった特定の条件を満たした場合、ポイントが加算されて、100万円分のポイント(これが最大)がもらえるという仕組みです。

【ポイントは何に使えるのですか?】
家電製品などと交換できるほか、テレワークのスペースをつくるなどコロナに対応した追加の工事代金などにもあてられる予定です。

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【一方、車の購入を支援する対策はどういうのがあるのですか?】
▼ 車検の時に課税される自動車重量税の税率を、電気自動車や燃費のよい車などを対象に減免する「エコカー減税」。今年4月末までとなっていた期限を2年延長します。その上で対象については、基準を見直し、一部厳しくすることになりました。
▼ また、自動車を買った時に、燃費性能などに応じて最大価格の3%課税される「環境性能割」。こちらは、消費増税対策として今年の3月末まで、1%分ずつ軽減する特例措置が取られていましたが、その期限を9か月延長することになりました。

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【手厚い支援策がいろいろ打ち出されたのですね】
くらしや消費をなんとか支援しようという狙いですが、今後、緊急事態宣言などの影響で、生活が一段と厳しくなる人がでてくることも考えられます。その際には、追加の支援策も柔軟に検討してほしいと思います。

(今井 純子 解説委員)

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